乖離SP:緊急特番! デザグラの全て!(ChapterⅣ)
名無しの気ぶり🦊「ふんッ!!」
「ていッ!!」
「「「⁉︎」」」
するとツムリとスイープが割って入り古式ゆかしい方法であるテレビ叩きを行い、するとハッキングは治った。その顔つきは先程よりも深刻さに満ちていた。
当然ニラム・サマス・ドゥラメンテらは少し驚く。本来ならもう少し深い情報がベロバやクラウンにより明かされたのかもしれないこの数分、3人が驚くことは容易く想定できてなおツムリとスイープが割って入ったのにはもちろん理由があった。
「番組の途中ですが、緊急事態です!町中にジャマトが現れました!!」
「急ぎ向かってちょうだい!!」
そう、街にジャマトが現れたのである。これが分かった時点で番組は当然中断せざるを得ず、もちろんベロバはそれを想定したうえでハッキングを行ったしクラウンはこれを黙っていなければならないことに当然後ろめたさがあった。
(これで願いが叶うわけはない…そんなことは俺も分かる)
(でも…目の前の危機に知らんぷりなんて…私にはできないよっ!)
中断されたとはいえジャマトグランプリなるものが始まったこの状況、ヴィジョンドライバーを取り戻し番組を元通りにしないかぎりデザイアグランプリ時代のプレイヤー、即ち人間による願いは一向に叶わないのは先のハッキングを見ていた者なら誰にでも容易く理解できた。
ただ、それでも、その脚を窮地に向け進めないという選択肢を思い浮かびこそしても選ぶ者は誰一人としておらず。なので景和と祢音もそれは同様で。
「「……!」」
((サトノダイヤモンド(シュヴァル)…))
! ────行ってきてください、トレーナーさん。…私も後から追いつきますから!」
「僕は必ず祢音ちゃんを助ける…だから先に向かっててほしい」
もちろんダイヤとシュヴァルもそれは同様だったけれど、ケケラとキューンが現在考えていたこの後の動きに共感し得るものが十分にあったため同じタイミングでサポーター専用オーディエンスルームを後にすることは止むなく取り止めた。自らのサポーターの考えが自分達の読み通りなら、いずれ同じ場所に至ると迷わず思えたから。
「「ダイヤ(シュヴァル)ちゃん…うん、行ってきます!」」
それを受け、なんとなくその真意を察せたからか景和と祢音は立ち上がり部屋を後にした。
(…仮面ライダーとは何か、それゆえに為せることとは何か…)
(まさか、かつて風都と海外で会った二人の男の教えを思い出す日が来るとはな…人生、何が有用になるか分からんもんだ)
同じころ、英寿もはたしてこの状況にどう向き合うかという自問自答を行い、されどすぐにその結論を導き出せていた。
特段、強く悩むほどではなかった。
「…!」
「トレーナーさん…」
(この状況…思いつく行動はあんまり無いよね)
浮世英寿という人間の根っこの部分はずっと善人のそれであるのだから。
ゆえにその決意もすぐ出せたし、キタサンもそれをすぐ理解できた。
「────どこへ行くんだい?」
「…散歩だ」
だから躊躇わず歩き出そうとした。
けれどジーンはその真意を分かっていてなお敢えて止めた。
「そうは見えない顔だけど?」
推しの口から聞きたかった、それだけである。
「ジーンさん、トレーナーさんがそう言うからには散歩ですよ。行かせてあげましょう!」
「…そうですね、キタさんの仰る通り行かせてあげるべきかと!」
けれど人命を考慮するなら、それを口にする時間は正直惜しかった。ジーンはそういうことまでは思い浮かばなかったが、キタサンとデジタルは違った。伊達に現代人をやっていなかった。
「ふーん…分かった、行ってきなよ英寿」
「あたし達も後から追いつきますからどうかご無事で、トレーナーさんっ!」
とはいえ間接的にであれば察せられたのかすぐにジーンも行くように促し、それを見たキタサンは自らも追いつくと、奇しくも幼馴染や同期が同時刻に別の場所でそれぞれのトレーナーに対し口にしたのと同じそれを英寿に務めて明るく伝えた。その善性と強さを信じながら。
「お前ら…ああ、約束は違えないよ♪」
英寿もそれが嬉しく、だからこそまた会おうと誓えた。
(願いを叶える、叶えない。その根底にあるのは生への執着。それが他人か自分のためかが違うだけ)
(そして俺は…非道や暴力を基本看過できるわけがない!)
