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寄稿⑩ 「失敗は成功の糧」(『青少年へ贈る言葉 わが人生論 鹿児島篇(上)』、1985年11月刊)

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稲盛が京セラの会長兼社長に就任した1985年、『青少年へ贈る言葉 我が人生論』都道府県別シリーズ(文教図書出版)が企画され、鹿児島出身の稲盛に出版社から寄稿の依頼がありました。この書籍企画は、各都道府県の内外にわたり、各界で活躍する郷土の先輩たちが、自らの青少年時代のユニークなエピソード、挫折や困難を克服した話、忘れ得ぬ両親・恩師・友人との思い出等を、将来ある青少年に期待と信頼を込めて語りかける「ミニ自伝集」を企図したものでした。

稲盛は同シリーズの「鹿児島篇」に「失敗は成功の糧」と題して寄稿し、鹿児島の青少年に向けて次のようなメッセージを贈りました。

「青少年期を考えてみると、早くから利発で才気煥発な子もいれば、小さい頃は鈍重そうに見えるが、人より遅れて才能が開花する晩成型の子もいる。そしてとかく一般的には、利発な子が優秀で、鈍重そうに見える子は才能がないと決めつけられ、本人もついそのように思いがちになるが、決してそうではない。子供の頃に鈍重であっても決して自分をだめだと思ってはならない。地道に努力を続ければ、きっと才能は開花するのである。

また一方、早くから才能の開花した人も、決して驕ったりしてはならない。たまたま人より開花の時期が早かっただけなのであり、それで一生が決まる訳ではない。驕ることなく、努力をし続けなければならないのである。

人生は決して悪いことだけあるのではないし、また良いことだけがある訳でもない。良いこと悪いこと両方で織りなされているのが人生である。苦あれば楽あり、楽あれば苦ありなのである。

思い起こすと、私の少年時代は本当に失敗の連続であった。入学試験、入社試験の失敗の他、ひどいいたずらや悪さをして親や先生に見つかり、もう二度と回復できないのではないかという思いをしたこともあった。しかし、そんな時こそ、くじけたり自暴自棄になったりすることなく素直に反省し、心機一転、立ち直っていかなければならないのである。失敗や苦難は成功への糧であり、神が与えた試練だと信じ、乗り切っていかねばならない。」

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