屋久島沖オスプレイ墜落から1カ月 機体引き揚げも原因究明も米軍単独で…日本側の関与薄まり真相遠のく
2023/12/28 07:26
日没後も現場海域にとどまる米軍サルベージ船=27日午後5時55分、屋久島町船行
26日夕まで、船の甲板に同様の物体は載っていなかった。プロペラ部のような形状をした残骸もあり、激しく損傷していた。米軍は詳しく調べるとともに、残る行方不明者1人の捜索も続ける方針。
防衛省は「引き揚げ作業を進めていると承知しているが、詳細は米軍の運用に関わり答えられない」とした。作業は米軍単独で進めており、終了の見通しも伝えられていないという。
引き揚げについて地元の屋久島漁協に事前連絡や報告はなかった。漁師らは「漁場と離れており問題はない」「機密を教える訳がない」などと冷静に受け止め、早期収束を願う声が聞かれた。
事故は11月29日に発生。12月4日に海中で機体胴体部の残骸と搭乗員5人の遺体が見つかった。米軍は搭乗員8人全員の死亡を認定し、7人の遺体を収容した。米軍サルベージ船は23日現場海域に到着していた。
事故を受け、米軍はオスプレイの飛行を世界中で一時停止している。
◇
屋久島沖に沈んでいた米空軍CV22オスプレイの一部とみられる残骸が27日、引き揚げられた。搭乗員全8人の捜索は日米合同で進められたが、引き揚げ作業をはじめ、原因究明は米軍単独で実施する。29日で墜落から1カ月。日本側の関与は日に日に薄まり真相は遠のく。
墜落以降、米軍機の使用が過去10年なかった屋久島空港に米輸送機などが頻繁に飛来。日米の合同チームが続々と島に入り、公民館や港を拠点とした。
当初こそ一方的な港の使用や漁業制限で米軍側への反発があったが、この1カ月で軟化した。港では米軍通訳らと漁師らが雑談する姿も。屋久島漁協の羽生隆行組合長(72)は「港の使用料や捜索の燃料費は払ってもらった。特段の不満はない」と話す。
屋久島クリーンセンターの連絡調整所には日米の部隊のほか、町、県の職員らも詰め、捜索状況はある程度共有できていたという。
ただ、米軍から空母やサルベージ船派遣などの連絡はいずれも事後報告。12月上旬に自衛隊の陸上部隊が撤収し、23日に海自の捜索も終了すると情報はさらに細り、機体の引き揚げも事後的に知らされた。
「情報がタイムリーに入ってこない。事前準備する時間が十分になく、場当たり的な活動もあった」。捜査を担う海保関係者はこぼす。目撃者の聴取や巡視船による警戒で協力するものの、海保が回収した残骸などの証拠品は引き渡しており、捜査も米軍の回答次第だ。
米下院の監視・説明責任委員会は国防総省に対し、1月4日までにオスプレイの安全性について文書や情報の提供を求めている。航空評論家の青木謙知氏は、戦闘機の素材が強度不足で飛行停止になった例を挙げ、「どれだけのデータが回収できるかで変わるが、早期に対策を示して飛行再開を目指すだろう」との見方を示した。
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