4割が赤字経営!?今だからこそ病院経営の見直しを始めよう

 少子高齢化が進むなか、病院経営はますます厳しい状況に追い込まれつつあります。また、その状態に危機感を感じて解決策を見出そうとしても、なかなか良い案に恵まれないと悩む病院経営者もいるのではないでしょうか。病院経営を改善するには、まず現状と問題点の洗い出しが必要です。そこで、経営面で病院が直面している現状とその原因、黒字化に成功した事例などについて解説します。

病院が直面する現状

 私たちが健康的な生活を送るために、病院はなくてはならない存在です。少子高齢化を考慮すると、これからも病院の需要は高まることでしょう。一方で、病院経営は深刻な現状に直面しています。

国内でも4割の病院が赤字経営になっている

 独立行政法人福祉医療機構の調査「平成28年度 病院の経営状況について」によると、平成28年では一般病院の41.2%が赤字経営であることが報告されました。同データは平成24年に28.1%、平成25年に35.3%、平成26年に40.7%、平成27年に39.6%と推移しており、全体的に年々増加しています。
(出典)平成 28 年度 病院の経営状況について (独立行政法人福祉医療機構)
このような背景から、国内における病院経営は容易ではなく、解決策を打ち出さない限り厳しい現状は続いていくと予想されます。

病院経営の課題とは

 病院への需要は依然として高いにも関わらず、経営に課題を抱える病院が少なくないという現状には、以下のような原因が考えられます。

海外と比べて病院の数が多い

 SPEEDAがOECD Health statsの調査データを基にまとめた「主要国の100万人あたりの病院数(2012年)」によると、日本の病院数は67と算出されました(総合病院を含む)。フランスが41、ドイツが40、アメリカが18と、他国のデータと比較すると、日本の病院数の多さが目立ちます。「主要国1,000人あたりの病床数」でも、他国が10を下回る中で、日本が13.4と群を抜いています。 また、「主要国の100病床あたり医師病院従事者数(2010年)」によると、ノルウェーが55人、スイスが45人、フランスが26人、ドイツが21人、アメリカが26人と比較して日本は11人となっており、患者に対する医療従事者の数が少ないこともわかりました。
 (出典)SPEEDA、”4割が赤字、病院経営の実態と対策”  

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小中規模の病院における回転率に改善の余地がある

 病院数と病床数の多さに対し、医療従事者の不足がうかがえます。需要と供給のバランスを調整することができれば、回転率の改善が可能となるでしょう。 また、赤字経営から脱却するための解決策がなかなか見つからないことも、病院経営者を悩ませている一因です。そこで、一度病院経営の現状に危機感と臨場感を持ち、客観的な視点からの経営改善を始めていくことが求められます。

黒字化を成功させるには? 成功事例集

 病院経営に厳しさが増していくなか、収益率拡大とサービス向上に成功した病院も少なくありません。ここでは厚生労働省の調査によって集められた、中小規模病院の成功事例を5つ見てみましょう。

成功事例集1:在宅医療、介護を重視した経営改善

 少子高齢化の加速を受け、在宅医療や介護をとり入れた経営を打ち出し、黒字化に成功した病院の例です。広島県尾道市「医療法人社団 杏佑会 笠井病院」、長野県佐久市「特別医療法人 恵仁会 くろさわ病院」の成功事例を紹介します。 笠井病院が立地する尾道市は山間部が多く、高齢者にとって外出が困難という問題点がありました。そこで同院は地域の医師会と連携をとり、主治医が患者を訪問して様子を診るという在宅医療を展開。また、病院とは別に特別養護老人ホームとケアハウスの運営に着手し、活動の場を拡大していきました。
 (出典)医療法人社団 杏佑会 笠井病院(広島県尾道市)│厚生労働省

 くろさわ病院も、介護老人保健施設や介護老人福祉施設に合わせて診療所と在宅サービスを始め、さらにはケア付き住宅を展開しました。同院と連携がとれたうえでの新規事業は同市在住の高齢者を生活面からサポートするのに役立ち、収益率拡大につながったとされています。
 (出典)特別医療法人 恵仁会 くろさわ病院(長野県佐久市)│厚生労働省

