裏金の実態も闇に? 説明責任を十分果たさないまま「派閥解散」 立件3派閥の言い分は

2024年1月20日 06時00分
 自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件で、会計責任者らが立件された安倍、二階、岸田の3派閥は19日、相次いで臨時の議員総会などを開いた。18日に派閥解散を打ち出した岸田派に続き、安倍、二階の両派閥も解散を決定した。だが、なぜ政治資金収支報告書への虚偽記載を続けてきたのか、裏金は何に使ったのかなど、国民が抱く疑問への説明責任は果たしていない。派閥解散で実態解明をうやむやにすれば、問題解決は遠のく。(大杉はるか)

◆岸田首相、自ら率いた派閥の問題は「報告を受け対応を考える」

自民党安倍派の臨時議員総会を終えて、記者会見の冒頭で謝罪する塩谷立座長(左)と高木毅前国対委員長

 「このような事態に至ったことは国民の政治に対する信頼を損ねるもので極めて遺憾。党総裁として深くおわびする」。岸田文雄首相は19日夜、官邸で陳謝したが、岸田派の虚偽記載に関する説明責任については「(事務局からの)報告を受け対応を考える」と述べただけだった。
 虚偽記載額が最大の安倍派は同日夕、一連の問題が起きてから初めて議員総会を党本部で開催。塩谷立座長ら派閥幹部が経緯を説明するとともに、解散を決めた。塩谷氏は終了後の記者会見で「事務的ミスリードで議員に誤った処理をさせたことをおわびする」と所属議員に陳謝。さらに「長年事務局長から各事務所に『記載をしなくて良い』と伝えられ、事務所で継承され、今日まで来た。それに従って、毎年のパーティーの還付金を処理していなかった」と釈明した。
 安倍派に先立ち、二階派も総会を開いた。自身も虚偽記載で秘書が略式起訴された会長の二階俊博元幹事長が派閥を解散する意向を表明し、了承された。終了後、武田良太事務総長が陳謝したが、なぜ虚偽記載を行ったかについては「経緯と理由は現時点で十分把握できていない」と述べただけだった。
 岸田派は、同派を担当する記者に限定した説明会を開催。根本匠事務総長は「派閥口座への送金のうち、どの所属議員の売り上げか不明なものを報告書から除外していた」と説明したが、虚偽記載分が派閥の口座に残っており、「裏金に該当しない」と強調した。

◆「どうせ解散しても、また復活するだろう」

 首相が唐突に岸田派の解散を打ち出し、安倍派、二階派も追随する形になったが、自民党の全派閥が解散するかは見通せない。首相は19日、党本部で麻生派会長の麻生太郎副総裁、茂木派会長の茂木敏充幹事長らと相次いで会談したが、両氏ともに「(所属議員と)よく相談していきたい」と判断を留保した。
 派閥解散を決めた二階氏は19日の会見で「人は自然に集まってくる。常識の範囲内で(交流を)やっていきたい」と、解散後の議員同士の交流を示唆した。茂木派中堅は「どうせ解散しても、また復活するだろう。問題の本質は派閥が裏金をつくったこと。派閥の解散に焦点を当てすぎてもダメだ」と語った。
 立憲民主党の泉健太代表は19日、「どの組織でもまず実態解明するのが当たり前。その責任者である首相が指導力を発揮して調査をやっていない。自民党に組織的問題があることが明らかになった」と指摘した。

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