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スウェーデン王立科学アカデミーは3日、2023年のノーベル物理学賞を、1000兆分の1秒より短い時間で起きる現象を探究する「アト秒科学」の分野を切り開いた米欧の研究者3人に贈ると発表した。物質中の電子の動きを一瞬の光で観測する技術を確立したことが評価された。
受賞するのは、米オハイオ州立大のピエール・アゴスティーニ名誉教授、独マックス・プランク量子光学研究所のフェレンツ・クラウス所長、スウェーデン・ルンド大のアン・ルイリエ教授の3人。授賞理由は「アト秒光パルスを発生させる実験手法の開発」。
物質中の電子が素早く動く様子を観察するには、カメラのフラッシュのように光を連続して当てる必要がある。だが、従来の技術では、電子の動きを正確に捉えられる短い時間の光を作ることは難しかった。
ルイリエ氏は1987年、特殊な気体を通過したレーザー光は、波長が短くなる現象を発見。アゴスティーニ、クラウスの両氏は2001年、この現象を応用し、数百アト秒(アトは100
物質中の電子の動きを探ることで、化学反応が起きる瞬間を調べられ、細胞の観察や新素材の開発、医療診断など様々な分野で活用が期待される。茨城県つくば市では、東京大によるアト秒パルス用の大型光源施設の建設が計画されている。
理化学研究所の緑川克美・光量子工学研究センター長は「物理学から化学、生物といった基礎研究に大きな影響を与える業績だ」と3人の研究成果をたたえた。
賞金は1100万スウェーデン・クローナ(約1億5000万円)で、3人で等分する。授賞式は12月10日、ストックホルムで開かれる。