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(Our Story)クリーニングは、あなたへのおくりもの

はじめまして、私達は宅配クリーニングのone moreといいます。

私達の工場は、青森県弘前市にあります。近くにはりんご畑が広がり、工場からは“津軽富士“と呼ばれる秀麗な岩木山が見える、とても弘前らしい場所にあります。

工場から車で10分、あっという間に周囲はりんご畑に

地域では少し名前が通っていて、

「夫の安い服は他のクリーニング屋さん、私の大切な服は御社に必ず出すのよ!」と笑いながらおっしゃっていただけます。

私達には、創業以来ずっと大切にしていることがあります。

それは、服を通して、着る人を考えることです。

今、私達の元には、全国からたくさんの服が集まります。

・母が生前最後にプレゼントしてくれたスーツ、可能な限り長く着たい!
・夫が寒い冬に私の為買ってくれた桜色のニット、どうか来シーズンも着られますように!
・20代の頃、清水の舞台から飛び降りる気持ちで買ったものなんです!

どれもストーリーがあって、服ってまるで思い出のアルバムみたいだなと思います。

思い出の服が集まる工場として、NHKさんに取材頂きました。

「どうなっていたら喜んでくれるだろうか」
服たちが手元に帰っていった時をイメージしながら、一着一着向き合っています。

だから、

・検品では、シミや傷み、あらゆる所を細かくチェックする。
・洗い方・温度・乾燥方法・仕上げの仕方、その服にあった工程を一着ずつ個別に設定する。
・後ろの工程の人は、受け取ったら再度検品して、汚れがあったら前工程に戻す。
・ほつれ直しや補修などメンテナンスも行う。

検品カードには詳しく服の状態が書かれています。

などなど、通常ではとても考えられない手間をあらゆる所にかけています。

工場を見に来た方からは

「まさかこんなに手間をかけてくれていたなんて驚きました・・・!」
「よくこの価格で成り立ちますね!!」

と言って頂けます。

中には、感謝のお手紙やお菓子を送ってくださるお客様もいらっしゃって、僕たちが逆に感動してしまいます。

ある日、届いた箱を開けたら、お菓子と感謝のお手紙が。。。

中でも、僕たちが一番こだわっていることは、“水洗い”です。

クリーニング屋さんでお預かりするのは、家庭で洗えないもの。スーツやセーター・コート等が大半です。

これらは、通常では水で洗えないので、石油から作られた溶剤で洗うドライクリーニングという手法が用いられます。その方が簡単でリスクがなく、コストも安いからです。

でも、僕たちはほぼ全ての服を、水洗い。

岩木山麓から流れる地下水をたっぷりと使って洗います。洗剤にもこだわっていて、使うのは、天然石けんと重曹だけ。

そうすることで、服がさっぱりと、そしてイキイキとよみがえるんです。
まるで服が元気になったみたいに。

ですが、私たちも数年前までは、どこの街にもあるような普通のクリーニング屋さんでした。

ほとんどがドライクリーニングでしたし、使う洗剤も合成洗剤でした。使用した水は川に排水していました。隣にりんご畑があるにも関わらず。
(もちろん法律にのっとった処理はしています)

どこか「このままでいいのかな?」と思いながらもなかなか変えられない。そんな毎日を過ごしていたように思います。

そんな僕たちが少なくないコストや手間をかけて、なぜ、今のようなクリーニングに挑戦したのか。そして、僕たちの仕事を通して何を伝えたいのか、少しお話させてください。


1.広がる「今さえよければ」という考え

最近の服には異変が起きているように思います。

それは、永く着ることを想定していない物が圧倒的に増えているんです。

・縫い目が荒くてすぐほつれてしまう物
・接着剤で止めているだけなので、数年で全部剥がれてしまう物。
・中には水につけただけで色が流れでてしまう物も、、、

「これどうやって洗えばいいのよ!!」
と叫びたくなることもしばしば(苦笑)

こうした「着られればいい」「見た目がよければいい」という物が価格帯を問わずあらゆるブランドで起きています。

クリーニングも同様です。
この30年で服の単価は半分以下になりました。

クリーニングも、「今日はワイシャツ半額!」「ポイント2倍!」と後を追うように、価格競争が激化していきました。

こんなチラシは当たり前じゃありませんか?

