>>55のせいだよー!!
リモコンを操作して音量を上げる。ひび割れた電子音声が元気よく連鎖の呪文を唱え始めた。
「………」
隣のお姉ちゃんは何も言わない、かちかちとコントローラーを操作してパズルを積んでいく。
条件反射でそれっぽく積んでいるだけのかえる積み。ゲームがあまり上手じゃないとはいえこれで勝てるほど私は下手じゃない。
「……ねぇ」
「なぁに?」
「………音、もう少し大きくする?」
ロッカーから聞こえてくる、すすり泣くような声。そこの住人のユズちゃんの声。
すすり泣いていると思いたかった声は、ゲームの音量に合わせて、より大きくなっていた。
「んー……」
何も考えていない様子でお姉ちゃんは画面を見つめている。
目の前のことに集中する振りをしているお姉ちゃんが、じっくりたっぷりと時間をかけている間に、ロッカーから私たちの名前が聞こえた。
「私は我慢って毒だと思うんだよね」
お姉ちゃんが適当に積んでいる間に組み上げたパズルを発火させる。
18連鎖の即死コンボ、コンボ音声が途切れたら特大のお邪魔パズルがお姉ちゃんの元へと送り込まれる。
ユズちゃんはTSCの雛型のゲームで、私たちを変えた。変えてしまった。
それまで仲がいいと呼べるほど出なかった姉妹だった私たちが、一つになって、ばらばらだけど仲睦まじく過ごせるようになった。
だからこそわかる、わかってしまう。私と同じようにお姉ちゃんだって我慢している。
ためにためきったお邪魔パズルがお姉ちゃんの場を埋め尽くす。
あの時はお姉ちゃんが発火点になってくれた。UZqueenに会いに行こうと一歩踏み出してくれた。
今度は私が一歩踏み出す番だと思う。
「お姉ちゃんは、ユズちゃんのこと好き?」
勝利のファンファーレが大音量で鳴り響いているなか、ロッカーに聞こえないようにささやきかける。
「もちろんだよ!」
「どれくらい?」
「……たくさんっ!」
「じゃあさ………」
お姉ちゃんの手を取り、桃色の瞳を見つめる。真っ赤に染まった頬はきっと私も同じだろう。
「……襲っちゃおうよ?ユズちゃん、それを望んでるっぽいし?」
「それはそうだけど…でも、いいの、ミドリ?こういうのって好きあう人同士でやるべきっていうか……」
むぅ、お姉ちゃんのくせに常識的。もっと拳王みたいに“最後にこのモモイの側にいればいいのだ!はーっはっは!”って感じをするかと思ったのに。
うん、そんな姉じゃなかった。そういえばお姉ちゃんって恋愛もののシナリオ書く時、結構純愛気質なんだよね。
だから、ユズちゃんが私たちの名前を呼んでも、私たちをオカズに妄想していても聞かないふりをしていた。
私はちょっと違う。ユズちゃんが私の名前を呼んだ時、どきっとした。そして、怒りを覚えた。
こっちは我慢してるっていうのに、ユズちゃんばっかり気持ちよくなって。
お姉ちゃんと私がどれほど我慢してむらむらしているか、知りもしないで一人で気持ちよくなって。
私一人だけだったら、あのロッカーを開いてすぐにめちゃくちゃにしていたと思う。
でも、ユズちゃんは私とお姉ちゃんの名前を呼んでいた。
ゲームの女王は、私たち二人を望んだ。だから応えてあげなきゃいけない。そしてわからせなきゃいけない。
私たちはUZqueenの名のもとに一つになった。だからささげるなら二人同時にだ。
「何をためらう必要があるの?お姉ちゃん、ユズちゃんは私たちでオナニーしてるんだよ?」
「おなっ……ちょ、みどっひゃんっ♡」
何かいいかけたお姉ちゃんのスカートの下に手を潜り込ませる。私と一緒でぬちぃっと水音を立てる下着がそこにはあった。
「お姉ちゃんだって、むらむらしてるでしょ?イライラしてるでしょ?」
「んっ♡みど、りぃ♡……こんなのっ♡おかしい、よっ……♡」
お姉ちゃんの身体が私の腕に絡みつく。
いつもは手を引いて引っ張ってくれるお姉ちゃんが私に縋り付いてる。
いつの間にか、ロッカーから聞こえていた声は聞こえなくなっている。
じっとりとした視線がこちらに注がれている。私たちが一線を越えている、そう思ったのかもしれない。
でもね、違うよ、ユズちゃん。私はお姉ちゃんが好きで、お姉ちゃんも私が好きだけど。
2人が好きなのはユズちゃんだよ?ユズちゃんがおかしくしたんだよ
「うん、おかしいね……私たちがしちゃうのはおかしいよ、そうでしょお姉ちゃん?」
「っ♡あぇ♡」
とろんと蕩けた瞳、理性が飛ぶ寸前の表情。ちょっとだけ私よりもエッチなことを知らない無垢なお姉ちゃん。
「私たちが好きなのは?」
「……ユズ」
「私たちがエッチをするべきなのは?」
「………ユズ」
堕ちた。お姉ちゃんの瞳がどんよりと濁っていく。
「じゃ、お姉ちゃん……あの時と一緒だよ」
──ユズちゃんのロッカーを開けようか