ファスト&スロー(上) あなたの意思はどのように決まるか? (ハヤカワ文庫 NF 410)

  • 早川書房 (2014年6月20日発売)
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--「自信」に張り付く「認知バイアス」

それは、自分が知っている(と思い込んでる)ことに自信過剰になり、自分の無知な部分や自分の住む世界の不確実性に対して無頓着であること。自分の理解している部分を過大評価し、多くの事象の背後に起きた偶然の連なりを過小評価(ほぼ無視!)してしまうこと。うまくいった体験について、後知恵であたかも再現可能なように錯覚してしまうことなどだ。

--詐欺師は騙すのが上手いのでなく、認知バイアスの活用が上手いのだ

カーネマンは本書の中でベストセラーの「ビジョナリー・カンパニー」「エクセレント・カンパニー」も痛烈に批判。読者が「わかったような気になる」バイアスを誘発してすぐ価値を失う教訓に対して読者が信じたがる幻想を生んでいる、と。これは自己啓発系や成功者インタビューの多くにも当てはまる。

どうやらこの認知バイアスは、悪用すると怖いスキルになりそうだ。優れた詐欺師は騙すのが上手いのでなく、相手がどのような騙され方をするのが心地良いか?を見極めるのが上手いという。つまり認知バイアスは利用の仕方によっては、相手が自分から騙されていく流れを作ることにほかならない。

--「脱認知バイアス(メタ認知)」への道は険しい

カーネマン曰く、認知バイアスを克服するには相当な努力を要するという。統計学の専門家でも容易にシステム1に頼った意思決定をしている(騙される)わけだからこの問題は根深い。認知バイアスの種類への理解を深め、その兆候を「セルフアウェアネス」や「リフレクション」などでしっかり察知し、それらの認知バイアスから脱するif-then Planningを細かく設定していくこと。

参考文献としては「認知バイアス辞典」( https://x.gd/vZtTR )はオススメ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 0200経営
感想投稿日 : 2019年7月18日
読了日 : 2022年5月13日
本棚登録日 : 2019年5月18日

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