成功事例集2:地域連携による経営を安定化

 東京都世田谷区「医療法人社団和乃会 小倉病院」は厳しい赤字状態にあったものの、救急医療を活かして地域社会のネットワークを構築し、経営改善を実現させました。 地域社会では急性症状への医療ニーズが高かったにもかかわらず、病院間での連携が課題となっていました。そこで慢性期症状や在宅医療を扱う病院とのネットワークを強化し、紹介率を上げることに成功。病院間でのITシステムを導入し、診療の効率化にもつなげています。
 (出典)地域連携による経営の安定 医療法人社団和乃会 小倉病院│厚生労働省

成功事例集3:医療者のニーズに注目した多角的事業展開

 熊本県熊本市「医療法人社団大浦会 熊本敬愛病院」は、2院展開中の1院を閉院し、跡地に配食サービスと子育て支援の事業所を設立。大胆ながらも医療者と地域のニーズを理解した判断で、収益率向上を可能にしました。 加えてリハビリテーション施設や温泉、介護施設、ケアハウスなども展開し、利用者からの評価も高めています。利用者の生活に根差した多角的なサービス提供の成功例ともいえます。
 (出典)医療者のニーズからみた多角的事業展開 医療法人社団大浦会 熊本敬愛病院│厚生労働省

成功事例集4:顧客満足度や第三者の意見を活かした経営改善

 客観的な意見をとり入れた成功事例としては、埼玉県川越市「医療法人財団献心会 川越胃腸病院」があります。医療をサービス業として考え、顧客満足度と従業員満足度を高めていきました。 定期的に患者へのアンケート調査を実施し、寄せられた意見を院内環境の改善案に反映。内装や増設などにつながり、患者のニーズにより近く寄り添える経営を実現しました。スタッフの意見交換も活発に行い、常にサービスの質を高めています。
 (出典)患者満足度調査や第三者評価を活用した経営改善  医療法人財団献心会 川越胃腸病院│厚生労働省

成功事例集5:コンサルタントの意見を活かして生まれ変わった病院の事例

 愛知県豊田市「三九病院」は、コンサルタントの意見を活かして「生まれ変わり」に成功。病院の立て直しをはじめ活動範囲の見直し、従業員教育、広報紙の発行など、外面・内面から改善案を実践していきました。これらの変化は患者数増加につながったと報告されています。 その後も海外研修で他国の病院環境を視察するなど、院内全体でサービス向上に努めています。
 (出典)「普通の病院」の経営改善の軌跡 医療法人 三九朗病院│厚生労働省  

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今後、病院経営に求められるポイント

 今回とり上げた成功事例から、今後の病院経営に求められるポイントを見てとることができます。

在宅医療や介護医療に注目

 高齢化社会が叫ばれる現在だからこそ、高齢者への医療提供のニーズが高まっています。その流れをとらえ、通院が難しい高齢者への在宅医療や介護医療、訪問医療が求められていくことでしょう。

地域特性に合わせた体制の構築

 地域の病院間で連携をとり、相互の紹介率を高めることも重要なポイントです。そのためには地域の医師会に積極的に参加し、来院数増加につなげる基盤を整える必要があります。それぞれの病院が抱える問題や地域医療のニーズなどの意見を聞くことでも、サービス向上に役立つといえます。

患者とのコミュニケーション

 患者とのコミュニケーションを増やすことで、満足度につながるケースもあります。意見箱の設置やアンケート調査実施で客観的な声を聞き、ニーズにしっかりと寄り添った改善案を打ち出せるためです。日ごろから話しやすい雰囲気を整えておくことも、サービス向上に非常に役立つでしょう。

まとめ

 病院経営の赤字から脱却するには、患者目線をとり入れた医療と病院同士の協力体制、客観的な評価が鍵となります。ニーズに合わせたサービス向上と地域社会のつながりを意識することが、黒字経営への近道となるでしょう。また、コストの抑制や事務の効率化を目的として、クラウドサービスや業務システムの導入を検討することも有効なのではないでしょうか。

参考:

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