甘呪耽溺‐前編‐

甘呪耽溺‐前編‐


ベッドの上の真人に語りかける。


「優しく抱いてやるからエッチしよう」


 ◇


――あからさまに『は?』という顔をした真人は、やっぱりあれからかなり元気になってきたと思う。


あの日あの時、真人に服従と女性化の縛りを結ばせた後、俺は真人を何時間にも渡って犯した。

最大呪力出力の黒閃をブチ込んだ腹の傷もそのままに、抵抗する力も残っていない真人の処女を力尽くで散らして体を嬲り尽くした。

そんなことをされた真人の消耗は当然心身共にひどいもので、事後ピクリとも動かない真人を抱きかかえて仮宿とした廃屋に運んだものの、意識を取り戻してからも俺を視界に入れるなり怯えきって震える。

そんな真人に俺はしばらく何も手を出さず、話しかけるだけにしていた。


「怪我の調子はどうだ? 大丈夫か?」

「悪かったよ、もう痛めつけたりしないから。ゆっくり休んでくれ」

「愛してるよ、真人」


さすがの真人は逞しいもので、俺が何も危害を加えてこないと分かると少しずつ落ち着き、俺の言葉にも返事を返してくれるようになった。


「……白々しいな、全部オマエがやったんだろ」

「気持ち悪いんだよ」

「――なぁ虎杖、オマエは本当に俺の事が好きなのか?」


腹の傷もほとんど癒え、折れていた足も治った。


 ◇


「嫌だ、って言ったら?」


「悪いけどオマエに拒否権はない」


「…馬鹿か? 合意のないセックスは強姦だろ、それは優しくなんて言わねぇんだよ」


真人は自らの女となった体――豊かな胸元に手を置き、垂れ目の瞼を伏せながら、これまでと変わりない口調で冷笑する。


「あの縛りに同意した時点で合意だろ」


「…んなわけあるか」


吐き捨てた真人はしかし、それに反論する術がないことを分かっているようだった。


布を一枚纏っただけのような真人の服に手をかけ、脱がせていく。抵抗はなかった。

真人の胸の膨らみが捲られる布に半ばまで引っ張られてから弾力を持って跳ね、豊満な乳房が露わになる。

不健康に白い肌。一糸纏わぬ姿になれば一層意識させられる、これまで見てきた真人の姿とは違って柔らかで肉感的な女の身体。

ツギハギを除けば滑らかなその素肌が下半身、足先に至るまで全身余すことなく外気に曝されている。


「――俺に優しくなんてできるのかよ、強姦魔」


口の端に歪めた笑みを浮かべ、舐め上げるような目で真人が俺を煽った。

しかしそんな言葉を吐いておきながら、俺が手を伸ばせばびく、と大きく体を震わせるほどに、真人は俺のことを恐れ、自身の言葉で俺を怒らせることを恐れている。


構わず俺は真人の後頭部を捕まえ、唇に口づけた。


「んん゛っ…!」


逃れようと首を動かす真人の唇を追い回すようにしながら、その体をゆっくりとベッドに倒していく。


「んく…っちゅ、ん……」


呪いである真人の唾液の味は苦かった。それでも深くキスをした。舌先で真人の歯列をなぞり、その隙間へ押し入る。口内で逃げ場を求める長い舌に己の舌を強引に絡めた。

ただ本能的な不快感を催させるその味が、俺達を人と呪霊として分かつ証のようでどことなく気に入らなかった。きっと真人も人の有機的な唇の味に不快を感じているのだろう。ひんやりとした血色のない唇、苦く冷たい口内もまるで死体でも舐めているようだった。

