「腕が立つ・口も立つ・研究もできる」 3拍子揃った実力派の麻酔科医を育成

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腕が立つ・口も立つ・研究もできる 3拍子揃った実力派の麻酔科医を育成

多様な働き方を実現する
自治医科大学 麻酔科学・集中治療医学講座

取材日 : 2023年5月

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医師の働き方改革の本格導入検討が始まる以前から、オンとオフのメリハリある働き方が可能なことで知られる麻酔科。
自治医科大学附属さいたま医療センター(埼玉県・628床、以下、附属さいたま医療センター)、自治医科大学附属病院(栃木県・1041床、以下、本院)はいずれも、日本では数少ない麻酔科医主導のclosed ICUを所有。成人はもちろん小児の集中治療や豊富な心臓血管外科手術においても、麻酔科医が主役になって現場をマネジメントできる環境が整っています。
今回は、2つの自治医科大学附属病院で活躍する麻酔科医に、その魅力を伺いました。

麻酔科医はチーム医療のハブ
3拍子揃った麻酔科医の育成に注力


地域医療の要としての役割を担う一方、研究機関としての働きも持つ両院には、県内はもちろん周辺地域からも多くの困難症例や重症度の高い患者が集まり、早い時期からさまざまな術式の症例を経験できます(※)。両院とも日本では、数少ない麻酔科医を中心としたclosed ICU(専従医が直接の治療にあたるICU)を有し、麻酔科専門医研修プログラムにも、3カ月間のICUローテーションが組み込まれています。麻酔科主導のICUを経験できる施設は全国的にも少数で、麻酔科医として成長したい医師にとっては非常に恵まれた環境と言えるでしょう。


※参考:附属さいたま医療センターの2022年度手術件数7601件、そのうち麻酔科手術管理件数は年間5681件(約75%)。
本院の麻酔科管理件数はさらに多く、2022年度手術件数9913件、麻酔科管理件数は約7200件(約73%)に及びます。


両院の集中治療部と、附属さいたま医療センター麻酔科をマネージする讃井將満教授は次のように話します。


讃井將満 教授

讃井將満 教授

「優秀な麻酔科医の育成には豊富な症例数が欠かせません。早いうちから多くの領域における症例を経験できることこそが、自治医科大学麻酔科の最大の強みです。 附属さいたま医療センターは、成人の心臓血管外科手術が年間約800件と国内屈指の症例数を誇り、本院は小児ICUや肝・腎移植、緩和ケアなど、異なる強みを持つことも特徴の一つ。今後は、双方の強みを生かした研修や相互交流にも一層力を入れていく方針です」

更に、麻酔科医には、技術力向上に加え、「ドクターズ・ドクター」としてチーム医療の要となるべく、コミュニケーション力が重要だと言います。
「附属さいたま医療センターでは、症例数の多さだけでなく、心臓血管外科医とフランクにディスカッションできる良好な関係があり、術前・術中・術後まで麻酔科医が主体となって患者さんを診ることができます。このような環境に身を置くことは、麻酔科を志す専攻医にとって非常に大きなメリットになりますね」

また、学閥がないフラットな関係性の中、麻酔科のトップランナーから研究や論文のサポートを受けられたり、個人のライフスタイルに合った働き方を提供できる体制作りに努めたり、個々のニーズに応じたフレキシブルな対応にも注力する讃井教授。

「我々が目指すのは『技術がある・コミュニケーション力が高い・研究もできる』3拍子揃った麻酔科医の育成です。麻酔科主体のclosed ICUをはじめとする一流のトレーニング施設で、麻酔科医として揺るぎない実力をつけ、なおかつプライベートも大切にしたい医師には、ぴったりの環境がここには揃っています」

讃井將満 教授

讃井將満 教授

本院麻酔科の様子

本院麻酔科の様子

将来のキャリアアップを全力サポート


アメリカのマイアミ大学麻酔科でレジデント・フェローを経験した讃井教授は、自らの経験を踏まえて「専攻医のうちにできるだけ多くの症例数を経験すること、さらには一つの施設ではなくいろいろな施設で、いろいろな指導医から学ぶことが重要」と指摘します。