願うとは元来、自己か他者のためにしか発露しない。出鱈目に見えても、闇雲に見えてもそれは変わらない。
そしてこの場合浮世英寿という人間はどちらのためであっても、人間やウマ娘に為される非道、暴力、悪逆といったそれを無視することはできない。その後見なかったふりをするとしても一度は必ず目を向ける。
だからこそ、今回もまたするべきこと、今すぐしたいことに迷いはなかった。
「ミッチー、ジャマトになりかけているあんたにもエントリー権はある。期待してるわ」
ベロバは道長にそう告げた。今の道長にはジャマトレイズバックルを通してジャマトの力が一部流れ込んでいる。なので参戦資格があるというわけだった。
「私はナビゲーターだから言うまでもないんでしょう?」
「分かってんじゃないのよ! ええ、せいぜい大智やリッキー共々あたしの敵を排除しなさい♪」
もちろんナビゲーターを無理矢理にでも務めさせられているクラウンは参戦しないことは許されない。
今回守られるべきはベロバに与する者の命、転じて屠るべきはベロバに仇為す者、即ちデザイアグランプリ側の連中。
敵である者達のことまでいちいち気にしてやる必要がないのはデザイアグランプリ時のツムリだって同じ。
けれどかつて仲良くした者達が多数向こうに属している現状はクラウンにとって一応割り切れはしても辛さはやはりあった。
「品质恶劣(捻くれてる)…悪趣味よ、ほんと!」
「あははっ、あたしにとっちゃ褒め言葉よ、それは!」
だからこんな文句だって流石に出るし、けれどそれはベロバのやる気を煽るだけ。悪女とカテゴライズできるそれなのだから、ベロバは。
(ジャマトグランプリのナビゲーターなんて、どうあっても人類の敵として表向き振る舞う以外に道は無いじゃない…)
そんなことは分かっていても言ってやらずにはいられなかった。言ったところで自分の気持ちが晴れないことだって分かっていた。
何よりクラウン自身質としてベロバに預かられている愛しい人の命を守るため、そして同人物の人道に悖る行いを極力防ぐためという確かな譲れない理由を以てベロバに協力しているとはいえ、人道的に許されない行為に身を浸しつつある自覚もあり、その申し訳なさに沿う行いが許されない現状はやはり辛かった。
「全くだ、物好きな女だなお前」
「私があんたを気に入ったのはね…仮面ライダーに敵意を剥き出す不屈の精神よ♪」
道長もベロバの変人さ、悪趣味さはウマが合うわけが無いということは薄々理解していた。
そんな彼を分かったうえでなおベロバが推し彼のサポーターに就いたのは、その発言通り仮面ライダーと認めた者に対する容赦の無さである。
変身システムの開発元は同じだがベルトや小物が異なるゲイザー/ニラム、開発者も含めてそもそもまるで別系統な王蛇/浅倉にも極めて攻撃的に対処した。まあこの二人には返り討ちにされてしまったが。彼がライダーとして敵意を一度も向けなかったライダーはバイス/バイスぐらいなものである。
そもそもが幼少期から高校時代まで父から育児放棄されたこともあって中高時代はとにかく不良として透共々名を馳せていた程度には古くから尖った性格をしていた。
だからかいわゆる割り切りもその時分でできるようになっていたし、結果的にクラウンと似通っていた。
ちなみにそんな道長を一人で長く育ててくれた母への恩義もあって勉強はきちんと進級できるだけの成績を毎度再試無しで納めていた。
『透、大丈夫か⁉︎ しっかりしろ!』
『こいつはもらっといてやるよ♪』
その後母の死と父親がそれを見舞わなかったことにより絶縁したけれど、既に触れられているようにライダーへの敵意を向け出したのはやはり透の死である。
もちろんクラウンと出会ったのもチームカペラにトレーナーとして所属したのもその後。
「クラウンに関しちゃいろいろあるけど一番は…そんなミッチーと互いに想いあってるからよ!」
「そんなところでしょうね、前に私が言ったのと然程変わらないもの」