真人の長い後ろ髪をくしゃりと撫で、そのくすんだ水色の髪の掛かる白い頬に触れてから、手を下ろしていく。

真人の胸の上を羽根で撫ぜる程度になぞりながら、その下半身へ。

口づけを続けながら、手探りで股の丘に触れた。

びくりと真人の体が跳ね上がる。

――真人は性交を恐れている。

力任せに純潔を散らされた暴行、その再演がされるのだとでも思っているのだろう。

重ねていた唇を名残惜しく離す。混じり合った互いの唾液が俺と真人の間で糸を引き、真人の柔らかな胸の上に落ちた。

青と灰色の、怯えに竦められた瞳が俺を見上げていた。


「言ったよな? 優しくするって」


低く囁きながら手を触れる。


「…嫌だ」


呪霊の肉体に存在するはずのない、雄と交わるための器官。その秘裂を指先でなぞる。そしてその裂け目へと指を一本、そっと滑り込ませた。


「ん…ッ」


顔を背けてか細く喉を鳴らす真人の反応に興奮が高まる。

女の姿に変わっていてもコイツは確かに真人のはずなのに、無垢な生娘のような反応をするから。

長い髪。死人のような肌色と生々しいツギハギの縫合痕を差し引いても、整った顔立ち。そしてバレーボールのように大きな胸と、肉付きのいい太腿。見た目の上で今の真人は正直、すごく魅力的な女に見える。

真人の中は思うより濡れていた。キスで感じたのか、防衛のために濡らしたか、たぶん後者だろう。

一度無理矢理に開通させてやったというのに、未通の狭さを保つ膣口は中への侵入を拒むように俺の指をきつく締めつける。どうやら不粋にも真人は破瓜すら肉体の傷と見做して修復してしまったらしい。

