辺野古、代執行から2週間で着工強行 沖縄県との対話に応じないで急ぐ政府、普天間返還までの見通しは

2024年1月11日 06時00分
 米軍普天間(ふてんま)飛行場(沖縄県宜野湾=ぎのわん=市)の移設に関し、政府が名護市辺野古(へのこ)沖の軟弱地盤に伴う工事の設計変更を沖縄県に代わって承認する異例の代執行からわずか2週間。県が求める対話に応じず、同意も得ないままに工事は強行された。政府は辺野古の新基地建設が普天間飛行場の危険性除去の「唯一の解決策」と繰り返すが、普天間の返還時期はいまだに不透明だ。識者は、辺野古以外の新たな対応にかじを切るよう政府に求めている。(佐藤裕介)

◆米軍への引き渡しまで12年を想定するが…

政府が新基地建設工事に着手した沖縄県名護市辺野古沖の大浦湾

 「準備が整ったということで工事に着手した。工程に従って工事を進めるべく、全力で取り組んでいく」。岸田文雄首相は10日夕、首相官邸で記者団にこう強調した。
 政府は、工事期間を着工から9年3カ月と見込み、米軍への引き渡しまでは12年かかると説明している。

◆軟弱地盤、工期さらに延びる懸念も

 だが、工事が始まった大浦湾の海域は地下数十メートルにわたって軟弱地盤が広がり、難工事となることが確実。専門家からも困難視する見方が根強く、工事期間はさらに延びる懸念もある。
 また、普天間の返還には、緊急時に米軍機が民間の空港を使用しやすくすることや、新たな施設の完全な運用上の能力の取得など八つの条件が付けられている。米軍に新基地を引き渡したとしても、すぐに返還される保証はない。政府関係者ですら「12年後に絶対に返還されるかどうかは分からない」と打ち明ける。
 沖縄県では、1995年9月に起きた米兵による少女暴行事件をきっかけに、過重な基地負担への不満が噴出。基地の整理縮小を求める声が高まり、96年には日米両政府が普天間飛行場を5〜7年以内に全面返還することを発表した。
 政府は99年に移設先を名護市辺野古と閣議決定したが、沖縄での基地負担のたらい回しに県民は強く反発した。それでも、政府は「唯一の解決策」との主張を盾に取り合わず、国土面積の約0.6%しかない沖縄県内に全国の米軍専用施設面積の約7割が集中し続けている異常な状況は、ほとんど変わっていない。

◆「民意を無視」「別の方策検討を」

 普天間返還の約束は果たされず、米軍の事故や事件と隣り合わせの危険な状況が少なくとも12年以上は残される。玉城デニー知事は負担軽減に向けた対話を求め続けるが、首相は面会に応じないまま。10日も「これからも丁寧な説明を続けていきたい」と述べるにとどまった。
 沖縄大の桜井国俊名誉教授は、今回の着工について「県民の民意を無視している」と厳しく批判。長期化する工事に関しては「『早期』の危険性除去とは言えず、国の主張は詭弁(きべん)だ。国は県との対話に応じ、辺野古ではなく、別の方策を速やかに検討すべきだ」と話す。

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