「その日の夜、ジャニー喜多川氏は5人を次々に襲った」…俳優服部吉次さんらが証言した70年前の性被害

2023年7月16日 17時38分
 パジャマに着替えるとジャニー氏は「肩をもんであげるよ」と言いはじめ、肩のマッサージから全身、手足と伸び、陰部を触ってきた。

葬儀で服部家の遺族と会食するジャニー喜多川氏(左)と、服部さんの次男・有吉氏(右)=1993年、服部吉次さん提供

 翌朝、ジャニー氏が出かけた後、五つ上の姉が「楽しかった?」と尋ねるので「マッサージは気持ち良かったが、その後、体中を触ってきて陰部も触ってきた」と正直に言うと、姉が「やめなさい。そんな気持ち悪い話をしないで」と怒った。そこで「悪いことなんだ」と思考が止まり、結局、両親をはじめ、家族には一切話せなくなってしまった。
 その後も2年半ほどの間、週末に泊まりに来る度にジャニー氏は性加害を加えてきたといい、「100回程度は被害にあった」と語る。

◆今も心に傷…「告白できる最後のチャンス」

 今回、証言を決意したのは、元ジャニーズJr.のカウアン・オカモトさん(27)、橋田康さん(37)、二本樹顕理さん(39)が、児童虐待防止法の改正に向け署名を集めているのを知ってから。

ジャニー喜多川氏による性加害について証言した服部吉次さん

 2004年にジャニー氏が、週刊文春の報道を巡り文芸春秋を提訴した訴訟で、性加害が認定された時も関心が持てなかったが「今回は違う」という。
 吉次さんは「自分が発言してこなかったことの重みが積み重なった。ジャニー氏の犯罪に自分はある意味、深く関わってしまったのではないか。もしかしたらこれが告白できる最後のチャンスになるかも」と明かした。
 性加害を受け70年経過したが、現在も苦しんでいる。悪夢を見ることが増え、眠れないことも。老化と共に心のバランスが崩れ「カウアンさんたちの話を聞いて居てもたっても居られなくなった」と話す。

◆「あの時の異常な様子は忘れられない」

 53年の冬、ジャニー氏が作った少年野球団「東京ジャニーズ」のメンバー3人と、吉次さんの友達の松﨑基泰さん(79)ら3人の計6人で、スケートをするため服部家の軽井沢の別荘に泊まった。

 その日の夜、ジャニー氏は、2段ベッドの野球チームのメンバーや松﨑さんら5人を次々に襲った。吉次さんは「あの時の異常な様子は忘れられない。彼は非常な合理主義者で使える特権を手にし、自由に処理したかった。(ジャニー氏を)ある種の星の下に産まれた天才という人もいるが、『才能があるから仕方ない』は大間違い。悪いことは悪い」。

ジャニー喜多川氏による性加害について証言した服部吉次さん(右)と同級生の松崎基泰さん

 吉次さんは「性加害が封印されてきたのは、日本の芸能界の体質。藤島ジュリー景子社長は『知らなかった』と言うが、少なくともメリー前社長は知っていたはずだ。日本の芸能、メディア、音楽業界全体の問題としてもっと深刻に皆が考えてほしい。報じないテレビは、共犯者にも見える。個人個人が『これでいいのか』と考えて欲しい。国がこの問題に、真正面から積極的に取り組まなければ、問題はかたづかない」と訴えた。
 吉次さんたちは、今後、元ジャニーズJr.のメンバーが検討する事務所への集団訴訟にも「何らかの形で支援や協力をしていきたい」としている。(望月衣塑子)
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