指一本でやっとのそこを無理に奥へ押し進めようとはせず、冷たく濡れた滑らかな入口周りでちゅぷちゅぷと音を立てて抜き挿しする。


「っ……」


真人は小さく吐息を漏らしていた。

……焦れったくなって指を抜き、股ぐらに顔を寄せる。


「は?」


今から何をされるか本気で分からなかったらしいとぼけた声を上げる真人の肉襞にしゃぶりついた。苦い。


「んっ あ゛ッ」


濁った甘い声が上がるのが聞こえた。

陰核を舌先でつつけば体は跳ね、蜜壺を強く吸い上げるようにしてやれば、真人は中を震わせて身悶える。急に柔らかくなったそこに舌を押し込み、内壁を押し上げた。


「…!! それ…、とめ゛ッ…! ンンんうぅッ!!」


真人の制止を無視して内襞の肉を舐め、吸い上げ舌で擦り責め立てるのを繰り返せば、女らしく上擦った声が上がり、中がきゅうきゅうと切なく締め付けられた。

――達したんだ。

……真人をイかせられるとはあまり思っていなかった。

どうせなら気持ち良くしてやるべきだったけど、こうなることは期待してなかったし、そもそもそこまで考えていなかった。

呪霊もイくのか、と少し不思議な感想を抱きながら、真人の膣からちゅぷ、と口を離す。びくん、と弾かれたように跳ねる真人の体、とろとろと透明な愛液が中からこぼれた。

股を開いたまま仰け反った喉を晒し、余韻に襲われていたのか小さく震えていた真人は少ししてかくりと脱力する。


「…いまのなにぃ……?」


今まで聞いたこともないほどあどけない調子で真人が呟いたそれは、もはや俺に向けた言葉ではなかったんだろう。


「真人もちゃんとイけたんだな」


褒めるように真人の水色の髪を撫でる。それどころじゃなかったのか、真人は嫌がる素振りは見せなかった。


「…イッたの?俺…… これが……」


揺蕩う快楽に揺られているかのようにぼんやりと喋る真人の頬には赤みが乗る。


「ん…?」


目を丸くする真人の頬に手を触れてみると、冷たい肌の奥がほんのりと温かい。吐く息も少し熱を持っている。

――なんだかとても、可愛いと思った。


「ぁ……やめて…」


俺が再び手を真人の股へ下ろそうとすれば拒否の言葉は出た。けれどその声は弱く、色違いの双眸は俺の手を期待の籠もった視線で追っていた気がする。

再び真人の秘所へ、指を一本挿入する。


「んん…ッ!」


上擦った声が上がる。よく濡れた裂け目はするりと俺の指を呑み込んだ。

膣肉はとても柔らかく、指の関節が一つ、二つとくぐり抜け、初めは狭くてとても入ると思えなかった奥まで楽々と潜り込んでいく。


「はぁ…っ あぁ…っ!」


さっきまでとは明らかに反応が違う。

真人は目を伏せて舌を出し、熱い息を吐く。

冷たいはずの真人の奥からじわりとした熱が滲み出てくるのを感じた。

それを引き上げ人肌の熱を練り込むように、余裕のできた中を回し拡げるように指を動かし、内壁を指の腹で押し上げた。


「んんゥっ♡ イぃい♡」


中の肉をひくつかせ、腰を浮かせてよがる真人にもう少し強く責めてもいいと判断して、責め方を変えた。中を耕すようにぐちっぐちっと抜き挿しして何度も中を押す。


「あ゛ッ♡ んあ゛ぁッ♡ あはァ"ッ♡」


みるみるうちにぬめった液体を分泌してヨガる真人の中にもう一本指を追加してやる。


「ん゛、ん゛ッ♡ ん゛ん゛ゥんッ♡♡」


動かしづらくなるような抵抗はない。更に真人の中を拡げながらぐちょぐちょと肉壺を掻き回す。それと同時に真人の気持ちいいところを探して、刺激を加えては真人の方を観察して反応を見る。

――視線が合った。


「やめ゛ろッ 見ん゛なっ」


察しのいい真人はたぶん、俺の意図に気づいた。

顔を隠そうとする真人の手を空いた片手分だけ掴んで止める。

掴んだ手首のツギハギ、弛んだ継ぎ目の皮膚の感触。壊してしまわないよう加減した力でも完全に抑え込めてしまうほど、今の真人の腕力は弱い。

真人の膣内、腹側を二本の指の腹で押し上げる。


「あ゛ッ♡ や゛め…ぅン゛♡ くぁあ゛ッ♡」


片手で隠しきれなかった口元が快楽に歪んでいた。

ぐっと更に力を掛ければ、粒のような肉壁が押し潰されて指に吸い付いてくる。


「真人はココがイイんだな」


「あぁ゛あッ♡ ちがうちがうちがうぅッ!♡ ちがッ――ン"あ゛ぁッ!?♡」


見つけた真人のその好いスポットを、引っ掻くように擦り上げ、ぐっぐと繰り返し押し上げる。

そうすればぶんぶんと首を振って子供のように否定していた真人のその抵抗はすぐに崩れて何の意味もなくなった。

腰を跳ね上げがくがくと震える真人は顔を隠すために添えていた手で自分の顔を掻き毟り、ツギハギの縫い目に爪を立てる。


「あ、ひィ"ッ♡んい゛ィッ♡ ぃやだ、だめぇ♡ ん゛っァ"ふっ…、ま゛たな゛んかッくるぅ゛♡♡」


愛撫に合わせてひくつく真人の中に、呼吸を合わせて決め手の一押しをくれてやる。


「ん゛ン"ん゛んんッゥ"んん゛♡♡!!」


足先をぴんと突っ張りぱしゃぱしゃと潮を吐き出し、真人は二度目の絶頂を迎えた。


「あ゛あ゛ぁッ…… う゛ぁ゛…… …あぁ、クソっ…なんで俺……ッえ゛♡!?」


真人が余韻の波を落ち着ける隙も与えず、三本目の指を膣内に挿入する。


「ぃやだ、もっ…いま…、イッたばっかだからっ、やめてっ」


息を切らし、呼吸で胸を揺らしながら必死に拒否を伝える真人に、ぐりぐりと三本指を奥まで潜らせる。


「ひィ"ッぎ♡ ん、やッ… …ぃたどりぃっ…!」


ぴくぴくと情けなく腰を震わせながら真人は、切ない声で助けを求めるように俺の名前を呼んだ。

それは可愛かった。可愛かったものだから、ずっとボトムの下で窮屈でいた“ソレ”はもう我慢の限界だった。

ぐぼりと真人の中から三本の指を引き抜く。


「ん゛ひィい゛い゛ッ♡」


それに引っ張られて腰を突き上げびくびくと震え、ぴゅっぴゅと潮を吹く真人の事は一旦置いておき、カチャカチャとベルトを解く。怒張したモノを布の縛めという檻から解き放った。


