AMU JOURNAL

はたらく人の声

地球と地域、そして家庭とともに生活をしていく、といった感じでしょうか。

2021.2.16

書いた人 ― 雪野 瞭治
はたらき先 ― 飯古定置

今週の業務はどうでしたか

最近イカが大漁にとれ始めるようになってきました。それに伴って、イカの出荷作業をすることが多くなりました。魚とイカの選別作業がある時には、主にイカの出荷の手伝いをメインで作業しています。

この作業では、イカの選別をしている人たちの動きを見ながら、その人たちにイカを詰めるための箱を用意したり、さらには、その箱に氷を詰める準備をしたりします。先を読んで、ほかの人達の作業が回りやすくなるように準備をする必要があります。ということで、考えることが多くなりました。

箱を運ぶことに気を取られていると、今度は氷箱が全然なかったりして。流れを止めてしまわないようにいろいろ気をつけることも多いです。でも、ここら辺は僕がやることが多くなり、少しずつ任せてもらえているというか、信頼してもらえているような感じがしてすごく嬉しいんですよね。

そういえば、この作業ひとつとっても、最初は蓋の置き方の位置関係を適当にしてしまって怒られたりしていたのですが、だんだん意図や狙いが見えるようになってきて、少しは考えて動けるようになってきたのかなと。

この作業は、本当に身体も頭も目線もずっと動きっぱなしになるので肉体的には大変です。でも最初の頃よりは、滞りなく進められるようなリズムが掴めてきたので、気持ちとしてはむしろ楽しいです。

あと最近、褒めてもらえることが多くなりました。

前は、「しっかり考えて仕事せえ」とお叱りを受けることもあったけれど、同じ方からも、「おまえ、見違えたで!」と言ってもらえたり、今日なんかも「にいちゃん、EXILEみたいな動きしおってなー!バリバリ動くなぁ!」と言ってもらえました。少しずつ自信がつくところにはついてきました。一方で、だんだん今まで分かっていなかったことも分かってくるようになるので、気にしないといけないことの幅も増えてきました。

自分でも多少なりに掴めてきたものもあるのですが、3ヶ月経ったら次の仕事に移る予定となっていますよね。ですので、その話をすると、現場の方や業者の方々からも、「せっかく仕事に慣れてきたのにもったいない。このまま、おったらええやん!」と言われます。

言葉に出して褒めてもらえるのがやっぱり嬉しいですよね。みんな見てくれているんだと感じて、一生懸命にやっていて良かったなと心の底から感じています。褒めてもらえるのは嬉しいのですが、そんなときだからこそ調子に乗らないように頑張っていきたいです。

今週の一番の驚きは何ですか

今週一番驚いたことは、定置網の仕掛けにイルカが入っていたことです。水族館でイルカを見たことがあっても、野生のイルカを目の前で、しかも海上で見るのは初めてでした。少し水面にあがってくるだけでも、水しぶきは上がるしで、もうそれはすごいパワーでした。

イルカ自体にも感動したけれど、仕掛けにイルカが入っていると驚くほどその仕掛けにイカがいないんですよ。そういう意味では、不漁を起こしうるイルカと言えるのかもしれません。そんなイルカですが、職場の方々も見つけたらみんな可愛い可愛いって言っていて、すぐにどうやって逃がそうかという話になっていました。

そこがものすごく自然で、みんなが入ってしまったイルカとどう付き合っていくかをちゃんと考えていてジーンとくるものがありました。環境の中で自然や動物達とあたりまえのように共生していく、そんな地球的な仕事だなと改めて感じました。

そうそう、イルカを逃すためだけに、ものすごい高そうな太いロープを躊躇なく切って逃していたのを見て、グッとくるものがありました。

最近どうですか

生活に慣れるために僕だけ先にこっちに引っ越してきていたのですが、最近、奥さんと娘もこっち来ました。なので、子供がいる状態での生活リズムになったのが最近の一番の変化です。

今はまだ子供を保育園に預けていません。そのため、仕事が終わって家に帰ると、奥さんと娘がいます。子供と一緒にいられるのは幸せなことです!でも、少しでも目を離すとなんでもしでかしますので、もちろん大変なことでもあります。

そんな、幸せと大変さが入り乱れているような状況ですが、こんなにも育児に一緒に参加できるというのは、今の職場での漁師という仕事の今の生活リズムがあるからこそです。

奥さんたちがまだこっちに来ていない時は、仕事終わりに雑談をして回っていたけれど、奥さんも大変なことをしてくれているので、今は仕事が終わると早く家に帰って極力育児や家事をするようにしています。

このような生活が今はできているけれど、例えば9時から18時まで働く仕事を先にしていたらこんな生活はできなかったんだなと思うと、少し怖いというか。ある意味では特別な状況が当たり前になっていて、子育てという観点でも今の職場での仕事の魅力を強く感じます。

地球と地域、そして家庭とともに生活をしていく、といった感じでしょうか。言葉ではありきたりかもしれませんが、そのすべて本当にまるごと感じきれるというのはこれからの時代のあるべき姿の一つだと確信しています。

あとは、仕事が終わって体力的にも気持ち的にも少し余裕が出てきたので、もともと好きだった料理をどんどんするようになりました。鯖の棒寿司やイカの一夜干し、イカの塩辛などを作って、最近はカレイのムニエルを作りました。このカレイが意外だったというか。めちゃくちゃ旨くて、もしかしたらこの島で食べたものでいちばん美味しかったかもしれないというくらいの衝撃でした。

育児に参加したり、個人的に好きだった料理をしたり、なによりも大切にしていた丁寧な生活が過ごせていてとにかく幸せです。

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飯古定置 について

書いた人

雪野 瞭治

兵庫県出身。海士町複業協同組合のAMU WORKER第1号。技術と科学の視点から、興味の赴くままに挑戦してます。

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