クラウンを道長のサブサポーターとして採用したのも既に触れられているように彼女が強く打診してきたから。
また道長と彼女が互いに向け合っている異性愛の感情、その強さが気に食わず、けれどだからこそ駒として使い潰すにはちょうどいいと思えたから。
「ジャマトに なりかけてでも生きるあんたを見て決めたの。共に世界を変えようってね」
「その命をクラウン共々枯らして枯らして人間が皆不幸になる、ゾクゾクするような世界をあたしに見せて♪」
二人揃ってせいぜいその短い命を使いきって使いきって果ててほしい。その果てに自分の願いが叶おうが叶うまいが、道長の願いが叶おうが叶うまいが、クラウンの道長への今現在の想いが果たされようが果たされまいがどうでもいい。
極論、デザイアグランプリをめちゃめちゃにできてその先で自分が五体満足で生きて笑えていればそれで問題ないのだから。
「────お前の趣味なんて興味無い。俺の理想の世界が叶えられれば、それでいい」
「改めてだけど私はあくまでミッチーのサブサポーター。何でも貴方の思い通りになると思わないことね、ベロバ!」
それをなんとなくも分かっていない道長、なんとなくなレベルよりは理解しているクラウンは共にベロバの悪趣味に付き合ってやるつもりも思い通りになってやるつもりもないという意思を確固たるものとして示した。
(そうよ。ミッチーが、この人が折れないなら私だって今の私の想いを遂げるために尽力するだけ)
(──────ミッチーを守り、なるべく罪をかさねさせない、人命を奪わせないって想いを!!)
特にクラウンは道長が自らの願いを諦めないというなら、彼に向けた自分の想いも諦めてやるつもりはないといった心持ち。
この先も物理的に強く傷つき続ける道長と、どこか相反するようなその想いを実現するには中等部時代までと同じかそれ以上に折れない精神が必要だというのは分かりきっていたから。
「「くっ…!」」
「せいッ!」
「「英寿!」」
「なんでお前らがここに居るんだ? これはデザグラじゃない。戦っても見返りは無いぞ」
街で暴れるジャマト達に景和と祢音は生身で応戦していたが少し危なくなっていた。
が、そこに英寿が現れ途端に切り抜け、少し話す間ができた。
だから聞いた、なぜここに来たのかと。戦うことで遠からずデザ神となり願いが叶うわけではない。そこを始められるようにしなければいけないぶん、明らかに願いまでの距離は遠のいてしまったと誰の目にも言えたし、なんならこの二人のどちらかは叶わないと思ってしまっていてもおかしくないと思えていたから。
「そう言う英寿こそ、なんで来たの?」
「素直じゃないね♪」
けれどそれは無用な心配。英寿がオーディエンスルームでジャマトグランプリへの向き合い方を固めたまさにその頃に景和と祢音も自分のサポーターのオーディエンスルームで同じことを固めていたのだから。
(…杞憂も杞憂だったか。ならいいさ♪)
「まぁ…キツネだからな♪」
ならば良しと、英寿はすぐさまデザイアドライバーを身につける。あとは無用な犠牲を無くすため戦うのみだ
『『『SET』』』
「「「変身!」」」
そして揃ってレイズバックルをセットし掛け声を上げる。今回は皆上半身用バックルのみの装着となっていた。
『『『MAGNUM(NINJYA)(BEAT)』』』
『『『READY FIGHT』』』
マグナム・ニンジャ・ビートの音声がタイミングよく鳴り響く。今の3人の覚悟が同じ方向を向いていることを物語っているかのようだ。
「おっ、ブーストバックルか。チュッ♪」
『SET』
『DUAL ON』
『GET READY FOR BOOST & MAGNUM』
『READY FIGHT』
『REVOLVE ON』
「「「ジャジャッ⁉︎」」」
中身はブーストバックル。ギーツ/英寿はキスしてさっそく使用。リボルブオンまで一気に行った。そしてこんな時でもサプライズムーヴを忘れないというか普段の癖が抜けていない。けれどそれは平静を保って戦えているという証左でもあり。