「…え? あっ… ひいっ…! あぁ、ぅあ……!」


それを遅れて認識した真人の瞳が恐怖に引き縮む。


「指三本入ったら挿入していいって言うしな」


先走りがだくだくと溢れ、熱を持って脈動するような剛直を真人の方へ向ける。


「そ、そのキモいモン向けんなぁっ! んなデケェモン俺の中には入んねぇよっ!!」


途端に真人は上擦った声を震わせて拒否を叫んだ。

元々呪霊に付いていない人間の性器は、たぶん真人にとって嫌悪の対象だ。真人を強姦した俺が作ってしまったトラウマもある。

しかし、真人がベッドの上から逃げ出そうとまでする素振りはない。

葛藤しているのだろう。恐怖と嫌悪はある。しかし今真人の中には高まった快楽への期待もあるはずだ。

揺れ動いている真人の心をこちらへ引き寄せてやらないと。


「大丈夫だ、優しくするってさっきから言ってる。もう無理矢理挿れたりしねぇよ。それに……」


そっと真人の腹部に触れる。逞しかった筋肉はもう薄っすらとしか残っていない滑らかな腹、それをなぞるように撫でる手を下へと下ろしていく。へその上を通り過ぎ、下腹部。今、掌を置いている皮膚の奥にある器官を想像する。


