働き方や暮らしが多様化している今、住まいの価値観は人によってさまざまです。しかしコロナ禍を経たことで、「長い時間を過ごす家をより良いものにしたい」という思いが強まったという人も多いのではないでしょうか。

では、私たちにとって「ずっと満足して住み続けられる住まい」とは、どのような家なのでしょうか?

今回は、健康で快適に暮らせる省エネ建築を経済的に実現することをモットーとする建築家・松尾和也さんに、家づくりの際に重視したい5つのポイントを伺いました。

また、国が定めた基準である「長期優良住宅」を建てるなら、住宅金融支援機構の住宅ローン【フラット35】【フラット50】を選ぶとさまざまなメリットがあります。こちらも合わせて見ていきましょう。

家選びで大切なのは「見た目」より「目に見えない部分」

家を建てることによって、家族が幸せに、豊かになる──。

そんな家づくりを叶えてほしいという思いから、著書やYouTube(登録者数6.91万人)で情報を発信している松尾さん。最近の傾向としては、SNSが普及したことで、現地に足を運ばずに家や部屋の様子をオンライン見学できるルームツアーが流行っていることによる影響が気になっていると話します。

インスタグラムやYouTubeから有用な情報が得られるようになった反面、今の流行に合わせすぎるきらいがあります。タイルの品番やキッチン、外観デザインなど、目に見える部分へのこだわりが強くなりがちです。


しかし、本当に大切なのは、家の耐久性や構造といった目に見えない部分。ここをおろそかにすると、暮らしにくい「デザイナーズ・スカスカ住宅」や、夏は暑く冬は寒い、そして光熱費が莫大にかかる「やせ我慢住宅」になってしまいます。

「生涯、住み抜くことができる家」のポイントは5つ

松尾さんが建築家として重視しているのは、「生涯、住み抜くことができる家」を建てること。家づくりの際、ここは妥協してほしくないというポイントを教えていただきました。

1. 「高断熱・高気密住宅」なら長く快適に過ごせる

優れた断熱性能と気密性能を持つ住宅は、夏でも涼しく、冬でも暖かい環境を提供するために設計されており、省エネルギーで環境にやさしいという特徴があります。


断熱性能は、「HEAT20」という団体が提唱する「G2」(※1)のレベルが目安。国が定めた「温熱等級6」(※2)もほぼ同等なので、住宅会社に確認してみるといいでしょう。

2. 「耐震等級3」をクリアしている

私は兵庫県出身で阪神・淡路大震災を経験しましたが、大地震後は修理の依頼が殺到するためすぐに対応してもらえません。


災害時に、自分の家で暮らせるというのは本当にありがたいこと。そのためには「耐震等級3」(※3)(震度6強〜7の大地震が起きても、軽い補修程度で住み続けられるレベル)はクリアしておいたほうがいいと思います。

3. 日射遮蔽が考えられている

太陽は、冬は大きな味方になりますが、夏は最大の敵です。たとえば新築の場合は、東西北面の窓は小さくして、遮熱タイプのガラスにするのがおすすめ。


逆に南面の窓は可能な限り大きくして、庇(ひさし)、もしくはアウターシェードを設置し、断熱タイプのガラスにすると良いでしょう。

4. 南側の大きな窓と、近隣の建物によってできる影の影響を受けない配置計画

冬の日射を取り入れるためには、南面に庇をつけた大きな窓を。庇があれば、角度が高い夏の日射はさえぎりながら、角度が低い冬の日射は確保できます。


また、建物や車庫、庭の配置計画では、近隣の建物によってできる影の影響を受けないかをよく検討してください。

5. 内部結露を防ぐ

壁の内部が結露すると、シロアリや、腐朽菌という木を腐らせる菌が発生しやすくなります。その点、前述した「高断熱・高気密住宅」は結露対策としても優れています。

※1 参考:一般社団法人 20年先を見据えた日本の高断熱住宅研究会「HEAT20 住宅シナリオ(2021年6月版)
※2 参考:国土交通省「日本住宅性能表示基準等の改正について
※3 参考:一般社団法人 住宅性能評価・表示協会「地震などに対する強さ(構造の安定)

長く安心・快適に暮らせる「長期優良住宅」とは?

