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[ 媚薬を100本飲まないと出られない部屋 ]
「沼水に茂る真菰の分かれぬを……オイラをどなたかと間違えてねえですかい?」
昨晩は寮の自室で就寝についた…… はずの“二人”は、数日前にファンシーな模様替えをしたリーグ部の部室のような部屋に居た。
ただあの部室よりもショッキングなピンク色で仄暗く……何より机の位置にあたる中央には天蓋の付いた可愛らしくもでかでかとしたベッド。
そこに腰掛けるカキツバタと上半身を布団にくるまって寝ているもう一人。
未だに眠っているその誰かの顔を確認するのを躊躇っていると、壁のモニターに骨の折れそうな文面が映され、率直に苦言を呈する。
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おそらくこの部屋は夢と現実のはざまのような場所だろう……そう推測したのはここイッシュ地方では夢に関する研究が行われているからだ。
隣に眠る誰かの下半身が学園指定の服である事は確かであったが、どうにもその布団を引っぺがす気にはなれなかった。
ブルーベリー学園は表向きバトル特化校を謳っているが、実態は教師を名乗る研究者とその護衛の役割を生徒が担う……つまり夢の研究に関わる誰かである可能性が高い。カキツバタと親しい間柄の者の中にそういった研究に関わっている人間は居なかった。
気まずい。
夢に近い空間とはいえこんな部屋に赤の他人と間違って居るとしたら、現実で起きるのがますます億劫になってしまう。
「うーん。もう一眠りするしかないかねぃ……」
色々と諦めて再び眠りにつけば現実に戻れるかもしれない……そう考えたカキツバタはベッドの上に脚を戻そうとしたが、もう一人はそうはいかなかった。
「んん……この声……カキツバタ……?二度寝なんかするから授業に…… いや……なんでカキツバタが居……わぎゃっ!?ここ、どこだべ……」
と、カキツバタの予想に反して見知った顔が寝ぼけ眼から右往左往へと慌ただしく変わる。
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