「――今の真人のここなら、ちゃんと気持ち良く受け入れられると思う」


優しさばかりではなく肉欲に訴えた方が真人には効くはずだ。


「…はぁ……はぁ……」


拒絶の色は薄れ、こちらを見つめる真人の瞳には濡れた熱が籠もっている。

浅い呼吸を繰り返す真人の体は冷たい呪いの身でありながら熱く火照り、迎えた二度の絶頂により120%どころでは済まされない性感を引き出すに至っているはずだ。

雄を引き寄せる淫靡な魅力を全身から醸しながら小さく震える姿はまるで、肉食獣に捕食されるのを待つ皿の上の仔ウサギのようだった。


「痛かったら止めるから、ちゃんと言えよ」


そんな言葉が真人に対して必要になるなんて俺も思ってもみなかった。けれど、その言葉に目を逸らした真人はきっと痛みを恐れるようになってしまったのだ。

真人の上に覆い被さる。見開いた目は再びこちらをしっかりと捉えた。それはまるで敵の一挙手一投足を見逃さぬようにする目にも近いのに、全く違う色も含んでいて。

俺の下にいる真人を眺める。赤くなった肌、白い乳房の奥から真人の心臓の音が聞こえてきそうだった。


「挿れるぞ」


少しずつ身を寄せる。

そうして真人が拒否の声を上げないのを確認してから、剛直の先端を充血した入り口に触れさせる。


「んッ」


瞑った瞼を震わせる真人の頭を抱いて唇にキスを落とす。

それは殊更にこれが恋人同士でする行為に等しいと強調するかのように。


「っあ」


驚きに開かれた瞼、濡れた真人の瞳がぐり、と振れてこちらを捉えた。

開いた口内に舌を入れる。……それを真人は、目を伏せて受け入れた。

まるで持て余す動揺を紛らわすように、ではあった。けれど真人は自身の舌を、自ら俺の舌に押し当ててくれた。

最初にキスをした時よりも、温かい。もはや唾液の苦味は意識に上らない。

ねっとりと絡まる唾液でちゅ、くちゅと音を立てながらただ互いの舌を舐め合った。

宥めるように頭を撫で、後ろ髪を撫で下ろす。そうしながらにゆっくり、ゆっくりと真人の中へ自身を侵入させようとする。

しかし、拡げたとはいえ純潔同然の真人の膣口には不釣り合いの怒張はその頭すらもなかなか入ってはいかない。

切っ先がゆっくりと真人の秘裂を押し開いていき、内側の瑞々しい肉の赤が覗く。


「く、うぅ…!」


肉の強い抵抗に真人は震え、口付けは離された。ぱたりと枕の上で顔は横を向く。真人の手がぐしゃりとシーツを掴み上げ、白いシーツに深い皺が刻まれた。

ちゅう、と雄と雌の粘膜同士が吸い付く。目一杯に広がった真人の膣が、ぷつぷつと抵抗を引き裂かれながらようやく頭の部分を咥え込む。


「はぁ…はぁ…はぁ…」


俯いてぶるぶると震える真人、その膣もまたそれだけでもう精一杯という風にびくりびくりと震えていた。

今真人が感じているのは、興奮、痛み、恐怖――それぞれが如何程か。


「…大丈夫か?」


問えば真人は一瞬縋るような目をこちらに向けて口を開こうとしてから、ふいと目を逸らした。俺に弱みを見せることを嫌ったか。

――恐らく真人の中の狭さは快楽に引っ張られる。

怖がっていれば入るものも入らない。真人はその術式の特質上それを顕著にしたようなものだろう。

真人が気持ち良くなって受け入れようとすればもっと真人の中は開く。なら。

今の姿の真人の持つ、二つの豊かな乳房を包み込むように掌で優しく触れる。勿論、その果実は大きすぎて俺の手の中には収まりきらない。


「んん…っ」


真人は今まで自分に存在しなかった膨らみへの刺激をむず痒がるような反応だ。

手に触れる滑らかな肌触り、魅惑的な柔らかさ、その感触を楽しみたいところだが、今はそれより真人を気持ち良くしてやるためだ。

痛みを与えないよう撫でるような力加減で揉みながら、指を桃色の乳輪へ近づける。

作り物の人形のように冷たい体に、小ぶりで可憐な花のような桜色が乗っている有様は、改めてまじまじと見てやはり興奮する。

優しくその周回をなぞり、僅かに緊張する丸い膨らみに触れた。


「くぅっ…ん」


敏感な反応をする真人、その片方には少しずつ加減を強くしながら指での刺激を続け、もう片方にそっと舌を這わせた。


「んッ」


唾液を塗りつけ、舐め上げ、舌で転がす。唇で挟んで吸い上げるようにして刺激する。


「やッめ…」


柔らかかった乳頭が舌の上で硬くなっていく。ぴくぴくと肩を震わせる真人の中からじわりと蜜が溢れてくるのが分かる。

一度口を離し、反対側の乳頭も舐めて慣らしてやる。そして名残惜しそうにする敏感に濡れた側は、少し強めに摘み上げてやった。


「んん゛んッ!♡」


体に電流でも駆け抜けたみたいに真人は体を跳ねさせる。

……慣らしはこれぐらいでいいだろうか。

ひくつく中はまた少しだけ余裕ができた気がする。



「……挿れたいだけなんだろ」


真人の呟いた言葉が耳朶を打った。

頬に熱を乗せながら、真人は軽薄な笑みを含んだ目で俺を見上げていた。……コイツはきっと俺が胸を愛撫した理由にも気づいている。


「……どーせオマエは、…ただの性処理道具とか、都合のいい女の姿のラブドールとか、その程度の認識で俺を見てるんだろ?」


薄笑いを浮かべた嘲笑。いつか聞いたような口ぶりで厭らしい言葉を並べて煽り立てるのに、今はその表情にさしたる悪意も感じられない。それはこの段に至ってはもういっそわざとらしい。

