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6・6プレスリリースの「怪」(9) 新たな第三者スキームの可能性も

JCAHFから回答届かず
 前章「6・6プレスリリースの「怪」(8)」を掲載してから1カ月以上が過ぎた。(一社)日本健康食品認証制度協議会(JCAHF)に編集部が送った質問書に対する回答期限もとうに過ぎたが返事はまだない。この分だと、いつまで待ってもなさそうである。
 「6・6プレスリリースの「怪」(5)」で紹介したとおり、今年3月10日、JCAHFからJHNFA宛てに「当協議会『GMP認証機関』指定許可の有効期間満期終了決定通知の件」とする書面が届いている(下表「これまでの経緯」参照)。(公財)日本健康・栄養食品協会(JHNFA)は現在、GMP認定の指定機関としての資格を喪失している。6月には(一社)日本健康食品規格協会(JIHFS)も満期終了の時期を迎えることになる。

周囲は両者のやりとりをどう見ているのか?
 編集部では昨年、『Wellness Monthly Report53号』(2022年11月10日刊)の特集「サプリメント・健康食品受託製造の現在Vol.2」において、アンケートを取りまとめている。
 質問事項は、「JCAHFが、新しい認証マークに統一するとの方針をPR Timesを通じて発表したのを知っているか?」、「その中身を理解しているか?」、「JCAHFの発足の経緯を知っているか?」、「JCAHFの方針(マークの統一)についてどう思うか」、「JCAHFについてどう思うか?」、「JCAHFの値上によってこれらの料金がマーク使用料や認定更新料などに転嫁されることに対してどう思うか」――などについて、回答の理由も求めている。

 当時、JCAHFのプレスリリースについては多くの受託メーカーがすでに認識していたようである。中身についても、「おおよそ理解している」という事業者が大半だった。
 マークを統一するという方針については、「いいことだと思う」という意見が一部にあったが、「無理」とする意見も。また、「戸惑っている」、「どう対応すべきか分からない」という声が多くを占めた。

 JCAHFの姿勢について「独善的」とする事業者は、「理事会、規約などで全てが独断で決められ、内容が現実的ではない」とその理由を述べている。
 「マークを統一するとなると、(資料・パッケージなどの)印刷も変更しなければならず、販社も含めて不利益しか発生しない。将来的に認証機関を統一するための前段として統一するのであれば、まずはその方向性を明確に示せ」との声もあった。
 特に多かったのが、「JHNFAやJIHFSと事前に調整すべきだった」と、JCAHF・信川理事長の身勝手ぶりを厳しく指弾する声である。
 申請サポート費用や指定許可料金などの値上には、当然、反対だとし、「工場維持コストの増大、設備改修などの新たな費用がかかる」、「結果的に最終製品の値上に及ぶ恐れもある」、「名刺や配布物の全面変更、顧客に対する情報更新の手間や顧客の販売ページ変更の手間」など、料金改定の弊害が広範に及ぶとの懸念が示された。

JHNFA「あくまで白紙撤回の上話し合いを」
 前章で紹介したとおり、編集部のアンケートから4カ月を経た2月16日、JHNFAは同協会の「GMP認証取得事業者」および「安全性自主点検認証取得事業者」宛てに「(一社)日本健康食品認証制度協議会との協議について」とする文書を通知している。同文書に関しては、一部業界団体も同文書を会員宛てに送付したという。その反応について、JHNFA健康食品部の増山明弘部長は、「揉めていて大丈夫か、という問い合わせがあった程度で大きな反響はなかった」とし、「大丈夫、厚労省とも話し合って進めている。GMPの認定は続けていく」と答えたという。同氏は、「(JCAHFの)11月(24日付)の回答は答えになっていない。2月13日付で送った質問書に対する回答待ちの状態」(3月27日時点)と話している。あくまで、白紙撤回の上で話し合いの再開に望みをかける。

 しかし、冒頭で言及したJCAHFから届いた「満期終了決定通知」が、今年2月13日付でJHNFAがJCAHFに求めた「白紙撤回」に対する返書だとすれば、両者に話し合いの余地は残されていないかのような気がする。
 他方、22年11月24日付のJCAHFの回答書によれば、「当協議会がこの度の変革に関し説明を継続することはやぶさかではありません」とある。各論においては平行線の論議が続いているが、総論的には何らかの妥協点を見出したいというのが両者の本音か――。

JHNFAに「従来料金」で請求書届く
 JHNFAによれば4月25日、JCAHFから22年度(22年4月~23年3月)のGMPと安全性認定数の報告依頼「2022年度GMP認定工場数、GMPマーク使用許可製品及び安全性自主点検数に関する報告書提出のお願い」が届いたという。JHNFAが5月2日に報告したところ、同8日、5月18日を振込期限とする「認証マーク使用許可料支払いのお願い」として請求書が届いたという。その請求書の料金は、値上げ前の従来料金だった。背に腹は代えられないということか。18日に間に合うように振込手続きを終えたJHNFAは、「料金も支払ったので、これで完全にJCAHFとのつながりはなくなった」と語っている。

 ところで、行政はなぜ沈黙しているのか? 2008年「『健康食品』の安全性確保に関する検討会報告書」には法的拘束力はないため「当事者同士の問題」(厚生労働省)と、ある意味突き放した格好だ。とはいえ、「(略)このような位置付けであっても、認証協議会が果たすべき役割の公益的な性格にかんがみ、実際に認証協議会を設立するに当たっては、行政当局も関係者への広報周知に協力し、その円滑な組織形成を支援するとともに、設立後の同協議会の運営においても、行政当局を含めた関係者間において十分な情報交換、連携が図られることにより、直面する課題解決に努めるべきものと考える」(原文ママ)と、厚労省自らが報告書で述べているではないか。道義的な責任はなお残る。

製造環境も15年前とは大違い
 市場ではすでに、優に200を超える工場が健康食品GMP認証を取得しており、報告書がまとめられた当時と比べても、健康食品の製造環境はもちろん、事業者や消費者の意識も大きく様変わりしている。そういう観点から見ると、そろそろ08年当時の古い第三者スキームを見直す時期に差し掛かっていると言えるのかもしれない。そういう意味では、JCAHFの「暴走」がきっかけとなって、新たな第三者スキームが生まれる可能性もある。一部の関係者の胸中には、そのためのいくつかの選択肢がすでに用意されているようにも見受けられる。 

 とはいえ、関係者の中には、直面する課題を放置することにより損害賠償請求訴訟、あるいは行政訴訟などに発展しなければよいがと危ぶむ声もある。もちろん、当事者同士はそういうリスクも踏まえた上で交渉事を進めているのだろうが、いずれ何らかの実害が出たとなれば、そういうわけにもいかなくなるかもしれない。最終的に、消費者の安全・安心にも影響を及ぼしかねない問題だけに、十分な情報交換、連携を図ることで、できるだけ早い時期に解決の道筋を付けてほしいものである。

(了)
【田代 宏】

(冒頭の写真:有効期間満期終了決定通知書)

関連記事:6・6プレスリリースの「怪」(1)
    :6・6プレスリリースの「怪」(2)
    :6・6プレスリリースの「怪」(3)
    :6・6プレスリリースの「怪」(4)
    :6・6プレスリリースの「怪」(5)
    :6・6プレスリリースの「怪」(6)
    :6・6プレスリリースの「怪」(7)
    :6・6プレスリリースの「怪」(8)
    :6・6プレスリリースの「怪」(9)
    :6・6プレスリリースの「怪」番外編 第三者スキームはどうなるのか?

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