経済安保の情報保護、新法案を閣議決定 漏洩には罰則
政府は27日、経済安全保障上の秘密情報を扱うための資格制度「セキュリティー・クリアランス(適格性評価)」を創設する法案を閣議決定した。半導体など安保に重要な影響を及ぼす機微情報の保護体制を整え、企業が海外で事業展開しやすくする。
法案の名称は「重要経済安保情報保護・活用法案」。政府が保有し他国や外国企業に漏れると日本の安保に被害が出る恐れがある情報を「重要経済安保情報」に指定する。この情報を扱える人を適格性評価の資格を持つ人に限定する。
資格の有効期間は10年以内とし、政府職員だけでなく民間企業の従業員も対象とする。情報を漏洩した資格者には「5年以下の拘禁刑」などを科す。
拘禁刑は2025年6月の改正刑法の施行後、懲役と禁錮を一本化して創設する。企業の従業員が情報を漏らしたり、不正に取得したりした場合には資格を持つ人だけでなく法人にも罰金を科す。
重要経済安保情報に指定する対象はサイバー攻撃に対処する防御策や人工知能(AI)、先端半導体のような重要物資のサプライチェーン(供給網)に関する情報などが該当する。指定の有効期間は5年間で、通算30年まで更新できる。内閣の承認を得ればさらに延ばせる。
情報を扱うための資格を付与する際は本人の同意を前提に、犯罪歴や薬物の使用歴、精神疾患の有無や家族の国籍など7項目を調べる。法案はプライバシー保護のため「基本的人権を不当に侵害することがあってはならない」と明記した。
14年に施行した特定秘密保護法も政府が持つ情報の保護を目的とする。防衛、外交、スパイ防止、テロ防止の4分野に限定し、経済安保の機微情報は保護対象外だった。新法案が成立すれば、より広範囲の情報保護の体制が整う。
日本はこれまで主要7カ国(G7)の中で唯一、経済安保情報に関する適格性評価の仕組みがなかった。民間企業からは「資格がないため海外企業との商談や説明会に参加できないことがあった」と早急な対応を望む声が出ていた。
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