乖離SP:緊急特番! デザグラの全て!(ChapterⅠ)
名無しの気ぶり🦊「デザイアグランプリについて知識を深める当番組」
「これで、あなたも、デザグラマニア。最後まで、お見逃しなきよう」
「ナレーションは私、ドゥラメンテが務めさせていただきます」
先日のベロバという悪質サポーターでスポンサーがヴィジョンドライバーを強奪するというトラブルによりニラムは番組の予定を変更。
自らとサマスが司会を、ドゥラメンテがナレーションを担当する総集編を急遽企画、早々に準備を整え実行している真っ最中であった。
『デザイアグランプリ。それは…歴史上のさまざまな時代を舞台に繰り広げるリアリティライダーショー』
『オーディエンスからの公募によってプレイヤーを選定、怪物、ジャマトから世界を救うため仮面ライダーとなって生き残りゲームを繰り広げる』
『そして見事最後まで勝ち抜いた勝者、デザ神には理想の世界をかなえる権利が与えられる』
ドゥラメンテの解説通り、デザイアグランプリとは様々な時代で繰り広げられるリアリティライダーショー。
ただし、実態のほとんどが明るみに出た今回となっては時空を股にかけるリアリティショーであることも隠さず公開していた。
これを見ている誰しもがよく理解している純然たる事実。
そしてオーディエンスの公募で参加者は選定されている、だから『サポーター』なのである。
「あっ! ほら、今英寿映ったよ!」
「キタさんも映ってますねえ!」
これまでの戦いの映像と共にデザグラの概要の説明がなされる。中にはダパーン/奏斗を始めとして、現段階では懐かしい顔ぶれもあった。
そんななか英寿もキタサンも映り、自らのオーディエンスルームでジーンとデジタルはそれを観て、推しの姿にはしゃいでいた。
「こんな番組をやってる場合とは思えないけどな」
「はい、仮にもとびきりに強いサポーターでスポンサーが創世の女神?様へのアクセス権でしたっけ。その片方を奪っちゃったんですから…」
しかしその推しである英寿とキタサンはどこか予断を許さない顔というか、未だ気持ちは戦場にあるかのような憂いを言葉の端々から漂わせている。ベロバという歪んだ思想に強大な力の持ち主につい一昨日デザイアグランプリの実質的な指揮権を半分奪われたうえに昨日手痛い目に遭わされればそうもなろうというものだった。
「君達の心配はごもっとも。ただジャマーガーデン無き今、彼女の居場所の把握は俺達には困難なんだ…」
「したがって向こうが出てきた時を見計らって動くしかないんです…」
とはいえジャマーガーデンを丸ごと焼土と化して虚数の海にその姿を消したベロバ一行、ゆえにこそ干渉も動向の把握もままならず。
だからこそ今はジーンもデジタルもベロバをとっ捕まえてヴィジョンドライバーを取り戻し自分達の好きなデザイアグランプリを取り戻したいという気持ちを紛らわせる意味合いも兼ねて実は普段以上にはしゃいでいるのだった。
「…歯痒いですね、デジタルさん、ジーンさん」
「堪えてください、キタさん!」
思想が合うわけではなくても現在の心情は分かるものがキタサンにももちろんあり。
それを口にすればデジタルだってやるせない気持ちが増すというものだった。
『デザイアグランプリは様々な時代を舞台に数えきれないほどのシリーズを重ね、多くのデザ神を輩出した』
直後、ケケラのオーディエンス部屋。
流石に無傷というわけにはいかなかったけれど、どうにか五代満足で生き延びデザグラ特番を視聴する景和とダイヤがそこにはいた。
フル出力でブーストニンジャとフィーバービート、ついでにナッジスパロウモンスタージャマトフォーム/大智の共同必殺技でなんとか難を逃れていた。
すぐさま吹き飛ばされてしまったけれど、助かったからにはどうにか話の種にできるというものだった。
「様々な時代って…?」
「トレーナーさんや私が生まれるよりも遙かに前の時代でのデザイアグランプリも幾度も開催されているということでしょうか?
そしてデザグラが様々な時代で行われたと聞けば、そもそもデザイアグランプリにそこまで詳しくない景和はもちろん、彼よりは詳しいけれどそれでもやはり詳しいことはあまり知らぬダイヤはケケラに具体的に尋ねてみた。
「ああ、そりゃもういろいろやったぜ。ローマ時代に戦国時代、お前たちの世界よりももっと未来の時代もな」
「歴史上に名だたる時代だけでなく、私達の時代より未来での開催経験もあるということですか…」
「というか、俺たちの世界だけじゃなかったんだ…」
すると返ってきた答えの通り、デザイアグランプリは実にさまざまな時代、それこそ(帝政)ローマ時代や戦国時代、現在から見た未来でも行われており、その遍く全てというわけではないがケケラも長い間デザイアグランプリを追いかけさまざまな時代に旅していた。
それを端で聞く景和とダイヤは自分達は想像を上回る数の時代でデザイアグランプリが行われているという事実に案の定驚きを隠せていない。
DGPの時代よりは前だが未来でも行われているというのが特に驚きを誘っていた。
『彼らは過酷な戦いを勝ち抜き、ある者は巨万の富を、ある者は一国の王の座を。そしてある者は、掛け替えのない子宝を手に入れた』
「じゃあ、歴史上の人物の中にもデザ神が…?」
ドゥラメンテによるナレーションが続くなか舞台は再び移ろい、こちらはキューンのオーディエンス部屋。景和やダイヤ同様どうにかベロバによる破滅的な一撃から逃れた祢音とシュヴァルはキューンの案内でここにおり、けれどやはりキューンの姿は無く女二人。
とはいえそんなことは当然気にならず、祢音は歴史に名を馳せる偉人や英傑達、はたまた神話や伝承にさえその活躍が昇華された、あるいは神話や伝承にのみその活躍を追えるような英傑達も実はデザ神だったのではというシンプルでちょっとした好奇心が湧いていた。
「兵馬俑が一瞬見えたし、まさか始皇帝とか、かな…?」
(というか子宝…錬金術でいうホムンクルスみたいな理屈なのかな)
それはシュヴァルも同様でちらと流れた兵馬俑の映像を見るに秦国、つまりはかつての中国の皇帝としてよく知られ万里の長城などもその一端である始皇帝もまたデザ神だったのではというような疑問にもならない想像を浮かべていた。
『ああ。そうやって、人々の幸せが紡がれていったんだよ』
「…直接言えばいいのに」
それをどこからか傍受しているキューンはその疑問には答えることはせず、さりとて否定するわけではないままな発言を手紙に記されし文字として返してきた。
シュヴァルからすればまどろっこしさを感じずにはいられなかった。彼女もまた祢音発言もちろん、他者とのコミニュケーションには難ありな存在という自覚には一度目を瞑って。
『それは無理な相談だ』
(やはり引け腰…)
なのでシュヴァル同様推しには奥手なキューンはすっぱりそれを断るも彼女にはそれが弱腰に思えたのだった。