―「神戸 ジェム占いの街」占い師の井戸端会議―


こんにちは、モザイク店の“色彩の魔術師”涼月(りょうか)ですキラキラ

“色彩の魔術師”などと名乗ったからには、今回は少し「色」についてのお話をさせて頂きたいと思います。

皆さんはメーテルリンク作の『青い鳥』というお話はご存じですよね?

ある日、貧しい家の子、チルチルとミチルのところへ、魔法使いのおばさんがやってきて、青い鳥を探してきて欲しいと頼みます。
何でもその青い鳥が見つかれば、おばあさんの病気の娘は「幸せ」になれると言うのです。
そこで、チルチルとミチルは青い鳥を探す旅に出るのですが、行く先々で青い鳥を捕まえても、その都度、色が変わってしまったり、死んでしまいます…。
最後まで二人は青い鳥を捕まえる事が出来ず、長い旅は終わり、夢から目を覚まします。
しかし、家で飼っていた鳥を改めてよく見てみると、その鳥は何と「青」かったのですビックリマーク
チルチルはおばあさんに、その青い鳥をあげると、病気の娘は元気を取り戻します。
わざわざ遠くまで行かなくても、幸せベルは意外と身近にあるのだよ、というお話でした。

さて、あらすじが長くなりましたが、そもそも何故、幸せの鳥は「青」なのでしょうか?

世界20カ国の人を対象に行われた、色に対する感情やイメージの調査によると“幸福”といえば、日本やアジアでは「ピンク」を挙げますが、欧米では「黄色」になるそうです。

それならば、ベルギー生まれの欧米人のメーテルリンクが幸せの象徴として思い描くのは「青」ではなく「黄色」が普通なのではないでしょうか?

黄色の色彩イメージは≪明るい、幸福な、楽しい≫なので、幸せの鳥ならば「黄色」の方がずっと相応しいと思うのですが、
なぜかメーテルリンクは「青」を選びました。

青色の色彩イメージは≪落ち着く、冷静、清潔、純粋、安らか≫です。

青色を見ると心拍数が抑えられて落ち着いた気分になるのですが、ウキウキHAPPYな気分になる訳ではありません…。

憂鬱な気持ちを「ブルーな気分」と言うように、青にはマイナスイメージで≪憂鬱、孤独≫があります。

なのに、幸せを象徴する鳥をわざわざ「青」にしたのは、欧米人である彼の「宗教観」が影響していたのではと思います。

キリスト教では「青」が多用され、マリア様は「青い衣」を着た姿で描かれています。
前述の通り「青」には≪純潔、純粋≫のイメージがあり、キリスト教では≪神聖な色≫で「天国」を表すとか。

また、青い鳥の話の中に出てくる「未来の国」は、まだ生まれていない誕生を待っている子供たちの国で、そこは何もかもが青く染まっています。

そこの子供たちは皆、それぞれ何かひとつ「自分の運命」を持って産まれていかなくてはいけないそうで、それは幸せな運命もあれば、大きな罪や病気を持っいる子もいるとか。

「青い鳥」の話をこうやってあらためて読み直してみると“青い鳥”が象徴している“幸せ”とは、黄色が象徴するような、明るく楽しいウキウキHAPPYではないことが分かりますよね。

『青い鳥』の「青」には、チルチルとミチルの貧しさや、おばあさんの娘の病気という、青のマイナスイメージである≪憂鬱、悲しさ≫と、
貧しく恵まれないチルチルとミチルが、それでも他人のために青い鳥を探すという≪純粋さ、清らかさ≫を象徴するプラスイメージの両面が含まれていたのではないでしょうか?

そしてたとえ恵まれない辛いときにも、他人を羨むより≪冷静≫になって、日頃当たり前と思って見落としている小さな幸せに気が付く事こそが“幸せ”なのではないかと。

さて、物語の最後は、元気になった娘さんが、うっかり青い鳥を逃がしてしまいます。
嘆き悲しむしょぼん娘さんに、チルチルは「幸せの青い鳥なら僕達がまた探してきてあげるよ」と娘さんを励まします。

そうです、幸せが逃げたら、また探して捕まえればいいのです。
幸せの青い鳥が何度逃げても、何度でも探せば良いのです!!

貴方の「青い鳥」も、意外と身近なところにいるのかもしれませんよ音譜


参考:『世界の色彩感覚辞典』他