再エネ賦課金の徴収を直ちに廃止すべきだ
はじめに
国は、CO2排出削減を目的として、再生可能エネルギー(太陽光、風力、他)の普及促進のためFIT制度(固定価格買取制度(※))を導入し、その財源を確保するために2012年から電力料金に再エネ賦課金を組み込んで電力消費者から資金を徴収し続けてきた。2021年までに徴収された賦課金の総額は16.3兆円に達しており、これは国民(0歳児までも含む)一人当たり13万円を支払ってきたことを意味する。
※FIT制度=通常の電力料金より高い価格で再エネ電力を買い取ることで再エネ事業者を補助し、その逆ザヤによって電力会社に発生する損失分を電力料金に上乗せして国民から徴収し、補充する制度。通常、電力料金徴収票の再エネ賦課金欄(朱記)に金額が表記されている。
この賦課金は、再エネ発電設備を建設して電力を電力会社に売り込める個人や新電力事業者に支払われ、結果として2021年までに既に、太陽光発電6000万kW、風力発電500万kWの設備が建設されて、日本の発電設備総量(2億6000万kW)の25%を占めるまでになっている(ちなみに、その太陽光・風力が発電した電力の割合は、2021年で10.2%しかない)。
問題点はなにか?
上記のように、国民は、FIT制度で奨励された再エネの拡充によって日本のCO2排出が削減でき、京都議定書やパリ協定(COP26)で約束したCO2削減目標が実現できると期待して(信じ込まされて)、これまで延々と再エネ賦課金を支払ってきた。
しかるに、日本のCO2排出量は、1990年(京都議定書の基準年、再エネゼロの時代)の11億6000万トンが2019年の11億1000万トンに減っただけで、たった4%しか削減できていない。
これは、効果の挙がらない政策を餌にして多数の消費者から資金を詐取してきたと言うべき状況ではないか?
さらには、FIT制度で多大な資金を補助して再エネの大量建設を奨励しておきながら、冬場には政府が節電要請を出して電力使用量を抑えないと停電の危機にあるという。これは明らかに再エネ偏重というエネルギー政策の失敗であり、失政の負担を国民に付け回しているとしか考えられない。
詐取されたも同然の資金の返還要求は現実的に難しいとしても、今後の追加的な詐取を抑えるために再エネ賦課金の新規徴収を直ちに廃止させることが重要である。
閣僚あるいは元閣僚の有力議員の中には、「再エネ100%でやっていける」「原子力なしで脱炭素化できる」などと言っている方たちがいるが、その方たちは現在のエネルギー逼迫状態やCO2排出量の削減が進まない状況を見ても、詐取同然の多額の再エネ賦課金を徴収し続けていることへの責任を感じないのであろうか。それとも、再エネ賦課金制度は民主党政権が制定したことだから自分達には責任がないと言い逃れるつもりなのだろうか。
まとめ
以上述べてきたように、ここ10年以上続けられてきた再エネ賦課金制度は、CO2削減に実効を挙げていないと同時に、エネルギー政策の失敗をもたらし、失政挽回策として節電要請を発せざるを得ない状況を生んできた。
政府は、再エネ賦課金の徴収を直ちに廃止し、それによって国民の負担軽減を実現した上で、新たなエネルギー政策への協力を依頼するべきである。
関連記事
-
広野町に帰還してもう3年6ヶ月も経った。私は、3・11の前から、このままでは良くないと思い、新しい街づくりを進めてきた。だから、真っ先に帰還を決意した。そんな私の運営するNPOハッピーロードネットには、福島第一原子力発電所で日々作業に従事している若者が、時々立ち寄っていく。
-
北海道寿都町が高レベル放射性廃棄物最終処分場選定の文献調査に応募したことを巡って、北海道の鈴木知事が4日、梶山経済産業大臣と会談し、「文献調査」は『高レベル放射性廃棄物は受け入れがたい』とする道の条例の制定の趣旨に反する
-
内閣府のエネルギー・環境会議は9月18日、「革新的エネルギー・環境戦略」を決定する予定です。2030年代までに原発ゼロを目指すなど、長期のエネルギー政策の方針を決めました。これについては実現可能性などの点で批判が広がっています。
-
経産省は高レベル核廃棄物の最終処分に関する作業部会で、使用ずみ核燃料を再処理せずに地中に埋める直接処分の調査研究を開始することを決めた。これは今までの「全量再処理」の方針を変更する一歩前進である。
-
中国の台山原子力発電所の燃料棒一部損傷を中国政府が公表したことについて、懸念を示す報道が広がっている。 中国広東省の台山原子力発電所では、ヨーロッパ型の最新鋭の大型加圧型軽水炉(European Pressurized
-
アゴラ研究所の運営するエネルギーのバーチャルシンクタンクGEPR(グローバルエナジー・ポリシーリサーチ)はサイトを更新しました。
-
国際環境経済研究所主席研究員 中島 みき 4月22日の気候変動サミットにおいて、菅総理は、2050年カーボンニュートラルと整合的で野心的な目標として、2030年度の温室効果ガスを2013年度比で46%削減、さらには50%
-
アゴラ研究所は、9月27日に静岡で、地元有志の協力を得て、シンポジウムを開催します。東日本大震災からの教訓、そしてエネルギー問題を語り合います。東京大学名誉教授で、「失敗学」で知られる畑村洋太郎氏、安全保障アナリストの小川和久氏などの専門家が出席。多様な観点から問題を考えます。聴講は無料、ぜひご参加ください。詳細は上記記事で。
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間