「医療の先行きが不透明な中、この時期に確かな実力をつけることは、一生の財産になります。私自身がそう実感しているからこそ、例えば、附属さいたま医療センターでは症例数が少ない小児麻酔は、同分野が得意な本院で学ぶなど、関連病院での研修も推奨しています。また、麻酔科医のキャリア形成支援にも注力し、医局員として席を残しながら、国内外の他施設・機関への留学なども積極的にサポートしています。関連病院への派遣基準も、その先生のためになるかどうかが第一で、麻酔科一丸となってご自身がやりたいことを叶えられる環境づくりに努めています」

地域の3次救急を担う両施設には日々、重篤な状況の患者が搬送されてきます。まさに点滴ライン一本取れるかどうかによって生死が分かれるような場面に遭遇することも…。

「どんなに困難な状況でも決して動じず『やりましょう』と力を合わせるのが当麻酔科・集中治療部の伝統です。嬉しいことに、我々のもとにはここで実力を付けたいという意識の高い若い医師が全国から集まってきていますね」

毎朝9:00からのカンファレンス

毎朝9:00からのカンファレンス

【自治医科大学附属病院(栃木県)】
小児集中治療、ペインクリニック、緩和など
サブスペシャリティも極められる環境


新生児から高齢者に至るまで、年間約7600件もの麻酔管理を行う自治医科大学附属病院の麻酔科。難症例の経験が多数積めることに加えて、大学病院に併設された自治医科大学とちぎ子ども医療センターで行う小児集中治療室(PICU)での研修に注目が集まっています。


本院麻酔科の専門研修プログラムでは、2年目に3カ月間ICUでの研修が組み込まれており、PICUでの研修も可能。希望すれば3年目以降もPICUでの研修が継続できます。

「麻酔科専門医の取得には25の小児麻酔症例が必須ですが、当院の年間約1500件を数える症例数は全国トップクラスです。麻酔科医が管理運営するPICUは全国的にも珍しく、麻酔科医としての実力をつける上で大きなプラスとなるはずです」と元日本小児麻酔学会理事長の竹内護教授。


初自治医科大学附属病院 麻酔科主任教授 竹内護先生

自治医科大学附属病院
麻酔科主任教授 竹内護先生


大学病院でありながら、さまざまな大学の出身者が所属する同院の麻酔科。誰でも馴染みやすい雰囲気に魅力を感じる医師も少なくありません。

「入局して学閥を感じることはほぼないでしょう。現在、10年目以下の若手医師の2/3が女性ですが、性別にかかわらず働きやすい環境です。私立大学には珍しく土日が休みで、当直明けの日はなるべく朝一で、遅くとも午前中には帰宅するように指導しています」

讃井教授と同様に「実力のある麻酔科医を育てたい」と話す竹内教授。
「これからの麻酔科医は小児麻酔、心臓麻酔、集中治療、ペインクリニック、緩和などプラスαの技量がないと生き残りは難しいでしょう。若い先生方には日頃から、サブスペシャリティの取得を目指すように伝えています。当院にはさまざまな選択肢がありますので、どの領域に進もうとも、しっかりサポートしていきます」

初自治医科大学附属病院 麻酔科主任教授 竹内護先生

自治医科大学附属病院
麻酔科主任教授 竹内護先生

PICUでの治療

PICUでの治療

多職種とのチームワークを重視するICUでコミュニケーション力を育成


本院のICUには、集中治療のみならず、内科や救急科、呼吸器内科、麻酔科など複数の指導医が集まっています。麻酔科専門医研修プログラムではICU研修は3カ月が基本ですが、希望すれば延長も可能。術中だけでなく、術前・術後の患者の経過をしっかりと把握することができます。


集中治療部の方山真朱先生は「併設するこども医療センターのPICUと、大学附属病院の成人用ICUの両方で経験が詰める環境は、当学の強みだと思います。PICUでの研修を希望し、短期・長期問わず、当学にいらっしゃる先生もいます」と話します。


