とある男の末路

とある男の末路


むかしむかし、あるところに村の村長である男がいました。

この男は酷いやつで、村や家の事は妻に任せ、子供がいるのに毎日酒とギャンブルに熱心でした。

しかし、ある日妻が死んでしまいました。どうやら獣に襲われてしまったようです。



そこで男は新しい妻を娶りました。新しい妻もこれまた酷いやつで、毎日村のお金で豪遊をしていました。

するとどうなるか?そうです。昔の妻がしていたことを、娘が全てしなければならなくなったのです。



しかし、娘はまだ五になってすらいませんでした。

当然たくさん失敗をしてしまい、その度に酷くぶたれていました。



男と妻は娘に食事を与えることすらしなくなっていきました。

娘は次第に痩せ細り、失敗も増え、ますますぶたれるようになり、いつ死んでもおかしくない、そんな状態になっていました。



そして、この頃には村の人間にすら疎まれるようになり、味方は誰一人いなくなっていました。

そしてとうとう、その時は来ました。 娘が死んでしまったのです。



娘はなぜ死んだのか? 簡単なことです。

いつものように失敗をし、 男にぶたれ、その先にたまたま岩があった…それだけのことです。

しかし、たったそれだけのことで娘は死んでしまいました。



男は困りました。便利な奴隷がいなくなったからです。

男は考え、考え…そして酒を飲み忘れることにしました。

残りは明日考えよう…そう思いながら、動かなくなった娘の死体を放置して眠りにつきました。

そして深夜、男は叫び声で目を覚ましました。



何事かと家の外へ出れば…何ということでしょう。 眼の前にプスプスと音を立て死んでいる妻の姿があるではないですか!

男はパニックになりました。村の人達にこのことを伝えようと走り回りました。しかし、誰も男の言う事に耳をかしませんでした。



なぜなら…村の大人、いや子供までもが先程の妻のように死んでいたからです。

生き残っているのは三つもいかぬような子供だけという惨状でした。



男はパニックを通り越し、狂気に陥りました。

逃げまどい、逃げまどい…そして男はこれが夢だと思い込み、もう一度寝ることにしました。

寝ればこの悪夢から目覚めることができると信じて、男は家に帰り、 玄関に入りました。



そして、見てしまいました。死んだはずの娘がこちらを見ている姿を。

娘の姿は変り果てていました。

鹿の如き角が生え、爪は金色に鋭く光り、手足に鱗が生え、目はこの世のものとは思えない光を放っていました。



アレは人ではない、化け物だ。

男は直感的にそう思いました。

男はあの化け物から逃げるように動こうとしましたが、身体がすくみ指一本も動かせなくなっていました。



化け物が一歩一歩近づいてきます。動こうにも動けず、男は腰を抜かしてしまいました。

化け物は男の前に立ち止まりました。



「………」

化け物は何も言わずに男を見つめます。

その目は何も映してはおらず、まるで底のない穴の様でした。

化け物は爪を振り上げ、振り下ろし…そして男は死にました。



一週間後、連絡を受けた役人たちが村を訪れたとき、村に残っていたのは、雷に打たれたような大量の黒焦げの死体と、飢え死にした子供達と、最早原型も留めていない男の死体だけでした。



今でも、その村の周辺には化け物になった娘が晴らしきれなかった恨みを抱えたまま彷徨い続けているそうです。





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