オミクロン株対応の新ワクチン、臨床試験を開始 ファイザーとビオンテック

フィリッパ・ロクスビー、BBCニュース保健担当記者

Pfizer vaccine vials

画像提供, Reuters

米ファイザーと独ビオンテックが、新型コロナウイルスのオミクロン変異株を対象とした新たなワクチンの臨床試験(治験)を開始した。

両社はこの治験で、新たなワクチンについて、ブースター(追加)接種での効果と、ワクチン未接種者に対する3回接種それぞれの効果を調べる。

治験には成人1400人以上の参加が見込まれている。アメリカで実施される可能性が高い。

米モデルナも近く、独自のオミクロン用ワクチンの治験を始める予定。

英オックスフォード大学と英アストラゼネカも共同で、新型ワクチンの開発に取りかかっている。

ワクチンメーカーは、新たな変異株が出現するたび、当初のワクチンに変更を加えてきた。しかし、感染が急速に拡大するオミクロン株の到来を受け、ここ2カ月間、その作業のスピードを速めている。

多くの国が現在、ブースター接種や、当初のワクチンの3回目接種を提供している。オミクロン株に対しても重症化や死亡を防ぐ一定の効果があることが示されている。

だが、感染や軽い症状を防止する効果は小さく、弱まるのも早い。

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「不可欠」

ファイザーのワクチン開発責任者のキャスリン・U・ジャンセン上級副社長は、「新型ウイルスへの警戒を続けるには、高い予防効果を維持する方法を見つけなくてはならない。変異株に対応する今回のようなワクチンを開発し調査することは、そのゴールに向けた私たちの取り組みに不可欠だと信じている」と話した。

一方、ビオンテックの最高経営責任者(CEO)で共同創業者のウグル・サヒン教授は、「ワクチンによって得られる、感染および軽中度の症状に対する予防効果は、過去のウイルス株の場合に比べ素早く弱まる」ことが、新たなデータによって示されたと説明。

「今回の研究は、変異株に基づいたワクチンを開発するための、科学に依拠した取り組みの一部だ。過去の変異株に対するのと同程度の予防効果をオミクロン株でも発揮しながら、予防効果が長持ちするワクチンの開発を目指している」と付け加えた。

ファイザーとビオンテックは今年、COVID-19のワクチン40億回分の生産を見込んでいる。今回の治験で効果が認められた場合、改良されたワクチンもその中に含まれるという。

最新ワクチンの治験では、成人615人が、現行のファイザー/ビオンテック製のワクチンを2回接種し、その後にオミクロン株を対象にしたワクチンを1~2回接種する。

さらに、すでに現行ワクチンの接種を3回終えている別の600人が、重ねて現行ワクチンを1回接種するか、オミクロン株用のワクチンを1回接種する。

このほか、ワクチン未接種の200人が、オミクロン株向けの新たなワクチンを3回接種する。

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急速な拡大

ワクチンメーカーは、オミクロン株が南アフリカで確認されてまもなく、同株に対応する新たなワクチンを100日以内に準備できるとしていた。

しかし、最新のワクチンが現行のものより優れているのか、疑う見方もある。

現行ワクチンは、中国で出現した当初のウイルスに対応するよう作られている。アルファ、デルタの両変異株に対しては、高い効果を発揮している。

オックスフォード大学/アストラゼネカ製ワクチンの開発を率いたアンドリュー・ポラード教授は最近、オミクロン株の感染拡大が非常に早いため、「改良されたワクチンを素早く製造、提供」して状況を変えるのは「かなり難しい」との考えを示した。