新型コロナ感染症の薬や候補薬
新型コロナ感染症の薬や候補薬

 国内外で新型コロナウイルスワクチンが急速に普及する一方、接種できない人や、しない人も一定数いると考えられ、発症した場合やワクチンが効かない変異株の出現に備えて新しい治療薬の開発も重要だ。国内では口から飲むタイプの抗ウイルス薬の臨床試験(治験)も始まり、医療現場から実用化を期待する声が上がる。

 新型コロナ感染症には特効薬と呼べる薬は海外も含め、今のところない。「新しい抗ウイルス薬が出てくればかなり状況が変わる。ワクチンとの両輪で使っていければ良い」。患者の診療に携わるある医師は実用化を待ち望む。

 新型コロナ感染症では発症して1週間ぐらい風邪のような症状が出て、多くの人は自然に治る。ただ一部は肺炎を起こして入院が必要となる。初期に体内でウイルスが増えるのを抑える飲み薬があれば、重症化や入院を防ぎ、医療の逼迫(ひっぱく)を避けることができる。

 免疫反応を利用し、中等症まで対応できる抗体医薬も開発中だが、点滴での投与となるほか、高額になる恐れがある。

 これまでに効果が検証され国内での使用が認められた薬は「レムデシビル」と「デキサメタゾン」「バリシチニブ」の3種類がある。

 「レムデシビル」は唯一の抗ウイルス薬で、もともとエボラ出血熱のために開発されたものだ。ただ米国の治験では一定の有効性が認められたが、効果が認められなかったとの研究結果もあり、特効薬と呼べるほどの効き目はなさそうだ。点滴薬のため、病院外での投与は難しいという課題もある。

 「デキサメタゾン」は、アレルギー性疾患などに使われているステロイド薬。「バリシチニブ」はレムデシビルと併せて使う条件で承認された関節リウマチの薬だ。いずれもウイルスが引き起こした肺炎などの炎症を抑える働きが期待されるが、ウイルス本体に作用するものではない。

 薬は1種類ではなく、選択肢があった方が良い。例えばインフルエンザには「タミフル(販売名)」や「ゾフルーザ(同)」などの抗ウイルス薬があるが、薬が効かなくなる耐性ウイルスが出現して問題になっている。

 新型コロナでも薬の耐性が大きな問題になり得る。米国では変異株に対する効果が低いとの理由で抗体医薬の許可が取り消しになった。ワクチンの効果が弱まる変異株も既に見つかっている。

 国立国際医療研究センターの満屋裕明研究所長は「ウイルスに直接働く治療薬、さらに変異株に対しても強力な効果を有する抗ウイルス薬の開発が重要だ」と強調している。