住宅は生涯で一番高価で、長く使い、健康と快適性と経済性に影響を及ぼすと言われるもの。

「耐久性や構造についての知識がないまま建ててしまうと、冬寒く、夏暑い、カビや結露が生じやすい家になってしまう危険がある」と松尾さんは話します。

そこで、長く安心・快適に暮らすための1つの指標として活用したいのが、国が定めた「長期優良住宅」(※4)の基準です。

<長期優良住宅の判定基準>

Illustration: Kaori Yamaguchi
Illustration: Kaori Yamaguchi

長期優良住宅とは、長期間の使用に耐えられる一定の住宅性能と維持管理の計画について、国が定める基準をクリアした住宅のこと。主に以下のような特徴(※5)があります。

<省エネルギー性>
必要な断熱性能等の省エネルギー性能が確保されていること。

<耐震性>
極めて稀に発生する大きな地震に対し、継続利用のための改修の容易化を図るため、損傷のレベルの低減を図ること。

<劣化対策>
数世代にわたり住宅の構造躯体が使用できること。

<バリアフリー性(共同住宅等)
将来のバリアフリー改修に対応できるよう、共用廊下等に必要なスペースが確保されていること。

<可変性(共同住宅・長屋)
居住者のライフスタイルの変化等に応じて間取りの変更が可能な措置が講じられていること。

<維持管理、更新の容易性>
構造躯体に比べて耐用年数が短い設備配管について、維持管理(点検・清掃・補修・更新)を容易に行なうために必要な措置が講じられていること。

日本の住宅業界には住宅の性能表示義務がないので、「◯◯工法だから強い」と謳っている住宅が、実は耐震性能1だった…といったことがあります。


しかし「長期優良住宅」は、耐震等級2以上の強度が必要です。このように「長期優良住宅」を目安とすれば、どのレベルのどの分野に関しても、ある程度のバランスの良い性能は担保される可能性が高くなります

環境への配慮から、長期優良住宅の認定を受けると税制や融資において優遇措置があるというのも、建主にとっては大きなメリットです。

所得税においては、住宅ローン控除を受けることができます。通常の住宅の場合、この控除の上限は3,000万円ですが、長期優良住宅であれば上限が5,000万円まで引き上げられます。


さらに、固定資産税の減税期間も延長されます。戸建ては通常、3年間が減税期間ですが、「長期優良住宅」だと2年伸び、5年間に延長されます。

「長期優良住宅」を建てる、選ぶなら、返済においても固定金利で安心の【フラット35】がおすすめ

家を持つ際の最大のハードルとなる費用面においても、大きなアドバンテージがある「長期優良住宅」。

なかでも、住宅金融支援機構と民間金融機関が共同で提供する全期間固定の住宅ローン【フラット35】において、さまざまなメリットがあることは見逃せません。

【フラット35】とは、最長35年、全期間固定金利の住宅ローン。資金の受取時に返済終了までの借入金利と返済額が確定するため、長期にわたってライフプランが立てやすく、安心して将来設計することができます。

※長期優良住宅は、【フラット35】維持保全型に該当し、【フラット35】Sとの併用が可能です。<br> ※【フラット35】維持保全型は、2022年4月以降に適合証明書の交付を受けるものが対象となります。ただし、2022年3月以前に適合証明書 の交付を受けたものであっても、長期優良住宅であることが確認でき、2022年4月以降に資金実行されるものは、【フラット35】維持保全型 の対象となります。その際、新たな手続は不要です。
※長期優良住宅は、【フラット35】維持保全型に該当し、【フラット35】Sとの併用が可能です。
※【フラット35】維持保全型は、2022年4月以降に適合証明書の交付を受けるものが対象となります。ただし、2022年3月以前に適合証明書 の交付を受けたものであっても、長期優良住宅であることが確認でき、2022年4月以降に資金実行されるものは、【フラット35】維持保全型 の対象となります。その際、新たな手続は不要です。
Illustration: Kaori Yamaguchi

