新型コロナウイルスのワクチン接種事業にかかった費用を会計検査院が調べたところ、2020、21両年度の支出総額が4兆2026億円に上ることがわかった。ワクチン確保の費用が全体の6割近くを占め、国は両年度の契約で総人口の7回分以上の計8億8200万回分を確保していた。この算定根拠について、検査院は厚生労働省の資料に十分な記載がないと指摘。税金が無駄になりかねず、改善を求めた。

 新型コロナは19年末から国際的に感染が広がり、国内でのワクチン接種は21年2月に始まった。多額の国費が投入され、国会で様々な議論がなされるなど国民の関心が高いとして、検査院が調査に着手。29日、国会と内閣に結果を伝えた。

 報告書によると、政府が予算計上した接種事業の総額は、20、21両年度で計5兆2149億円。実際に支出されたのは4兆2026億円で、このうち最も規模が大きかったのがワクチンの確保費用(2兆4036億円)だった。ほかに接種事業を担う自治体への補助金(1兆7149億円)や、接種に使う物品の調達費用などが含まれる。

 国は20年10月以降、製薬会社4社と契約を繰り返し、計8億8200万回分のワクチンを確保した。種別では、ファイザー3億9900万回、モデルナ2億1300万回、アストラゼネカ1億2千万回、ノババックス1億5千万回で、契約総額は2兆4718億円に上る。

厚労省「その時々で最善の策」

 製薬会社との契約は、国際的な獲得競争の中、ワクチンが国内で未承認の段階から進んだ。

 検査院によると、厚労省はこれらの数量について「特定の製薬会社がワクチン開発に失敗することなどがあったとしても国民に接種できるよう、将来にわたる接種回数などをシミュレーションして決定した」と説明した。

 だが、同省がワクチン確保の際に作った資料には、製薬会社との各契約で確保した数量の根拠について十分な記載がなかったという。

 検査院は報告書で「確保数量が必要数に比べて著しく過大なら、キャンセル料の支払いや廃棄といった不経済な事態が発生しかねない」と指摘。今後、緊急の場合でも算定根拠資料を作って保存し、事後に妥当性を客観的に検証できるようにすべきだと求めた。

 厚労省の担当者は取材に、「各社との交渉があったなかで、その時々の状況で最善の策を取ってきた」と話す。一方で、検査院の指摘には「今後は事後に第三者が見てわかりやすい資料を作る」とした。

 政府によると、28日時点でワクチンの総接種回数は約3億8308万回となっている。(山本孝興)

世界で獲得競争 非常時だったとしても…

 「8億8200万回という数字が多すぎたのか少なすぎたのか、それとも適切だったのか、判断することができないというのが検査の結論だ」。会計検査院の担当者はこう語る。

 厚生労働省は2020年以降、…

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