自治医科大学附属病院  集中治療部指導医 方山真朱先生

自治医科大学附属病院
集中治療部指導医 方山真朱先生


大学病院ならではの重症患者以外にも、市中病院で経験するようなコモンディジーズまで、非常に幅広い研修ができることや、内科系の指導医が中心となったclosed-ICUであることも特徴的です。

「病態生理からアプローチし、時間をかけて正しい診断を付けることをコンセプトにしていますが、このような姿勢で集中治療室を運用する大学病院は、全国的にも稀ではないでしょうか」(方山先生)

集中治療は多職種が集まる場所であることから「我々は多職種とのチームワークを非常に大事にしています。当ICUでは1つの視点だけでなく、複数の視点でマネジメントできるように、コミュニケーション力の育成にも力を入れています」

本院のICU/PICUでは、生体や脳死患者の肝臓や腎臓などの移植医療にも携わることができ、移植手術後の術後管理の研修を受けられます。さらに現在、CCUとICUを同フロアで運用するための改修工事を計画中で、完成すればより質の高い集中治療をシームレスに提供できるようになります。

「ICUというとキツイ、大変と思われがちですが、私たちは全員、プライベートの時間を大切にしながら診療に取り組んでいます。豊富な症例数、研究、教育の3本柱が揃う大学病院で集中治療を学びたいという方は、ぜひ我々の門戸を叩いてみてください。一緒に働けることを楽しみにしています」(方山先生)

自治医科大学附属病院  集中治療部指導医 方山真朱先生

自治医科大学附属病院
集中治療部指導医 方山真朱先生

専門医取得後の選択肢の幅広さ・麻酔科の働きやすさは性別問わず魅力


自治医科大学附属病院にも、ダイバーシティ&インクルージョンを尊重する文化が根付いており、出身大学も経歴も異なる専攻医が全国から集まってきます。

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自治医科大学附属病院 麻酔科専攻医
左から、中村美織先生、柳沼和史先生、三澤実紀先生

小児科専門医で、地元福島県の大学病院では開設したばかりのPICUに携わり、集中治療専門医、呼吸療法専門医も取得する柳沼和史先生は、麻酔科主導のPICUを学ぶために同施設へ。
「麻酔科がPICUを管理しているのは東日本ではここだけです。特に小児心臓麻酔を麻酔から術後管理まで一貫して担当していることに魅力を感じました。小児の心臓外科など手術件数も多く、PICUを目指す人が修行するには、これ以上ない環境だと思います」


麻酔科専攻医2年目の三澤実紀先生の将来の夢は、集中治療の道に進むこと。
「自分でやってみることを良しとし、困った時はいつでも相談できる環境がありがたいです。麻酔のアプローチの仕方は指導医によって異なり、なぜその方法を選ぶのかなど、日々学ぶことがとても刺激的で勉強になります。まずは専門医取得が目標ですが、途中で目標が変わっても、幅広い選択肢があることが麻酔科の魅力です」


23年4月に麻酔科専門医を取得し、産休から復帰したばかりの中村美織先生は、現在、週30時間(週3日)の時短勤務中です。ワークライフバランスが取りやすい麻酔科の魅力について、中村先生は以下のように話します。
「子どもが小学3年生になるまで時短勤務ができるので、育児との両立もしやすく、無理なく勤務できています。麻酔科には多様な経歴の医師がおり、どんな人でも馴染みやすい雰囲気があります。研修医1人に対し指導医が1人付き、しっかり学べる指導体制も大学病院ならではの手厚さです」


出産・育児などのライフイベントで、一時的にキャリアアップのペースが落ちたとしても、「働きやすい環境がここにはある」と中村先生は言います。
「育休を終えて復職した私の次の目標はペインクリニックの専門医取得です。それ以外にも、たくさんの道があるのが麻酔科です。迷っている方はとりあえず入ってみて、サブスペシャリティは後から選んでもいいのではないか、とお伝えしたいですね」


この他にも、大学病院として研究に注力できるサポート体制も整備する本院では、人工呼吸器の領域における研究で世界をリードしており、専門医取得後は研究に注力したいという医師からも支持を集めています。

