小話【いいところを10個言わないと出られない部屋】

小話【いいところを10個言わないと出られない部屋】


部屋に閉じ込められたカンネとラヴィーネの二人、脱出方法を探すラヴィーネは壁に書かれた文字を読み解く…


「ここは『お互いのいいところを10個言わないと出られない部屋』だとよ。

しかも何でもいえばいいってわけじゃなくて『相手も認めないとダメ』、らしいぜ」


「なにそれ、変なの。でもまあ簡単そうだね。じゃあラヴィーネから言って」


「なんで私からなんだよ」


「だって前に『私(カンネ)のいいところ』何個か言ってたじゃん。そのアドバンテージがあるでしょ。それで私はラヴィーネのを参考にするから、後で」


「てめぇ…楽しようとしやがって…でもまあ、いいぜ。とっとと始めるか」


「よーし。『私のいいところ』だよっ」


「まずは…臆病なくせに頑張っているところ、隠れて沢山努力しているところ、周りの事をよく見ていて気遣いができるところ…」「前にも言ってた3つだね。オッケー」


「…わ、笑っている顔が…可愛いところ…」「………前も思ったけど、唐突すぎない?」「うるっせーな、いいだろ別に…それよか判定はどうなんだよ…」「…まあ、改めて言われると…悪い気分じゃないから…オッケー…。4つ目だね」


「…戦っている時とか真剣な時の顔が結構凛々しくてカッコいいところ…」「えっ…ちょ…やめてよ、照れるじゃん…」「ダメか?」「ダメじゃ…ないけど…その、意外と言うか…ゴニョゴニョ…ま、まあオッケー…」


「これで5個、半分か…。じゃあ次、おさげ」「シンプル!…まぁ言いたいことは分かるからオッケー。これであと残り4個だね」


「う~ん…そうだ、【水を操る魔法】が得意なところ……いや待った。水を綺麗に操るところ、で頼むわ」「いやべつに言い直さなくても…嬉しいけどさ。うんオッケー。7個目だね」


「…………声が可愛いところ……」「へっ?」「お前の声は可愛いって言ってるんだ」「(カァ~ッ)ええぇ、いやホント照れちゃうからそういうの…でも、うん、ありがと…うん。8つ目だね。残り2個!」


「よし…わ…私を可愛いと思ってくれているところ…」「(ポッ)あ…あのさぁ…さっきから私を口説こうとしてるだろ」「いやその、ほら、いつにも増して可愛い格好だね、とか言ったことあるだろ、だから」「んん…それは服込みで…いやでも中身もまあ確かに可愛いんだけどさ…って何言わせてんの!あーもうオッケー!オッケー!ラヴィーネは可愛いでーす!さぁ残り1個!ラストだよ!」


「…ラストか……うん。いこう、これで」「何?」「私の事が嫌いなところ」「えっ、何言って…」

「昔っからいつも言ってるだろお前が。私の事嫌いって」「そりゃまぁ、言ってるけどさ…」「じゃあこれで10個目だな」「えっそんな……そんなこと…そんなつもりじゃ…ずるいよ…ラヴィーネ…」

「じゃあ、私の事が嫌い、ってのはナシだな?」「~~~~~ッ…わ、わかったよぉ…ナシでいいよっ…だけど…代わりに別の事言ってよね」

「おう、代わりは、私の事が好きなところ、だ」「……えっ…ええ!?」「嫌いじゃないならそういうことだろ。まさか何とも想っていないってことはないよな?」「…ぅ…この卑怯者ぉ…でも、でもラヴィーネのことはす…好…」

「(ニヤニヤ)」「好っ…ん?…あれ…?もしかして…この気持ち…」

「?どうした」「いやらしい笑みを浮かべているラヴィーネを見て気づきました。今の私はラヴィーネが嫌いです。意地悪なラヴィーネが嫌い。だからラヴィーネの事が嫌いなところが10個目でいいよ」

「えっ」「えっ、じゃないよ。私の気持ち自分勝手に振りまわして……べーっ、だ」「お前…」


「…とにかく。これでラヴィーネの番は終わり。次は私の番だよ」


後半 カンネがラヴィーネのよいところを10個言う編


「まずは…可愛いところ」「…いきなりざっくりしすぎだろ。どこが可愛いとかあるだろ」「そういわれても…ラヴィーネ全面的に可愛いじゃん」「お前がそれでいいんならいいけどよ…」

「あっ、待って。お洋服が可愛いところ、に変更する」「おぉいいじゃねえかそれで。これでまず一つだな」

「ふーん。自分でも可愛いと思ってるんだ」「あぁ!?適当に見繕ってるもん着てるわけじゃねえんだぞ。ほら次いけよ」


「じゃあ次は…おば様に似て美人なところ」「お袋は余計だ」「羨ましいけどなあ美人母娘」「そういう意味じゃねえよ!二つ目だ、次!」


「はーい。髪が綺麗なところ。サラサラで羨ましい…」「へぇ そう思ってんのは意外だな」

「けどたまには髪型変えてきて欲しいんだよなぁ。ツインテールにしてフリーレンっぽくしたりとかさ」「いやそれ”お前と同じ髪型”でいいだろ、何でフリーレンが出てくんだよ」

「私のは厳密に言うとツインテっていう名称じゃないらしいんだ」「細けぇなあ。まぁ考えといてやるよ。で、これで三つ目」


「声が綺麗、でも、口調がキツイ。そんなギャップが…まぁ、いいところ、かな?」「自信なさげに言うんじゃねえよ!どうみてもいいところじゃねえか、ああ?」

「…まぁ、頼もしいから…いっか」「分かりゃいいんだ。…これが四つ目だ」


「そうそう、たまーにだけどおめかししてくるところ。素敵だよ」「……~~~ッ。あれは知らんうちに買ってきたのを着させられているって知ってんだろ」

「でもいいじゃん。じゃあさ、ラヴィーネって自分で選んだお洋服を着て来た事ってある?」「うっ…」

「ほら図星じゃん。そうだ、今度一緒に服を買いに行こうよ。まさか服を選ぶ自信が無いとか言わないよね?」「んなわけあるか!いいよ付き合ってやるよ。ほら、これで5つ目。半分だぞ」


「う~ん。そうだねえ…。魔法の修行に付き合ってくれるところ、かな」「まぁそれは私の修行にもなるしな。6つ目だ」


「魔法と言えば、私とのコンビネーションだね。いいところ」「私の魔法そのものはどうなんだ」「イメージに合ってていいと思うよ」「そうか…まぁ悪い気分じゃねえな。じゃあこれが7つ目だな」


「うん。残り3つか…じゃあ次は…私が心細い時は一緒に寝てくれるところ」「…いきなりなんだよ…」

「一級試験の時とか…一緒に寝てくれたじゃん?その時みたいに私がラヴィーネに甘えても…許してくれるところ…私、好きだよ」「………いいところ。の話してんだろ今は………こほん、これで8つ」


「…ラヴィーネは乱暴だけど…ちゃんと私を引っ張ってくれるところ」「お前の髪を?」「つまんねー返しするね。バカじゃないの?それがラヴィーネのいいところだったら私は隣にいないよ」「…すまん」

「はぁ…で?これでOK?」「あぁ…調子に乗りやがって…OKだよ。これで9つ目。次がラストだ」


「こほん」「?」「じゃあ最後だね…最後は、私とずっと一緒にいてくれるところ」

「………」「ダメ?」「ダメなもんかよ…」「フフッ」「…なぁ、カンネ…」


「あっ、出入り口が開いた!早速一緒にいこ?ラヴィーネ」「ああ…ずっと、な」


おわり

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