それをまた示すようにギーツブーストマグナムフォームとして辺りのジャマト達を一体また一体と撃破していく
ジャマトライダー相手も、このテンションでブーストがあれば余裕と言える立ち居振る舞いだ。
「感動するよ、ギーツ。そういうところが、たまらない!」
「流石キタさんのトレーナーなだけはありますぅ!」
「トレーナーさん…あたしも、あたしの戦いを頑張ります!」
戦いを見守るジーンとデジタルとキタサン、改めて英寿の戦いに惚れ惚れする二人、そしてその戦いに勇気をもらえた担当ウマ娘がいた。
そして遅れてと言ったがそれほど英寿達が部屋を出てから間は空いておらず、ならばなぜこうして戦いを眺めているのか。
「あんたも物好きね…何しに来たの?」
「你好。久しぶり…ってほどでもないわね、キタサン」
「やっぱり戦わなきゃ…ダメだよね!」
それはこの状況を読めていたから。
ベロバが道長や大智は自陣営に残したままクラウンとリッキーを引き連れ現れるという事態を。悪趣味なベロバのことだから道長がいないで片がつくならそれはそれで好都合というような理由で英寿達を潰しにくるのではと踏んでいたのである。
「クラちゃん、リッキーさん…今度こそ…!」
「お二方も連れてですか…貴方が今回考えたこと、皮肉にもうちのトレーナーさんと似てたみたいですね!」
「ただ俺はベロバと違ってデザグラが大好きだからね。デザグラ再開のためには、似合わない努力もするよ」
結果的にその予想は大当たり、今こうしてベロバ達の面を拝めている。
そしてキタサンは前回の戦闘時と変わらず、なんなら今回はリッキーも場にいるからか余計にかつて仲良くした者達を止めるというような感情に駆られている。デジタルはベロバの読みの裏を掻いてやったといい気味だし、内心ほくそ笑んでいる
肝心のジーン本人はというとライズカートリッジを片手に持ち、いつでも変身してやれるぞという意思を見せている
「ふん。その努力…無駄になりそうねぇ♪」
「それはどうかな?」
ベロバも読みは外れたがジーンにデジタル、キタサンがいるならこの3人だけでも潰してやろうと内心考えている。場の状況が好戦的にさせているのはどちらも同じである。
────悪いけど今の私はジャマグラのナビゲーター、貴方達の敵よ。それを忘れないで」
「あたしにとっては同期で一番縁があって仲良しな子だよ、クラちゃん!」
クラウンは自らが今置かれたポジションも踏まえ前回以上に戦うことは避けられない、手加減無用といった雰囲気を出していて。
けれどだからって同期で一番濃い繋がりがある子を放っておけるわけもないとキタサンは変わらず考えている。前回の戦いの後よりも少し強まっていた。
「これも相生…巡り巡ってきっといつかの私のためになるはずだよ…!」
「リッキーさんの割り切れない想い…お察しするからこそ、このアグネスデジタル、貴方を止めてみせます!」
こちらも前回同様やりきれなさを残しているリッキーに対し、その憂いを受け止めてみせると言わんばかりの強い眼差しと言の葉でデジタルが相対する。生半可な想いで臨んでいないのはもちろん彼女も同じ。
──────愉快な余興か? なら俺も交ぜてくれよ」
「私だってクラちゃんを大切に思う気持ちは同じだよ、キタちゃん!」
するとそこにダイヤ、そしてどこか浮世離れした雰囲気のスーツの壮年の男性が現れる。
二人して一緒に現れたうえに互いに同様もしていないあたり顔見知りな可能性があるようで。
「誰?」
「ダイヤ…。…それにそっちは? なんだか雰囲気は見覚えあるのだけど…」
けれど当然ベロバやクラウン、この場においてダイヤ以外の誰しもが彼を知らない。知るはずもないとなると少数だが。
「俺だ、人間のデザインも悪くねぇだろ?」
「クラちゃんも動物の姿は去年6月にトレセンの校舎で見覚えあると思うよ」