【自治医科大学附属さいたま医療センター】
麻酔科と集中治療がセットの研修で早いうちから難症例を経験


麻酔科専門医取得後のキャリアとして、代表的な選択の一つが集中治療です。附属さいたま医療センターの指導医・飯塚悠祐先生もその一人で、もともと集中治療の仕事がしたくて麻酔科専門医を取得したそうです。


自治医科大学附属さいたま医療センター 麻酔科指導医 飯塚悠祐先生

自治医科大学附属さいたま医療センター
麻酔科指導医 飯塚悠祐先生

「当施設は症例数がとても豊富なので、専門医取得に必要な特殊症例は1~2年間で達成できてしまいます。麻酔科医が中心のclosed ICUで集中治療を極められる環境に身を置く中で、中には麻酔科専門研修中に約2年間ICU研修をする専攻医もいます。このように麻酔科と集中治療がセットになった研修を提供できることが、当施設の強みです」と飯塚先生。

集中治療以外にも、同院が得意とする心臓血管外科や胸部外科などの分野に興味を持って入局する医師も多く、「専門医研修1年目の夏頃から心臓血管外科の症例を経験できることは大きな魅力でしょう」

「自分で考えられる麻酔科医を育てたい」と語る飯塚先生。
「この症例ならこの麻酔といった画一的な方法ではなく、その時々で最善の麻酔法を自ら考える、そんな経験を大事にするように心がけています」

closed ICUに携わる専従集中治療医のバックグラウンドは麻酔科、救急科、総合内科、循環器内科、外科、腎臓内科、血液内科、診療科など実に多彩です。飯塚先生は現場の医師として、さまざまな経歴を持つ医師が馴染みやすい雰囲気づくりにも力を注いでいます。

「多様性を大事にするのは当大学麻酔科・集中治療科の良き伝統です。人が増えれば、他施設への研修や留学などのチャンスが広がります。私自身、厚生労働省の医系技官として出向し、貴重な経験をさせてもらいました。今度は自分が後輩たちの可能性を広げられるように努めていきたいと思っていますので、後輩たちには学閥のないこの環境で、人生プランをよく考えて、自分の思う道に進んでほしいですね」

自治医科大学附属さいたま医療センター 麻酔科指導医 飯塚悠祐先生

自治医科大学附属さいたま医療センター
麻酔科指導医 飯塚悠祐先生

学閥なく、メンバーの多様性が刺激に。互いが成長し合える雰囲気


自治医科大学附属さいたま医療センター麻酔科専攻医 清水麻衣先生、近藤真先生

自治医科大学附属さいたま医療センター
麻酔科専攻医 清水麻衣先生、近藤真先生

元心臓外科医の近藤真先生は医師になって9年目に、麻酔科専門医への転身を決意して附属さいたま医療センターへ。

「心臓血管外科の症例が多いことと、麻酔科主体のICUがあることに魅力を感じました。麻酔科には私以外にもいろいろなバックグラウンドの人がおり、話しているととても勉強になります。麻酔科がICUのマネジメントを任されるなど、外科からの高い信頼を感じます。その分、実力が求められ、勤務中は忙しいですが、男性医師も育休を取るなどオンオフがきっちり分けられるので、性別を問わず働きやすい環境です」

埼玉県内で心臓麻酔をしっかり学べる施設を探していたという清水麻衣先生。

「専攻医1・2年目から重症の患者さんや、困難な症例も指導医と共にディスカッションしながら経験させてもらえるので、心臓麻酔を学びたい医師にとってはとても恵まれた環境です。多くの症例を経験して成長していけるのが当科のいい所。出身大学はバラバラですが、医局の雰囲気はとてもいいので、安心して来てもらえればと思います」

自分で立てた麻酔計画を、指導医に否定されることはまずないそう。むしろサポートして助言をもらえることも、やりがいや成長意欲に繋がっているようです。

自治医科大学附属さいたま医療センター麻酔科専攻医 清水麻衣先生、近藤真先生

自治医科大学附属さいたま医療センター
麻酔科専攻医 清水麻衣先生、近藤真先生

手術中

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ECMOカー・ドクターカーの前で
救急科メンバーと一緒に

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救急科メンバーと一緒に