安い価格に、どう辻褄を合わせるのでしょう?

・ちょっとやってダメだったら「落ちません」の紙を貼って返却。
・洗うとリスクがある服はそもそも受け取らない、断る。
・できるだけ安い洗剤を使い、できるだけ手間をかけない。

といった対応を多くのお店が始めました。

結果、クリーニングに出しても汚れが落ちない、風合いが変わるなどと言われ、業界全体の信頼や価値が下がってしまったのは皮肉としか言いようがありません。

私達もさすがにしみ抜きの質を落としたり、「洗えません」はないように努力してきましたが、状況は一緒でした。

・安くて性能がいいけれども、肌や環境への影響が気になる合成洗剤。
・蓄積した汚れを上から塗料でカバー。見た目だけキレイな蛍光増白剤。
・シンナーのような匂いがして吸うと頭がくらくらするクリーニング溶剤。

そのどれもが当たり前で、疑いもしませんでした。

2.家族を繋いでくれた 一着のベビードレス

転機をくれたのは2019年1月、私と妻の間にできた子どもでした。
 
両家にとって初孫なので、家族は皆大喜び!
親戚に連絡したり、名前を考えたりと大騒ぎでした。
 
初の子どもをお迎えする準備。何がいるだろう。どこで買おうか。
 
そんな時、「昔、娘が着た物があるのよ」
 
といってお義母さんがタンスからベビードレスを出してきてくれました。純白で今着ても全然古さのない素敵なドレス。。。

しかし、少し黄ばんでいました。

実際に出されたベビードレス

「これ、弘前さんのところで、キレイにできるかな?」
そう言われたとき、思わずハッとしてしまいました。
 
「うちのクリーニングって、、、赤ちゃんが着るもの洗っても大丈夫なんだっけ・・・?」
 
もちろん、メーカーは「問題ありません!」と出してくれている物ばかり。
ですが、疑問がモヤとなって頭をぐるぐるしてしまいます。
 
事実、全国のクリーニング店では、ドライクリーニング溶剤が服に残留して皮膚トラブルを起こす事故が未だに起きています。
 
我が子に自信もって提供できないってどうなんだろう。。。できれば水洗いがいいに決まっている!

でも、今より何倍もめんどくさくて、何倍も大変な水洗いをしようなんていったら皆なんて言うだろう。。。モヤモヤはどんどん広がっていきました。
 
ですが、思い切って職人達へ伝えてみることにしました。
 
お昼過ぎのある日、食堂に皆を集めて、
ドキドキしながら伝えたことは今でも鮮明に覚えています。

食堂に皆に集まってもらいました。コロナ禍だから皆マスクしてたなぁ。

「いいじゃないですか!やりましょうよ!」
「そっちの方がお客さんの為じゃないですか!!」

と皆大賛成!かえって肩透かしをくらったような気持ちになりました。 

「実はね、創業者である会長(僕にとっては祖父)も本当は水洗いの方がいいって色々試行錯誤されてたんですよ」

後でスタッフの一人が教えてくれました。
 
ひ孫が生まれるタイミングで、祖父と僕をあのドレスが繋げてくれた気がしました。そして、僕の想いに素直に応えてくれたスタッフ達には感謝の気持ちしかありません。

3.大切な衣服がよみがえる!one more誕生!

