シカ出没をアプリで通報、駆除後は処理肉を飲食店へ…札幌市、食害対策で今秋実験

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札幌市南区の農地に出没するシカ(北海道猟友会札幌支部提供)
札幌市南区の農地に出没するシカ(北海道猟友会札幌支部提供)

 エゾシカの食害が深刻化する札幌市で今秋、シカを見つけた農家がスマートフォンのアプリを活用して、ハンターに出動を要請するシステムの実証実験が行われる。駆除したシカの肉は「ジビエ」として飲食店に卸し、利益は市内の緑化事業に充てる仕組みだ。

■駆除年々増加

 市内では近年、稲を始め果樹園でリンゴやサクランボの樹皮が食べられて木が枯れるなどの食害が相次いでいる。北海道猟友会札幌支部によると、駆除数は年間数十頭のペースだったが、2021年度は約100頭、22年度は約140頭に増加した。

 スタートアップ(新興企業)の「Fant(ファント)」(上士幌町)が開発中のアプリは、シカが現れた場所を画面上の地図で詳細に指定し、通知を受けたハンターが駆けつける。実証実験は9月から約1か月間、果樹園も多くある南区で実施。同支部のハンターら30人近くがボランティアで協力し、市が費用の一部を補助する。

■処理肉飲食店へ

 駆除したシカはこれまで、農家が自ら処理するケースが多かった。ただ、解体作業は労力を要し、廃棄処理に費用もかかる。こうした負担を軽減するため、同支部がシカを市内の食肉処理施設に持ち込み、精肉処理した上でファントが希望する飲食店に卸すという。

 ファントは飲食店の注文を受けたハンターが野生鳥獣を捕り、食肉処理施設に納入した肉を飲食店に届けるアプリを開発し、昨年から運用している。協力ハンターは累計約1700人。登録する飲食店は道内外の約100店舗に上り、このノウハウを今回の実験にも生かす。

 同支部の奥田邦博支部長(58)は「農家とハンター、地域とのコミュニケーションを大切にしながら課題解決につなげたい」と話す。ファントの高野沙月代表(33)は「若手ハンターが活躍できる場にもなるはず。他地域にも普及させたい」と意気込んでいる。

21年度、水稲や果樹被害44億円

 道内では、エゾシカによる農林業の被害額が2021年度に44億8000万円となり、2年連続で増加している。牧草が4割を占める一方、水稲や果樹など単価が比較的高い農作物にも被害が出ている。

 道野生動物対策課によると、被害は酪農が盛んな東部地域(釧路やオホーツクなど)で目立つが、温暖化で積雪が少なくなった影響で、シカの生息域は稲作や畑作も盛んな西部地域(上川や日高など)にも広がる。21年度の西部地域の被害額は15億9000万円で5年連続で増えた。

 道は適正な個体数管理のため、エリアごとに捕獲目標を設定。各地では国の交付金を活用した電気柵の設置、食用だけでなくペットフードや皮革製品への活用といった対策が進められる。

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