この発言の通り、実はこの男の正体はある既存の存在、さらに言うのであればデザイアグランプリ関係者だ。
「だから…誰?」
「私が貴方共々去年6月にトレセン校舎で見覚えのある…というか動物の姿があるって…不会吧(まさか)⁉︎」
それでもベロバは気づかないがクラウンは違ったようで。ダイヤがこの緊迫したはずの状況下で時間にして1分も行かないほどの制限の中で可能な限り説明したからか状況分析や周囲の観察に優れ聡い子であるクラウンにはすぐ察しが付いた。
「察しがいいな、サトノクラウン。────そう、俺だ!」
それを快く思ったのか男は正体を明かそうとする。そのある動物を思い出させる姿勢からも分かるように男の正体は──────
「──────その声はケケラだね?」
「僕は初めて見ますけど、貴方がダイヤさんを桜井トレーナーのサブサポーターに指名したケケラさん…」
するとそれを遮るかのように響いたのはキューンとシュヴァルの声。
そう、発言から分かるように彼の正体はケケラ。外に出るにあたって新たにアバターを製作したのである。
ちなみにシュヴァルはダイヤが景和のサブサポーターに据えたのがケケラだとこの場に来るまでにキューンから教えてもらっていた。
「何だよ…お前も来たのかよ、キューン」
「シュヴァルさん…皆、トレーナーさんのために為したいと思うことは同じですね♪」
自分で正体を明かせずおまけにキューンとシュヴァルまで来たなら自分の見せ場が減るだろうとケケラは少しがっくりする。
一方でダイヤは意志を同じくする者がこの場に幼馴染と友達とファンの三人いることに喜ばしさと頼もしさを感じていた。
「シュヴァルちゃんもなんだ…頼もしいや!」
「祢音さんのサポーターに彼女のサブサポーターでシュヴァル…構わないわ、何人を敵に回そうと」
「キタさんのご学友が勢揃いですねえ!」
キタサンとデジタルもそれは同様で気分が湧き立つ。
だがクラウンは違う、余計に後味の悪さが募る。けれどだからとて手加減はしてやらない、してやるくらいならこんな悪辣なことに身を浸していっていない。
「幸せになってほしい人がいるからね」
「祢音ちゃんが願いを叶えられるその日まで…彼女は僕が守る!」
推しに幸せになってほしい。
キューンのその気持ちに決して嘘はなく、それはシュヴァルも分かるし同じだと思っている。
それでも誰より彼女を側で支えたいという気持ちが普段は途切れがちなシュヴァルの発言に熱を籠らせ勢いを付けた。
「皆考えることは一緒か。そりゃあ推しのライダーにデザ神になってほしいもんな」
「はい。誰しもトレーナーさんのために考えること、この状況なら同じなんです!」
ジーンもそれに他人事ながら感服し、そしてそれは何もおかしなことではないとキタサンは告げる。デザイアグランプリで推しプレイヤーを持つ者、それ即ちそのプレイヤーにデザ神になってほしいと願っている者に他ならないのだから。
『『『『『『『ZIIN(MATOI)(BRAVER)(KEKERA)(RADIA)(KYUUN)(NERE)SET』』』』』』』』
そして七人は一斉にライズカートリッジとレイズライザー本体を組み合わせ起動
ジーンのレイズライザーが青、キタサンが赤、ブレバが虹、ケケラが緑、ダイヤが黄緑、キューンが黄色、シュヴァルが水色に一斉に発光する。
「いいわ、まとめてかかってきなさい♪」
「ミッチーのためにやってみせる…I'm confident!」
『『『BEROBA(LIBER)(LUCK) SET』』』
それを見たベロバ・クラウン・リッキーもどこか待ち望んでいたように自身のライズカートリッジを自身のレーザーレイズライザー本体と組み合わせ起動
「「「「変身!」」」」
「「「「「変装!」」」」」
そして変身、あるいは変装を皆一斉に行う。
