<社説>オスプレイ運用再開 政府は飛行断念を求めよ


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<社説>オスプレイ運用再開 政府は飛行断念を求めよ
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 結局は米国の言うがままではないか。これが「強固な同盟関係」の実態である。国民の生命・財産は度外視されていると言わざるを得ない。

 鹿児島県・屋久島沖で昨年11月に墜落し、全世界で飛行停止になっていた米軍の垂直離着陸輸送機オスプレイが14日にも飛行を再開する。沖縄防衛局の職員が13日、県と宜野湾市を訪れ、米側の方針を伝えた。しかし、理解を得ることはできなかった。
 玉城デニー知事は「事故原因の具体的な説明はなかった。到底納得できず、これを認めることはできない」と飛行再開を厳しく批判した。松川正則宜野湾市長も「納得はできない。不安払拭にはならない内容だ」と述べ、防衛局の説明に不満を表明した。
 当然である。事故原因は「特定の部品の不具合」によるものと説明するだけで、詳細な原因は明らかにされていない。これで納得してほしいというのは無理な話だ。政府は飛行断念を米側に求めるべきだ。自衛隊のオスプレイも飛ばしてはならない。
 在日米軍と防衛省がオスプレイの運用停止解除を発表したのは今月8日である。事故発生時の「機器故障」を特定したと発表したが、詳細は明らかになっていない。これでは安全性への懸念をぬぐうことはできない。
 そもそも政府は、飛行再開に関する米側の説明に納得しているだろうか。十分な検証がないまま、米軍の説明を丸のみするようでは国民の安全は守れないのである。
 林芳正官房長官は「安全対策の措置を講じて準備が整った上で、運用再開を順次進めていく考えだと承知している」と述べた。政府は米側が示した事故原因と安全対策についての米側の報告を検証するすべと時間があったのか。政府はオスプレイ飛行に不安を抱く自治体や地域住民に答えるべきである。
 しかし、政府の説明は不誠実なものであった。
 オスプレイの運用停止解除についての記者会見で木原稔防衛相は「前例のないレベルで詳細な情報提供を受けており、合理的と評価している」としながらも、「米国内法の制限」という理由を挙げ、不具合が発生した部品の名称や不具合の内容を公表しなかった。「大きな事故なので米国内での訴訟の可能性もあり、つまびらかにできない部分もある」とも述べた。
 これにはあぜんとする。オスプレイの飛行再開は県民、国民の生命の安全に関わる重大事である以上、事故原因と安全対策に関する情報を公開すべきだ。米国内法や米国内での訴訟リスクを持ち出して情報を伏せるのは、主権国家としてあるべき姿ではない。
 同盟関係が対等ならば、政府は事故原因と安全対策を厳しく精査すべきだ。それがかなわない限り国内のオスプレイの飛行再開は許されない。そもそも県民要求は沖縄からのオスプレイ撤退である。