守り、助ける

守り、助ける


主様に攫われてしばらく経って兄弟の皆様に受け入れられた頃。

ファーミン様と一緒に小さいドミナ様を見に行ったことがあった。

透明化してこっそりと寝ているドミナ様を見る。

「……小さいですね」

「お前より子どもだからな」

ファーミン様は優しい顔でドミナ様を見ていた。

「お兄ちゃんたちが守ってやるからな」

そう言ってファーミン様はドミナ様の頭を撫でた。


大きくなった頃。

警察学校の学生に出会った。

仕事の帰りの後に私の方に向かって走ってくるひったくりをうっかり撃退してしまった。

それが彼と話すようになったキッカケだった。

無茶をしたらダメだと怒られた。ひったくりを倒したことに礼を言われた。

兄弟の皆様とセル以外に気を使われたのは初めてだった。

街で出会うと時々話すようになった。

……まあ基本私は相槌を打つだけだったが。

彼と一緒にいるのは、多分楽しかったのだと思う。

そんなある日、彼は死んだ。

「何か言い残したいことはありますか?」

「……死ぬの前提っすか?」

「見た感じだともう手遅れなので」

「そう、ですか。……心残りがあります」

「はい」

「助けたかった子がいるんです」

「そうですか」

「……その子はおそらく無理やり犯罪をさせられていました」

「……」

「多分その子に犯罪をさせていた組織の人が、僕にこの傷を負わせたんだと思います」

「……その子の名前は?」

「ドミナと言っていました」

「……」

「助け、たかったな……」

「……」

「僕の話を聞いてくれて、ありがとう、ございます。やっぱり、オーターさんって優しいひと……」

そう言ってアレックスは死んだ。

「……私は優しくなんてないですよ」


ある日主様が言った。

「ドミナが死んだ」


助けなかった。

守らなかった。

何も出来なかった。


「……私は優しくなんてないですよ」


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IFオーター(諦めオーター)


薬物や禁忌魔法の実験体として一時期使われていたが、優れた魔法の素質があったことが原因か生き残ったので、兄弟の付き人兼人質にされた。

実験に使われていたこととイノゼロの洗脳教育の影響で感情が希薄。

6人兄弟とセルは好き。

アレックスは多分好きだった。

ワースはよく分からないけれど、弟は守るものだと兄弟の皆様は言っていた。

実は子どもの頃、誘拐犯に連れ去られそうになったワースを庇って捕まったのだが実験の影響か全くおぼえていない。

イノゼロ戦ではドミナとワースたちを送り出してから公開拷問処刑されて死ぬ。

好きな食べ物はスピリタスだが飲んでると兄弟とセルに取り上げられる。イノゼロ戦後はワースと神覚者たちも取り上げるようになった。

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