具体的には今回初変装したダイヤは一度ライザーを真上に掲げた後胸のすぐ前で両手を手首の内側でクロスさせたまま両手を前に出し両手でダイヤの形を一瞬作るように両手を回しながら手前にその手を持ってきて、『景和のポーズ』をとる。そしてキタサンが指を鳴らすタイミングでライザーの側面を前に見せ変身。
どこまでも景和を意識した純朴な彼女らしい変身ポーズだ。
同じく初変装なシュヴァルは横から見て60~70度くらいの斜め上から両手でライザーを強く握ったまま銃口を前やや斜め下に向ける。
至ってシンプルというか奥手な彼女なりに勇気を見せる変身ポーズである。
『LASER ON』
『『『『ZIIN(KEKERA)(KYUUN)(BEROBA) LOADING』』』』
『『『『『『MATOI(RADIA)(NERE)(LIBER)(LUCK)(BRAVER) LOG IN』』』』』』
そして各々に姿を変化させる。とは言ってもダイヤやシュヴァルはキタサンにクラウン、リッキー同様に勝負服を模した未来製スーパーアーマーと各々のカラーリングで固有造形のサングラスが装着された感じである。
サブサポーターとしての名前はそれぞれラディアとネーレ、輝きを意味する英単語と海の妖精を意味する単語からそれぞれ取られた名である。
ケケラはカエル、キューンはキマイラを模したライダーに変化、結果的にサポーターメンバーは純粋に人型なライダージーンのほうが少数派というなんともはるかな未来の人間らしい取り揃えになっていた。
そのままジーン/ジーン、マトイ/キタサン、ケケラ/ケケラ、ラディア/ダイヤ、キューン/キューン、ネーレ/シュヴァル、ブレバ/デジタルは一様にベロバ/ベロバ、リベラ/クラウン、ラック/リッキーに挑む。
ジーンは重力操作で、キタサンはレイズライザーバズーカモードによる砲撃で、ケケラはカエルに準えたような怪力や跳躍力に粘着能力で、その背に跨るダイヤはレイズライザービッグマジックハンドモードによる掴み取りで、キューンはその高速飛行能力で、シュヴァルはレイズライザーロッドモードによる引っ掛け攻撃で、デジタルはそのコピー能力で、これらの攻撃が結果的に上手く噛み合うことでジャマト側の三人と総合的には互角と言える戦闘を繰り広げることが可能となっていた。
そしてその向こう側で英寿達がジャマト軍団と戦っている。
これにより戦場は混沌の様相を呈していた。
「ジャマトグランプリなんて…前代未聞です」
ジャマトグランプリを前代未聞だと言うサマス、長くニラムの補佐を務めてきた彼女にもこの事態は初めてのものだった。
「──────これがこの世界のリアルだと言うのならば、受けて立つしかない。勝つのは我々
デザイアグランプリか、ジャマトグランプリか」
「そんなもの決まっている。最強を創りだすのは我々だ、トレーナー」
自分達が現代地球に一方的に持ち込んだ戦いの時点で現代側からすればリアルも何も無いという前提条件レベルの身も蓋もない事実には蓋をしたまま、ジャマトグランプリに挑む覚悟をニラムもまた決めていた。もちろんドゥラメンテ共々最後に微笑むのは自分達だとほとんど疑っていない。
「…私は信じたい。仮面ライダーと担当ウマ娘の皆さんを」
「浮世トレーナー、キタサン…アンタ達を…信じてるわよっ!」
同じころツムリとスイープはここからしばらく続く違法で新たなる戦いの行く末をデザイアグランプリに関わる凡ゆるライダーとサブサポーター達・サポートサポーター・サポートデバッガーが握っていると信じて疑っていなかった。
どこまでも、ただ切実に。
「──────最後に勝つのは…俺だ!」
「あたしは諦めない…この手が届くまで!」
((絶対にジャマトグランプリを────終わらせてみせる!))
英寿とキタサンは戦いながらそう自分を鼓舞するように、周りに届けるようにそう告げる。
共にここから始まる新たな戦いを必ず終わらせデザイアグランプリを再会させてみせると、キタサン個人に関しては道を違えてしまった友達を正しく連れ戻すと、固く心に誓いながら。