「長期優良住宅」は、【フラット35】の借入金利から、当初5年間は0.5%、6年目から10年目までは0.25%の金利引下げを受けることができます。

さらに、住宅がZEH(Net Zero Energy House=ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス、エネルギー収支をゼロ以下にする家)なら、当初10年間にわたって0.5%の引下げを受けることができます。

最長50年の【フラット50】なら、月々の返済額がさらに抑えられる

こうした優遇措置が受けられるのは、「長期優良住宅」を建てる人が増えることで、日本の住宅の品質が向上し、ひいては住宅所有者の生活の質が向上することを、国が期待し、支援するという意味でもあります。

家選びのポイントについてお話いただいた松尾さんによると、日本の家は30年で建て替わることが多いのに対し、アメリカやヨーロッパは住宅の寿命は大体70年から100年ぐらいなのだそう。

日本でも「長期優良住宅」が広がり、住宅の寿命が欧米のように伸びれば、毎世代ローンを組まなくても住み継いでいくことができるのです。

こうした観点から、長期優良住宅の取得の場合に利用が可能となっている最長50年の全期間固定金利住宅ローン【フラット50】を検討してみるのも1つの手

【フラット50】なら、最長50年間の返済とすることで月々の返済額をさらに抑えることができ、さらに、将来住宅を売却するとき、借入金利のままで【フラット35】の返済を住宅購入者に引き継ぐことも可能です。

【フラット50】の借入額は物件価格の9割までですが、【フラット35】【フラット20】と併用すれば、物件価格まで借入れを希望することができます。

【フラット35】【フラット50】の詳しい要件などは、こちらをご確認ください。

【フラット35】【フラット50】を活用することは、ずっと安心できる「住まいづくり」を実現する第一歩

家選び、家づくりで失敗しないためには、長く安心して暮らせる工夫と機能がつまった家が必要です。

そのためには、目に見える部分以上に、目に見えない構造や耐久性を担保する「長期優良住宅」の指標が助けになるはず。

【フラット35】【フラット50】のメリットも活用しつつ、「長い目で見るとコスパがいい家」を手に入れてみませんか?

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松尾和也

松尾和也

㈱松尾設計室 代表取締役。一級建築士。
1975年 兵庫県出身。
1998年 九州大学工学部建築学科卒業。
2005年「サスティナブル住宅賞」受賞。
「健康で快適な省エネ建築を経済的に実現する」ことをモットーにしている。設計活動のほか、住宅専門紙への連載や「断熱」「省エネ」に関する講演も行なっており、受講した設計事務所、工務店等は延べ6000社を超える。2020年からはYouTubeにも取り組み、チャンネル登録者数は6.9万人を超えている。
著書には、『ホントは安いエコハウス』『あたらしい 家づくりの教科書』『これからのリノベーション 断熱・気密編』『健康・快適なZEHのつくり方: 工務店と設計者の新常識』『5人の先生が教える一生幸せなエコハウスのつくりかた』『住まいの耐久性 大百科事典I』『エコハウス超入門 84の法則ですぐ分かる』『建築知識ビルダーズNo.48 松尾式住宅設計術』『お金と健康で失敗しない 間取りと住まい方の科学』がある。

※4 長期優良住宅の普及促進に関する法律(平成20年法律第87号)の規定により認定を受けた長期優良住宅建築計画に基づき建築などが行なわれた住宅。
※5 認定基準の詳しい内容は「長期使用構造等とするための措置及び維持保全の方法の基準(平成21年2月24日国土交通省告示第209号)」をご覧ください。

Source: 【フラット35】,【フラット50】