こうして僕たちは赤ちゃんの肌でも安心な水洗いを作る挑戦を始めました。
 
洗剤メーカーには「そんな簡単にできたら苦労しませんよ」「コストが大変なことになりますよ!」と言われました。
 
実際、セーターを縮ませず洗うには苦労しました。。。

スーツはまだいいのですが、セーターはすぐ縮んでしまいます。仕上げも困難でした。石油溶剤はすぐ乾くので楽、でも水はそうはいきません。乾くまで3倍も時間がかかります。
 
そして、何より怖かったのがお客さんの反応です。「洗い方を変えるので値段があがります」と言ったら離れてしまうんじゃないか。。。不安がつのりました。
 
ですが、苦労した甲斐があって、ほぼ全ての服を水洗いでき、縮まずに洗う手法が完成しました!!
 
すると驚きの光景を目にしました。
これまで「水で洗うと縮む」が常識だったウール・カシミヤが新品よりもむしろふっくら仕上がるようになったのです。

ウールは水で洗うと縮むが常識、でもone moreで洗うとふっくら!!

 肌にやさしいクリーニングを開発したら、服がよみがえったのです。

服って肌と同じなんだなと実感させられました。
 
私たちはこの新しいクリーニングに「one more」と名付けました。one というのは「たった一つの」。moreというのは「もっと」。one moreと繋げると「もう一度」。お客様のたった一つの大切な服をもう一度もっと元気にという意味を込めてあります。
 
こうして私たちは、新しいスタートを切ることができました!

4.クリーニングは、あなたへのおくりもの

「one more」は大反響でした。お店では「気になってた礼服の臭いがとれた!」「スーツは一度これにするともどれない!袖の通りが全然違う!」とリピーターが続出。テレビにも取り上げて頂きました。
 
ネットでも展開しようと始めたクラウドファンディングでは、目標の889%、272人の方に応援頂くというありがたい結果になりました。。。


「顔が見えないからこそ、心のやり取りを大切にしよう」

ネット展開をするに当たり、スタッフ達とこれだけは決めました。
 
単に服をキレイにするのではなく、届いた時思わず嬉しくなってしまうような。着ただけで元気になってしまうような。そんなクリーニング屋さんになろうと。
 
そうしたら、スタッフたちがリボンをこしらえてくれたり、箱はキレイにラッピングしてくれたりと色んな工夫をしてくれました。極めつけは、御一人お一人にメッセージまで、、、
 
元々真面目な青森の風土もありますが、それにしても、なんていい方たちに恵まれたんだろうと本当に頭が下がります。
 
テレビ取材を受けたとき、ディレクターがお客様にインタビューをしてくれました。

そうしたら「服に対する想いをここまで受け止めてくれたんだと感動した」「手紙とリボンが嬉しくて、リボンは冷蔵庫、手紙は洋服ダンス前の鏡に貼って毎日見て元気をもらってる」とおっしゃって頂けました。。。
 
私達のおくりものは届いてたんですね。とスタッフと胸が熱くなる気持ちを共にした時間はこれからもずっと忘れないと思います。

リボン・メッセージは1つ1つ手作りしています。

日本では、生活の三要素を衣食住と言います。食ではなくて、衣が先。
それは、私達の先祖が、服には人の意識を変える力があると大切にしてきたからだと思います。
 
「着るものなんてどうでもいい」という方が、今増えているように思います。ですが、それは自分自身のことを「どうでもいい」としているのと同じではないか。そう考えてしまいます。
 
私達は、クリーニングを通じておくりものをすることで、少しでも「自分を大切にしよう」「毎日を大切にしよう」と感じて頂けるように願っています。
 
「あなた自身におくりものをするように、自分自身を大切にしてね。」
それこそが私達が伝えたいことなんです。
 
ですが、one moreはまだまだ始まったばかり。まだまだ多くの方に届けていかなければなりません。
 
これを読んで、クリーニングを頼んでいただけたらもちろん嬉しいですし、青森に来た際には「この文章見ました」とご連絡頂ければ工場にぜひ遊びに来てほしいです。この文章も勝手に紹介してもらって構いません。
 
この綺麗な水と空気に囲まれた青森から、真面目で素朴なスタッフ達と共に、あなたに会える日を楽しみにお待ちしています。

宅配クリーニングone more 久保栄一郎

\宅配クリーニングone more オンラインショップ/

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