事務員と勇者と会計と
事務員「・・・・・・光の剣?」
アリス「はい!アリスは勇者の証である光の剣を求めています!」
事務員は満面の笑みでトンチンカンなことを言い出したアリスから保護者へと視線を移した
『通訳してくれ』という意味が込められた視線を受けてユウカは一歩前に出る
ユウカ「ACの兵装にエネルギーを真っ直ぐに放出しながら攻撃する近接兵装があるでしょ?アレを一つ売って欲しいの」
事務員「ああ、パルスブレードっスか」
正直、勇者の証とやらは今一つ理解できないがユウカがパルスブレードの事を言っているのは理解できた。しかし、今度は別の疑問が浮かんでくる
事務員「でも、ミレニアムってAC持ってなかったっスよね?そもそもRaDと組んでるんだからそっちからチェーンソー買えばいいじゃないスか」
アリス「チェーンソーじゃダメなんです!勇者には光の剣が必要なんです!」
事務員「・・・その背中に背負ってるゴツイのがあれば十分じゃないっスか?」
アリス「確かにスーパーノヴァは光が出ますけど、剣じゃないんです!アリスは光の剣が欲しいんです!」
ユウカ「アリス、落ち着きなさい」
ユウカはアリスを窘めると再び事務員と向き合う
ユウカ「キヴォトスにはビームやレーザーを撃ち出す武器を作る技術は無いわ。それはRaDも同じでエンジニア部はキヴォトスの外の技術を研究したがっているの」
事務員「そう言えば以前エンジニア部がウチの拠点に来た時ACのパーツ分解しようとしてたっスね」
ユウカ「それは・・・ごめんなさい」
事務員「別に責めてるわけじゃないっス。ロニーさんが釘刺したおかげでおとなしかったっスよ」
ユウカ「そ、そう?それならいいのだけれど・・・」
事務員「話を戻すっスけど・・・」
アリス「はい!アリスは勇者の証である光の剣を求めています!」
事務員は頭を抱えた
事務員「・・・戻りすぎっス。パルスブレードはACのジェネレーターからエネルギー供給を受けて稼働する武器なんで、人間用のサイズなんてないっスよ?」
アリス「無いんですか・・・?」
アリスの目じりが下がり事務員に罪悪感を与えるがこればかりはどうしようもない
事務員「そんな目で見られても困るっスよ・・・」
ユウカ「それは承知の上よ。研究しようにも現物が無ければどうしようもないもの」
事務員「それならボスから認可もらってこっちで発注しとくっスね。納期の返答が来たら・・・」
ウォルター「パルスブレードが欲しいのなら、タキガワから直接購入したらいいはずだ」
事務員「ボス?いつからそこに?」
突然現れたウォルターに三人は驚愕する
ウォルター「たった今だ」
アリス「あっ!むぐっ・・・」
ユウカ「初めまして、ミレニアムサイエンススクールのセミナー会計、早瀬ユウカです。この子は天童アリスといいます」
アリスが余計なことを言い出す前に口を塞いで自己紹介を行い誤魔化すユウカ
ウォルター「ハンドラー・ウォルターだ。好きに呼んでもらって構わない」
ウォルターは一瞬怪訝な顔をするがすぐに話を戻した
ウォルター「ミレニアムが相手ならタキガワも応じるだろう。わざわざハウンズを経由する必要も無いはずだ」
ユウカ「へぇ、キヴォトスの外にもタキガワって名前の企業があるんですね」
ウォルター「同じ企業だ。タキガワは俺たちが来る前からキヴォトスに根をおろしている」
事務員「知らなかったんスか?」
ユウカ「ちょ、ちょっと待って下さい。キヴォトスのタキガワってトリニティやワイルドハント相手に楽器を売ってる楽器メーカーですよ?」
事務員「楽器にAC用の武装、船舶、後は二輪車も扱ってるっスね」
ユウカ「し、知らなかった・・・」
事務員「あぁ、だからウチに頼みに来たんスね」
ウォルター「二輪車や船舶はともかく、AC用の武装は俺たちが来るまでは需要が無かっただろうからな。取り扱っていなかったとしても無理はない。俺たちが問題なく購入できているなら、ミレニアムも購入できるだろうが・・・。一応こちらからも話を通しておこう」
ユウカ「本当ですか!?ありがとうございます!ほら、アリスもお礼言って」
アリス「はい!ありがとうございます!」
帰っていく二人を見送った後、事務員はウォルターに尋ねた
事務員「随分サービスしたっスね?ウチを経由させれば仲介手数料としていくらか上乗せ出来たと思うっスよ?」
ウォルター「ハウンズは子供相手に阿漕な商売をすることは無い。覚えておけ」
事務員「・・・すんません」
ウォルター「・・・しかし、そうか」
事務員「ボス?」
ウォルター「リズ・・・、お前にも、友人が出来た・・・」
事務員「ダチってほど仲いいかは・・・って泣いてる?!なんで!?」