オーター・マドルと事情聴取
イノセント・ゼロが倒された。
裏社会で暗躍していた巨大な闇魔法組織が壊滅して世界平和にかなり近づいたと言えるだろう。
しかしまだ私たちにはやるべき事がある。
捕らえたイノセント・ゼロへの事情聴取だ。
イノセント・ゼロが取り引きしていた他の犯罪組織についてや、彼らが関与していた過去の犯罪についてなど調べなくてはいけないことは山ほどある。
だからイノセント・ゼロの事情聴取は慎重に行わなくてはならない。
そう思っていた。
「……なぜ私がイノセント・ゼロへの事情聴取から外されているのですか?」
そう私は目の前の腐れ縁に尋ねた。
「未成年の彼らが事情聴取から外されるのは分かります。あの男がしていたことを彼らが知るのは早いでしょう」
「ですが私は何も問題ないはずです」
ライオはいつもの笑顔ではなくどこか険しい顔で私に言った。
「では聞くがオーター。イノセント・ゼロがお前の後輩であるアレックスを殺した時の詳細について話した時にお前は暴走しないと誓えるか?」
私は思わず声を荒らげて言った。
「当たり前です。私は仕事に私情を持ち込むつもりはありません」
「そうだろうな、お前はそういう奴だ。でも動揺はするだろう?」
ライオは静かな顔で私を見る。
「お前はイノセント・ゼロのことを憎んでいる」
「……」
「だがその憎しみを抑えて動ける。お前はそういう男前な奴だ。だけどそんな事をずっと続けていたら心に負担がかかる」
ライオは私の肩に手を置いた。
「普段のお前なら事情聴取から外されても素直に納得していただろう。しかしお前はここに来た」
「今のお前は、お前自身が思っているほど冷静ではない」
「……お前の焦る気持ちは分かる」
「でもオレたちを信じて任せてくれ」
「大丈夫だ。奴の悪行は全て洗い出す!」
そう言ってライオは私にいつもの笑顔で笑った。