ガザ決議案の採決、国連安保理が4日連続で延期 文言調整で「まだ深刻な懸念ある」とアメリカ

19日の国連安全保障理事会で発言するアメリカのロバート・ウッド国連代理大使

画像提供, EPA

画像説明, 19日の国連安全保障理事会で発言するアメリカのロバート・ウッド国連代理大使

国連安全保障理事会は21日、イスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘が続くパレスチナ自治区ガザ地区での敵対行為の一時停止を求める決議案の採決を、22日に延期すると決めた。延期は4日連続。アメリカは決議案について、まだ深刻な懸念があるとしている。

採決は当初、18日に行われる予定だったが、決議案の文言をめぐり激しいやり取りが続いている。ガザ地区をめぐる決議案の採決ではこれまで、アメリカが拒否権を行使している。今回はこれを回避するための決議案の文言調整が続いている。

アラブ首長国連邦(UAE)が提出した今回の決議案について、アメリカはガザ地区への人道支援を「実際には遅らせてしまう」可能性があり、「多くの懸念」を抱いているとしている。

世界の平和と安全を確保する責任を担う安全保障理事会はこの1週間、文言調整のため、ガザ地区での敵対行為の一時停止を求める決議案の採決を4度延期している。

決議案の中身は、敵対行為の「停止」ではなく「一時停止」にトーンダウンさせるなど、米政府の立場に合わせてすでに変更されている。

19日には、ガザ地区への援助を監視する国連の仕組みを設けるという提案内容が、主な対立点になったとみられる。UAEはこの内容を、決議を有意義なものにするためには、必ず含まなくてはならないと主張している。

しかしアメリカは、イスラエルが審査プロセスを自ら制御できなくなる可能性を懸念。監視メカニズムがすべての当事者にとってどのように機能するのか、エジプトと協議する時間を確保するため、決議案採決をさらに延期するよう求めた。

現在は、イスラエルがガザ地区に搬入されるすべての援助物資と燃料を監視している。

アメリカ国連代表部のネイト・エヴァンス報道官は21日夜、決議の目的は「ガザ地区への人道支援を促進・拡大する手助けをすることだ。その目的を見失うわけにはいかない」と述べた。

「我々はいかなる決議についても、現地の状況を悪化させるのではなく、確実に助けになるようにしなければならない」と、エヴァンス氏は付け加えた。

米国家安全保障会議(NSC)のジョン・カービー戦略広報調整官は、アメリカが今回の決議案について変わらずに「積極的に取り組んでいる」と述べた。

<関連記事>

ガザ地区をめぐっては、人道目的の即時停戦を求める国連決議案の採決が8日に行われたが、常任理事国のアメリカが拒否権を行使したため、決議案は否決された。イギリスは採決を棄権。その他の13カ国は賛成票を投じた。アメリカはイスラエルと同様に、停戦はハマスにとって有利になると考えており、戦闘の一時停止を支持している。

拒否権発動以降、戦闘の一時停止を求める圧力が高まっている。今週初めには、現在の戦闘が始まった10月7日以降にガザ地区で殺害された人の数が20万人を超えたと、ハマスが運営するガザ地区の保健省は発表した。

国連世界食糧計画(WFP)は21日、戦闘が続けばガザ市民が飢饉(ききん)に直面するおそれがあると警告した。

ガザ地区ではすでに25%以上の世帯が極度の飢餓に直面しており、必要とされる量の援助が届いていないという。

ガザ地区南部ラファでその場しのぎのテントで生活するパレスチナ人の少年(21日)

画像提供, Getty Images

画像説明, 国連はガザ地区で190万人近くが戦闘で家を追われたと推計している。画像はガザ地区南部ラファでその場しのぎのテントで生活するパレスチナ人の少年(21日)

「その深刻さや悪化スピード、複雑さにおいて、前例のないレベルの深刻な食料不安が起きている。ガザ地区は飢饉(ききん)のリスクに直面している」と、WFPのシャザ・モグラビー報道官は述べた。

「我々は、飢饉宣言が出るのを待ってから行動するわけにはいかない。不援助を届け、苦しみに終止符を打ち、飢饉発生の非常に深刻な脅威を回避するには、即時の人道的停戦とすべての国境検問所の開放、そして商業貨物の輸送再開が必要だ」

12月1日朝まで7日間続いた戦闘休止では100人以上の人質が解放された。これと同様の新たな停戦にむけた協議がエジプトで行われていた。しかし、一時的停戦のために一部の人質を解放するという合意には応じないとハマスが21日に表明し、話し合いは滞った。

ハマスは、イスラエルが戦闘終結に合意しない限り人質は解放しないとしている。イスラエルは、ハマスとの恒久的な停戦を繰り返し拒否している。

10月7日の奇襲では、イスラエル側で約1200人が殺害され、240人以上が人質に取られた。イスラエルとハマスの合意によって1日朝まで7日間続いた戦闘休止では、人質110人が解放されたが、ガザ地区ではいまも100人以上が拘束されている。