存記inBBQ

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五「はーいみんなーこっちだよ〜」

熾烈を極めた東京、京都の交流戦。その後、双方の生徒が五条に呼ばれていた。

西「これって…バーベキュー?」

広場には、グリルやラップで包まれている食材、ご丁寧に温かいご飯まで用意されていた。

星「へぇー。って全部最高級品じゃん!さすが五条家当主。金持ちだね。」

綺羅羅の称賛に五条が機嫌良さそうに笑う。

五「アッハハ〜皆大接戦だったからね!奮発しちゃった!僕の時とかはすぐに終わっちゃったからね~」

秤「そうか、五条さんの時は、一人で全部終わらせてそうだもんな。」

秤はそう推測するも、五条は以外に曇った顔をしていた。

五「……いや、僕の力だけじゃないよ。もう一人…」

見かねた岩戸が声を掛ける。

岩「五条、やめよっか。それ以上は。」

五「………そうだね。」

加「…妙だな。少し空気が湿っている気がする。屋内に移動したほうが良いのでは?」

東「いや、高田ちゃんが出ていた朝のニュースで降水確率は10%だと言っていた。雲もないし、お前の気のせいだろう。」

庵「もういいでしょ。早く火を点けて、肉、焼いちゃいましょ。」

歌姫の言葉を合図にそれぞれが肉を焼く用意をしだす。

東「肉を焼くときは表面に薄くオリーブオイルを塗っておくと乾燥しづらくなる上に、網にくっつくこともなくなるぞ。」

星「へー、東堂君よく知ってるね。」

東「ただし!塗りすぎるとオイルが垂れて炎が上がり、にくにススが付いてしまうからな。あくまでうすくだぞ。」

岩「一体その知識はどこから仕入れてきたんだよ…」

紆余曲折ありながらも、学徒たちは素早く準備を進め、激しい戦いの後の団らんを楽しみ始めた。

秤が手を揉みゴマをすりながら加茂に話しかける。

秤「あ、加茂さん!レバーありますよレバー!レバーは貧血予防になるんですよ!いりますか?」

秤(ここで御三家との接点を作っておけば、呪術界にファイトクラブの存在を認めさせられる!)

加「………ありがとう。」

岩「西宮…さん。お願いがあるんだけど」

明らかにさん付けを忘れていた間を開けながら那岐が少しかしこまったように西宮に声をかけている。

西「同い年なんだし、西宮でいいよ。で、何?」

苦手な敬語…対した敬語ではないが、それから解放された那岐がまくし立てる

岩「よかったら後でオレと手合わせしてくれないか?まだ、オレと西宮で戦ってなかったから、お互いの経験に丁度いいかなって思って。」

西「何だ、そんなことね。全然いいわよ。あ、その代わりといっちゃ何だけど、ライン交換してくれない?私、同級生があんなんだから、同年代の同性と話す機会が全然なくて…」

岩「いいよ。後で交換しておくね。」

生徒たちの様子を後ろから見守っていた歌姫が心の中でつぶやく。

庵(良かった。喧嘩とか始めたらどうしようかと思ってたけど、この様子なら大丈夫そうね……あれっ?)

ちょっとした異変。だが、彼女の経験からすると、どんな天変地異よりも危険な異変に気付いた歌姫は、近くにいた綺羅羅を問いただす。

庵「綺羅羅さん!五条はどこに行ったの!」

星「え、なんかずっと満足そうに頷いてるなーって思ってたら、突然『イイこと思いついた!』とか言ってどっか行っちゃいましたけど…」

庵(五条のイイコト?絶対に悪いことじゃない!何があっても生徒だけは守らないと…)

歌姫が生徒たちは自分が守ると決意を固めたその時、歌姫の背後から声がする。

五「どした、歌姫険しい顔して。肉、足りなかった?」

庵「五条!あんた一体何をしに…」

五「まぁ、いいじゃん。あ、シュークリーム買ってきたけど食べる?みんなもおいでよ!」

五条の声掛けを聞いて、生徒が五条を囲み、円を作る。

岩「…それ、ホントにシュークリーム?なんか、変な匂いがするんだけど。」

その言葉を聞いた五条が残念そうな声を出す

五「ゲ、バレちゃったか。さすが那岐。鼻が鋭いね~。と、言うことで、ドキドキ!ロシアンシュークリーム!スタート!ハズレにはワサビが入っていて、辛さは伊地知のお墨付きだよ!」

