挨拶
・ルゾロ
・時系列はスリラーバーク編ラスト
・ラストに少しだけ擬人化要素
・妄想全開
以上が大丈夫な方はこのままどうぞ
戦いが終わり、静けさが辺りを支配するスリラーバークの墓場
その中にある一際大きな墓の前にルフィはいた
ドクロや音符の装飾が施された立派な墓は、新たな仲間である音楽家の大切な仲間達のために作ったものだ
だが、今のルフィはその墓の前に突き立てられた一本の刀が目的だった
漆黒に金の装飾が施され柄と鞘は美しく、引き抜けばそのまま刀身が表れそうにも見えた
ルフィはそんな刀の前に立つと「ゾロとは、もうお別れしたのか?」と穏やかに声をかける
そしてゆっくりと帽子を脱ぐと、胸の前に当て静かに目を伏せた
ルフィにとってゾロの刀達は、実に心をかき乱す存在だった
常にゾロの傍にあり、戦いの際は手足のように彼に振るわれ敵を切り捨てる
そんな刀達の姿を見る度、ルフィの心はざわめいた
決してゾロからの想いを疑っているわけではない
何より、戦いの中で刀を振るうゾロの姿は一等好きだ
それでも何か言いようのない気持ちにさせられ、気がつくと彼に抱きつき、口を吸い、時にはそのまま事に至ることさえあった
そんな風に心乱される存在ではあるが、同時に大切な存在でもあった
ゾロにとって刀とは、単なる武器ではない
誇りと野望、そして誓いの象徴であり宝
決して手入れを怠ることはなく、他者から無碍に扱われれば怒り、そして役目を終えた時はこうして礼を尽す
そんな刀に対する姿勢を、ルフィは誰よりも見てきた
だからこそ、自分も感謝と別れを伝えたい
そう思ってルフィは墓場を訪れたのだった
どれだけの時間、そうしていただろうか
やがてルフィを被り直すと、まっすぐ刀を見つめた
「雪走、ゾロは大剣豪になるからな。おれも海賊王になるぞ」
穏やかな声でそう言った次の瞬間、ルフィは大きく息を吸う
そして、
「で、ゾロはおれと結婚するんだからな!!」
ビシリと指さしながら宣言した
するとどこからかふわりと風が吹き、ルフィの髪を揺らす
《ええ。よい報せを、お待ちしております》
水のように澄んだ声が、風に乗って聞こえた気がした
その声に応えるようにルフィは刀に頷き、「いままで、ありがとう」と呟く
そしてまたしっかりと帽子を被り直し、墓場を後にした