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どうやら人違いでこの空間に閉じ込められたわけではないようだ。


スグリとは以前ちょっとした言葉の行き違いからお付き合いをする仲になってしまった……のだが、なんだかんだで良好な関係になれる程度には話せるようになれたのが嬉しかった。

からかいつつ関係を進めてしまわなければそのうち蓄積させた怒りでオイラから離れていくだろう。

今後のスグリのために"そういった"知識、仕込んでおきますかねぃ。


……などと悠長に考えていた過去の自分をひっぱたきに行きたい。

が、まだどちらが上だとか下だとか……みたいな話はしていなかったねぃ……と逃避癖のついてしまった頭でモニターに映った難題をどうするか考え出す。


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ぽてぽてと部屋の状況を確認して回る足音が戻ってくるうちにカキツバタは手の内をまとめていた。


「ど、どうすんだべこの部屋……扉が……無い……」

「いや〜困りましたねぃ元チャンピオン様♡

 とりあえずお題をクリアして〜また寝りゃあ元の部屋に戻れるんでねえですかぃ?」


ふざけたように媚びる声であからさまに喧嘩を売り簡潔に要点を伝える。小動物のような可愛らしいスグリの顔が不安そうになるのを見たくない。


「カキツバタ……その呼び方……

 まあいい、とにかくこれ……どうすんべ」

「仲良く半分こって訳にもいかねぇなあ?

 ここは出来るだけ飲む方を決めようぜぃ?じゃーんけーん……」


一瞬で曇りかけた顔をむすっとさせ心の中でニヤニヤする。面白いくらいに手のひらで転がせるうちに畳み掛けてしまおう。臨戦体制に入った声に切り替えて次の手に進める。


「あっ……ちょっ……あ!」

「はーいオイラの勝ち〜♪

 んじゃ、勝ったオイラが出来るだけ飲むってことで〜

 オイラがギブになったら残り頼むわ」


ルールは勝者がつくるもの。それが世の常人の常。スグリが最初にグーを出す癖があるのを分かってパーを出す。決まってしまえば後は茶化せばいい。


「はあっ!?出来るだけ飲む方を決めるって……」

「勝った負けたの話かぁ?

 “どっちが”とは言ってな〜い♪」


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