そんなに俺の魂に爪を立てて苛立たせたいのか、それとも確かめたいのか。

――“その言葉”を引き出すためにこんな煽り方しかできないのか。

そのいずれとしても堪らなく愛おしい心地で真人の頬に触れ、ほつれかけて血の滲んだ縫い目をなぞる。


「――好きだよ、真人」


真人の目が大きく見開かれる。それは驚きか、喜びか。答えなんてオマエは分かりきっていたはずなのに、不安だったとでも言うのか。

陰りなくきらきらと輝いた瞳に、すっと半月を描く瞼が被さり、口の端を引いた真人は満足げに笑った。

――今ならできる。

今俺はやっと、真人の体内という領域へ立ち入ることができる。


「あ…、あッ」


狭い中は強い抵抗を感じさせながらも、ぐぶりぐぶりと俺を受け入れていく。きつい締め付けに今にも暴発しそうだったが、真人を最後まで抱いてやるまでそんなわけにはいかない。それが今の俺の役割だ。

真人は瞼を伏せ、長い髪を振り、柔らかな乳房を弾ませて快楽に打ち震えている。その手が頼りなげに震えていることに気づいて、手を取る。


「……ん…?」


惚けた丸い瞳が握られた手と俺の顔とを交互に見つめた。真人の指と指の間に指を割り込ませる。眉を下げて薄く笑い、意図を察した真人は指を絡めて握り返してくれた。


「ん、ん…ッ!」


性器挿入の強い刺激を逃がすようにぱたりぱたりと左右に首を振る真人はその度に細い指で俺の手を握る。その感触が愛おしい。


「――ひィうッんッ♡」


先に見つけた真人の中のイイ所をカリが掠めた。快楽から逃れるように腰を跳ね上げ、真人は俺の手をぎゅうぎゅうと握り締める。

その中をゆっくりと浅く抜き挿しして、性感帯を責め立ててやる。カリで引っ掛けるようにして膣内、腹側の一点を何度も擦った。


「あぁ…はぁ…っ♡! やぁっ…♡!」


掠れた細い声で紡がれる上擦った喘ぎ声。


「いたどりぃ…♡ そこ、だめぇ…♡」


甘ったるい声で喘ぎながら絶頂に向けて蠢くような真人の膣内を少しずつ深くストロークし、真人の奥へ奥へと侵入していく。


「う、ィううっ」


ぐちゅりぐちゅりと音を立てるよく濡れた狭い穴の中をねっとりと擦り上げ、ついにゴツリと最奥にぶつかった。


「んイゥう゛う゛ううッ♡♡♡!!!」


それだけで真人は絶頂した。

俺の手を握る真人の手に力が掛かりすぎて爪が俺の手の甲に突き刺さる。咎める気など起きない。ただ愛おしい。

絶頂で腰が跳ね上がることで、俺の腹筋に真人の柔らかな腹が押し当てられている。それはまるで、より俺と体を密着させたがる健気さみたいだった。

搾り上げるように強く締まり、まるで一つの生き物のように脈動する膣肉に俺もついに耐えられなくなる。フィニッシュのためにまだ真人の中に収まり切っていない肉の楔を少しだけ強引に押し込む。それでも全ては入り切らない。


「んひぃッ!?♡」


最奥の膣肉を潰し押し上げられた真人はばちんと弾かれたように仰け反り、ツギハギの線が周回する喉を晒して瞳をぐるりと上向かせる。


「っ……」


そのまま真人の最奥で吐精した。逃さないよう、真人と絡める手に無意識に強く力を掛けながら。細い指がぴくりぴくりと震えて握り返してくれていた。


「…あぁ…あついぃ……」


発されたのは浮かされたうわ言のような呟き。……真人の冷たい腹の中を、俺の精の熱が灼いている。

真人は今、深く長い絶頂の余韻の中にいるのだろう。きゅんきゅんと収縮する膣肉は俺自身を強く締め付け精を吸い上げるようだった。

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