臨時国会が閉会したけど…「政治とカネ」問題の陰で議論が深まらなかった課題の数々

2023年12月14日 06時00分
 臨時国会が13日閉会した。国会終盤、自民党派閥の「政治とカネ」を巡る問題が最大の焦点となったが、岸田文雄首相らが説明を避け続けた結果、国民生活にとって重要だったり、世論の反対が根強かったりする課題に関する議論は十分に深まらなかった。年内残された時間は少ない中、岸田政権は国民が求めている課題解決に向き合おうとしない一方、多くの国民が不安を持つ政策は決着を急ごうとしている。

◆武器輸出緩和も社会保障も

 政府は22日にも、米国がライセンスを持つ武器の部品に限って米国や米国以外にも輸出を認めてきた防衛装備移転に関する現行ルールを大幅に緩和する。日本企業がライセンス生産する殺傷能力を持つ武器の完成品を、ライセンス元の国への輸出と第三国への移転を可能とするのが主な内容。輸出先の国から紛争地域に移転して紛争を助長させる懸念を払拭しないまま、政府は防衛政策を変質させようとしている。

衆院本会議に臨む岸田首相たち

 生活に直結する社会保障でも、国民的議論が深まらないのに年内に結論を出そうとしている課題がある。
 介護保険サービス利用者の自己負担は原則1割だが、政府は「異次元の少子化対策」に充てる財源として、単身世帯で年金収入など280万円以上の人としている2割負担の範囲を広げる構え。物価高が続くにもかかわらず、政府は2025年8月からの適用を視野に入れており、利用者の経済的負担が増す恐れがある。

◆マイナ保険証も原発再稼働も

 多くの国民が不安なのは現行の健康保険証の行方。首相は12日、来年秋に廃止し、マイナンバーカードと一体化した「マイナ保険証」に移行すると表明した。取得は任意だったマイナカードは事実上義務化。情報漏えいなどのトラブルを受け、政府は総点検を行ったが、高齢者や施設入所者など現行保険証の方が使いやすいと考える人は多く、混乱が予想される医療現場への配慮は軽視された形だ。
 国民の反対が強い原発についても、年末に再稼働に向けた動きがある。
 テロ対策不備で事実上の運転禁止命令が出ている新潟県の東京電力柏崎刈羽原発について、原子力規制委員会は20日、改善状況や今後の取り組みについて東電の小早川智明社長を聴取する。その内容を踏まえ、27日に命令解除を判断する見通しだ。
 規制委事務局は、東電に原発事業者としての適格性に問題がないと確認したとしているが、地元の不信感は根強い。再稼働時期は不透明だが、首相は原発を「最大限活用」する方針を変えていない。

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