秋葉原テロ編 序章

秋葉原テロ編 序章


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薄暗い廃墟に三つの影が落ちる

現在時刻二十二時五十分。耳を澄ませば騒音が聞こえてくる

ある者は自身の掌を見つめ、ある者は壁から生えてきた花を見つめている


「これは儂の衝動的な感情を抑える為の行為だ花御。お前が付き合う義理は無い」   「るあが味意とっきはに為行のこ…。瑚漏、よんせまりあ事なんそ」


辛うじて壁に張り付いている時計がカチ、と軽い音を立てた



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「あーちょっと虎杖あんた今ウノって言った!?」                「しーっ!皆寝てるから静かにしろって言ったのは釘崎の方だったろって!」

呪術高専 現在時刻二十二時五十八分

一週間前に行われた交流戦にて破壊された校舎の修復に当たっていた生徒達、そして校舎修復の助っ人として駆けつけてた九十九。交流戦、校舎修復の肉体的疲労が溜まりに溜まった生徒達は泥のようにパタパタと自身に割り振られた部屋に戻って泥の様に眠っていた


そんな中、とある二人は夜中まで起きて娯楽に時間を費やしていた        宿儺の器、虎杖悠仁と鉄骨娘の釘崎野薔薇である。二人も確かに他の高専生と同じ位身体的疲労が溜まっている。それでも何処かアドレナリンが分泌されてしまっているのか深夜テンションへと突入してしまった二人は呑気にUNOをプレイしていた

色とりどりのカードをお互いの手に握り、ゲーム進行するそれは修学旅行などで定番とされるカードゲームである。年頃な二人が持参していない訳が無くなんやなんやと集まってせっせとルールを互いに確認しUNOに勤しんでいた


そんな緩い空気が二人の間には流れていた                    しかし次の瞬間、二人は確かに感じ取ってしまったのだ

数枚のカードがパラパラと床に落ちる音がして、二人が顔を合わせる


「虎杖」                                  「あぁ、言わなくても分かってる」


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ぱちぱち、と目の前で炎が燃える

任務というなの雑魚処理は順調に進んで行った。まぁ、雑魚処理程度で手こずってたら最強なんて名乗れないので順調なのは当たり前ではあるのだが

ホテルを予約して泊まるのも何処か馬鹿らしくなってしまって。           補助監督が折角手配してくれた部屋はそのまま補助監督に使わせた。久しぶりの野宿は新鮮な気持ちになれた


それに、野宿をしている理由はもう一つある。此方はちゃんとした理由だ       今は影の中でゆったりと休憩を取っている御影の存在である

御影は気配を消すのが上手いのでホテル内に連れて行っても何ら問題は無いのだろうが、前御影の事をペット扱いすると酷く傷付いたようでそれ以降そういう態度を取らないように頑張っているのだ


「明日は千葉だってよ御影。全く、僕も生徒達と一緒に校舎修復したかったな〜…」


現在時刻二十三時



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鉄の焦げる匂いが辺りに充満していて咄嗟に腕を鼻に押し付けた          道路沿いに植えられている木は燃えていて、高く建っていたビル群は見る影も無い


現在時刻二十三時二十二分。現在地、秋葉原

総人数九人。神妙な顔立ちをした術師が現地到着を果たした




「っはぁ!?何でお前がここにいんだよ!?」


秋葉原出発前、高専生は虎杖と釘崎の二人に叩き起されせっせと出撃準備をしていた

そんな時、鳥居の方からゆったりとした足取りをした二つの影が見えた。片方の影は武器を背中に担いでいて、また片方の影は特徴的な帽子を頭に被っていた

緊急事態だった事もあり最初は皆が皆その二つの影をとても警戒した。が、その警戒も直ぐに解かれる事となった


漸く目で捉えられる、となって浮かび上がった二つの影の正体は乙骨憂太とミゲルのものであった。彼等もまた、五条に呼ばれて高専校舎を修復に来た助っ人であったのだ


「あははは…。実はもっと早く五条先生に呼ばれてたんだけどね」         「あのクソ教師…いやまぁ今はめっちゃ助かった。戻ってきてすぐで悪いが今から秋葉原に行く。…特級が二体、街で暴れ回ってるらしい」


そう乙骨に告げた途端、友達に会えて嬉しかったというオーラが一変した      現代の異能、乙骨憂太。彼の才能は測りきれない





「私達一班は街中の探索、乙骨君が率いる二班は崩壊していない建物内の探索を頼む」

「「了解!」」

駆り出された術師達は二班に別れて行動をする

一班は特級術師、九十九由紀と高専生二年の禪院真希、狗巻棘、パンダの四人班    二班は特級術師、乙骨憂太と付き添い人のミゲル。そして高専生一年の虎杖悠仁、伏黒恵、釘崎野薔薇の五人班だ

深夜に何の情報も無く始まった秋葉原テロ事件は近頃活動が活発になってきているという特級呪霊達の仕業だとされる。 夜中までUNOをしていた虎杖と釘崎が居なければ現地到着が大幅に遅れていたと考えると恐ろしい話である


何より、最強と名高い五条悟。人に友好的な呪霊、御影の二人が居ないというのが不安な所であった

御影を呼び出す呪具も今は不調なのか、何時もなら直ぐにやってくる筈の御影の姿は現れず、どうにも不穏な空気が主に高専生の中に漂った


しかし、その二人の到着を待っていても埒が空く訳ではなく。           特級術師二人とあの五条悟の攻撃を凌いだ実力者のミゲル。着々と実力を身に付けている高専生が揃っている。出来る事はする。それが術師というものだから


戦いの火蓋は切って落とされた

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