夜の政論

「私こそ日本流保守!」吠える民主・枝野幸男氏、自分を必要とする時代が…「いや応なく東京五輪は民主政権」

とはいえ、安保政策は国家運営の基本。日本をどう守っていくのか、審議では民主党のビジョンも問われるはずだ。中国の軍拡と海洋進出路線などを考えれば、反対一辺倒を唱えるのは、ちょっと無責任ではありませんか。

「日本の安保政策でリアリズムを持つのは、北朝鮮と台湾海峡、ぎりぎりで南シナ海だと思うんですよ。そこに政府が中東・ホルムズ海峡などという日本の存立危機と関係ない案件を絡ませたのが諸悪の根源。仮に『日本を守るためだけに、どうしても国際法上の集団的自衛権の一部を認めざるをえない』などと、まともに提案されていたら、世論にどう説明するか、正直民主党はきつかったと思うんです。ホルムズ海峡のような案件が忍び込んだのは、この期に乗じて外交的ポジションを高めたい外務省の悪ノリですよ。罪深いと思いますね」

ただ、集団的自衛権の是非を正面から議論しないのは、日本の安保政策そのものにとって不幸ではありませんか。

「今問うべきは、憲法が認める個別的自衛権の外縁をどう埋めるか。首相がよく例に出す邦人輸送中の米艦防護も、本当に必要な範囲なら個別的自衛権で説明できます。自民党は『国際法上は集団的自衛権なのだから、憲法解釈の変更が必要』と言いますが、国内的に個別的自衛権と歯止めをかけておくことが重要なのです。安全保障のリアリズムでは、それこそが重要かつ十分ですよ」

枝野さんが箸を置いて、話のスピードをあげる。

「逆に政府は、日本の安保にとって核となる敵基地攻撃能力に関する議論をスルーしている。他国が日本の領土に上陸したら『終わり』というのは、歴史が証明していると思います。日米同盟が基軸というのは当然ですが、いざというとき、まずは自前で守るという体制づくりが不可欠です。それは北朝鮮情勢だけでなく、尖閣諸島(沖縄県石垣市)の問題にも言えることですよ」

これだけ聞くと、自民党の一部より「右寄り」という印象も受ける。枝野さんはどうしても「左派」というイメージが先行していますが…。

「『左派』は御社のレッテル貼りですよ! 私こそ『日本流保守』の政治家。逆に安倍首相は、保守の対極にあるとすら感じます」

安倍首相が保守の対極? どういうことですか。

「日本は古来、海や山など『八百万(やおよろず)』を神とあがめる多神教の国。異なる価値観にも一定の寛容さを持ちながら、村落共同体がベースとなり、日本人は田植えや稲刈りを助け合って暮らしてきました。この集団にいれば、そこそこ生きられる。これが日本の『伝統的保守』の原点であり、欧米でいうとリベラルや社民に近いんです」

「他方、国内で『保守』を名乗る一部勢力は、明治維新以降に流入した『欧米型保守』を大切にしている。このベースはキリスト教などの一神教。多神教と違い、異なる価値観を認めたがらない。特に安倍首相は経済政策をみると、弱肉強食の『アメリカ型保守』にもみえる。欧米流リベラルに近い日本の伝統的保守とは相いれないんですよ。昭和初期が日本の伝統的保守と思っている政治家は、歴史を勉強した方がいい」

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