庵「ロ、ロシアンシュークリーム!?バカじゃないの?わざわざやるやつなんてあんた以外いないわよ!」

五「あ〜……そう言われると思って、あらかじめ僕がバーベキューを用意する代わりに、全員ロシアンシュークリームに参加しなくてはならない縛りを結んでおきました〜」

西「か、かわいくない…」

訝しげな顔をしていた加茂が疑問を呈する。

加「…縛りとは双方の合意があって結べるものでは?」

東「いいじゃないか、加茂。この程度でビビってるようでは術師として二流のままだぞ。」

加「ビビってなどいない。単純に疑問を呈しただけだ。では、私はこれを頂こう。」

強がりか本当かわからないが、そう言って、加茂がシュークリームの中から一つを持っていく。

五「うんうん!若者はそうじゃないとね!あ、僕はこれ。皆で一斉に食べるからまだ食べないでね。」

秤「へぇ。いいじゃん。やっぱ何事も、熱がないとな。」

そう言いながら、秤と綺羅羅がシュークリームを取っていく。

東「オレは…これを貰おうか。」

庵「大丈夫なの?どうなっても知らないわよ。」

東「問題無い。高田ちゃんもそう言っていた。」

岩「まぁ。たまにはこういうのも良いかもね。」

そんな事を言いながら那岐と西宮もシュークリームを取っていく。

五「ハイ!最後は歌姫の分。」

庵「いや、取るわけ無いでしょ」

五「何だ、それなら。みんな~シュークリームもう一個食べたい人〜」

庵(コ、コイツ生徒に渡す気⁉)

この悪魔から生徒を守る。やっとその決意を固めた歌姫が宣言する。

庵「いい!そ、それなら私が食べるわ!」

五「オッケー👌それじゃあ…あれ?一個余ってる。…みんな、ちょ〜っと待ってて。」

次の瞬間、五条の姿が一瞬で消え、後には砂埃しか残らなかった。

……………

五「あ、おじいちゃーん」

おじいちゃんと呼ばれた老人…楽巌寺校長がそこにはいた。

楽「…五条か。どうした?」

五「ハイ、これシュークリームのプレゼント。」

普段の感謝の気持ちです!なんて微塵も思ってない事を思ってるような顔をしながら、シュークリームを手渡す。

楽「なにかと思えば、たまには気が利くじゃないか。では、頂くぞ。モグモグ……うん、美味しかった。有り難う。」

反応がないのを見て、五条はあからさまに不満顔になる。

五「チッ!ハズレか。」

楽「?」

次の瞬間、五条の姿が消え、楽巌寺が一人、残される。

楽「?何だったんだ…」

……………

五「みんな~!おまたせ~。それじゃ食べよっか!せーの!」

五条の合図に合わせて、全員がシュークリームを口に放り込む。

岩「モグモグ…ん、美味しい。」

と、その時…

五「ッ!!!ガッハ!!ゴホッゴホッ!!!」

円の中心で五条が口を抑えて倒れ込む。

庵「…これは普通のやつね。って五条〜♪どうしたのよ〜!日頃の行いが災いしたのね。ざまぁ無いわ」

また、円の外でも…

秤「うん、うまい。ってどうした。東堂」

東「ッ〜〜グフッ」

東堂が苦しみながら地面に倒れ込む。

東(…何故だ、高田ちゃん。俺は貴女を信じてシュークリームを選らんだのに、何故。…ハッ!そうか、これは高田ちゃんからの試練!高田ちゃんからの『私を推すならこれぐらいの痛みに耐えなさい!』というメッセージ!…それに気づくことができなかった俺は…ファン、失格だ…)

東堂の意識が朦朧とした時、東堂の耳にハッキリとした声がかかる。

高「何逃げようとしているの?」

東「はっ!たっ、高田ちゃん!」

高「あなたは一度推すと決めた人から逃げられるとでも思っているの?一度推すと決めたなら最期まで推し通しなさい。」

東(…すまない、高田ちゃん。そのとおりだ。俺は罪すらも逃げる言い訳にしようとした。もう逃げたりなんてしない。ありがとう高田ちゃん。) ツーー

五「オ゙エェ,し、しぬ!ヴァッハ」

庵「アハハハハハッ。しゃ、写真とんなきゃ。…アハハッ」

岩「と、東堂大丈夫?涙出てるし…えっ?笑ってる?キモっ!」

加「…日頃の行いだな」

…阿鼻叫喚の中、東堂が流した涙が、辛さによるものなのか、自らの不甲斐なさを恥じてのことなのか、あるいは嬉し涙なのか、それを知るものは、東堂を含めて居ないのだった。

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