宿儺様は誕生日を祝いたい

宿儺様は誕生日を祝いたい


・虎杖の誕生日を祝いたい宿儺と疑う虎杖

・最終決戦後の話で宿儺が伏黒の体から虎杖の体に戻ってきてるご都合展開

・平和なような平和じゃないようなよくわからない世界線

・一応ギャグ。やんわりキャラ崩壊してるかも





「どれ小僧、この俺が貴様の誕生日とやらを祝って「いらねえ」


お前の優しさは裏があるから絶対に受け取らない、絶対にだ


そう静かに吐き出してこちらを静かに睨み付ける虎杖の姿に宿儺はため息を零した。意地っ張りで頭の硬い子供とは思っていたがまさかここまでとは

折角呪いの王が千年に一度あるかないかの優しさで、何の企みも抱かずに、ただただ純粋な想いで誕生日を祝うという貴重な体験を与えてやるというのに

だとと言うのにこの子供は過去の出来事をネチネチ持ち出して拒絶するとは、頭が硬いというより悪いというのか

宿儺は骨の玉座の上で深いため息を零した


「はー、貴様は本当に。人の有り難い善意を疑うとは」

「お前の善意や親切なんざこの世で一番信頼出来ない。十中八九何か企みがある」

「断言するか、心外だ。俺が親切する事に対しての見返りを求めた事があったか?」

「伏黒にした事全て」

「……はてなんの事か」


都合の悪いところを付かれたのか、宿儺はわざとらしくすっとぼけた。そんな宿儺の態度にこいつ…、と虎杖は額にピキリと青筋が立った

確かに伏黒恵に対しては唯一の好奇として目をかけ凡そ両面宿儺らしからぬ優しさで彼を助けた事もあった。しかしそれら全ては伏黒恵の体を乗っ取る為の前振りであった


それが虎杖の言うところの善意の裏であり、宿儺の言うところの親切の見返りである


虎杖としては元より宿儺が完全な善意で動くものでは無い、その甘い言葉には何かが隠されていると何となく理解はしていたが、宿儺が伏黒に対して行った仕打ちでそれは確信と成った


こいつはぜっっっっっっったいに何の謀のない優しさを振りまくことはない、と


だから今日の宿儺の「虎杖悠仁の誕生日を祝う」という行為が全く信じられなかったし信じる気にもなれなかった

それを真に受けたら最後、どうせまた知らぬ間に巧妙に縛りを交わされてしまうかもしれない

また縛りを結ばされてしまわないためにも気を許してはならない、隙を見せてはならない

そんな気持ちからガルガルと威嚇をする様に荒ぶる虎杖に、宿儺はどこまでも冷静だった


「まあ過去は水に流そうではないか、全て終わった話だ」

「お前が勝手に終わらせたんだろうが!」

「兎に角今回は純粋に貴様が産まれためでたい日を祝おうとしてるだけだ、何も恐れることはない、ただ享受すれば良い」

「嫌だ、絶対お前からの施しはいらん、何もすんな」

「意地を張るな」

「張ってねーよ!ちょ、おい、なんでこっちくんだよ!」

「俺の純粋な想いが本物である事を体で教えてやろうと思ってな?」


玉座から降り立った宿儺はゆっくりと虎杖に向かって歩み始める

信じてもらえぬのなら信じさせるまで

小僧に俺がどれほど本気で貴様を祝いたいと想っているか、思い知らせねばならぬ


「ギャッ!こっちくんな!」

「まずはかけっこをご所望か?良いだろう、力尽きるまで追いかけ回してやる」

「いらねー!マジでいらねぇ!!」


ざぶざぶと激しい音を立てて二人の男が生得領域内で走り出す

果たして虎杖が逃げ切るのか、それとも宿儺が虎杖を捕獲するのか

しかしこの生得領域内は宿儺の塒、そこに足を踏み入れた時点で虎杖の行く末は決まったも同然なのだが…宿儺から全力で逃げ回る虎杖はその事実にまだ気付かなかった

Report Page