先生、丸二日ほどお時間いただきます

先生、丸二日ほどお時間いただきます


「はい、では確かにニクス試作型の受け渡しを完了しました」

“うん、確かに受け取ったよ。キヴォトスに来て本当に良かった…!“


先生はシャーレ近くに建てられた格納庫内に搬入されたニクスを見て、感無量といった表情で呟く

その目は少年のように輝いており、思わず見ているこっちも笑ってしまう

ちなみにこの格納庫は先生との友好関係を築くために学園の予算で建てられたものである

…犯罪組織が権力者に送る賄賂だなコレ?


“それで、操縦だけど…“

「グラビスと共通する部分も多いですが、ニクス特有のシステムも多いですからね。こちらにシミュレーターを用意させていただきました」

“おお…コレは…ロマン!“

「先生はグラビスの操縦をすでに習得しているので、オートパイロットシステムも併用しての運用のみなら半日の教習である程度の操作はできるようになるでしょう。では、教習を始めます」

“よろしくお願いします!教官!“


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「うん、やっぱり似合ってますね、先生」

“パイロットスーツを着るとテンション上がるね!ボンノウも似合ってるよ“

「前からよく見てるじゃないですかこの服装…まあ、ありがとうございます」


「…よし、歩行はできるようになりましたね」

“意外と大変だった…“

「グラビスのような旧式ヘビーコンバットフレームに比べると、軽快なんですがどうしても操縦はしにくくなりますね」


“うわっ、落ちる!?“

「最初はそんなものです。大丈夫です、2時間もすればブーストも使えるようになりますよ」


“そろそろご飯にする?“

「あ、そうですね…買いに行きますか」


“アイキャンフラーイ!“

「まだシミュレーターですがね。というか、意外と早くスラスターを使えるようになりましたねぇ…熱意とは恐ろしいものです」


“射撃開始!“

「目標にロケット弾命中、お見事です」


こんな感じで先生の隣で、時々先生の手を握ったりしつつ操縦を教える

それと、上の会話にもあったが先生にも俺と同じWIDのパイロットスーツを着てもらっている

エンジェル24に昼飯を買いに行った時、ソラに「…ペアルック?」とか言われたけど別にそんな意図はない

実戦環境を想定せずにシミュレーターを使うのでは意味がないのと、先生の希望だ


…時々先生のロッカーにパイロットスーツをはじめとしたWIDの軍服があるのを見て不機嫌そうになる生徒もいるが、これも先生の要望だしな

各学園の生徒共が、「WIDの制服がいいなら自分達の学校もいいでしょ!」と思ったのか、自分達の学園の制服を改造した教員用の服を一斉に持ち込み始める事件もあったが、アレは中々事態を収拾するのが大変だった…

俺と先生で「パイロットスーツはコンバットフレームを操縦するためのもので、軍服に関しては先生のただのコスプレ道具である。先生に学園及びWIDに肩入れする意志はない」と生徒たちに説明して何とか事態を収めた

それでも納得してなさそうな生徒が結構多かったのが怖いが

別に先生をWIDのものにする気は無いんだがなあ…


まあそれはそれとして、近くにカメラを設置して教習風景の撮影もバッチリ、今度のWIDの広報誌に載せておく用の写真も確保完了である

無論、ゲマトリアに渡す用の映像記録も


…後日、この広報誌が様々な学校で物議を醸すのは別の話


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「…よし、問題無しですね」

“へー、中こうなってるんだ!“


講習を終えた後、最後の点検がてら先生にニクスの内部を見せていく

こちらでも先生が目を輝かせている


“スラスター、脚部、巨大マシンガン、ロケット砲、コックピット…キヴォトスに来て良かったよ本当に…ありがとう“

「お礼は副会長にお願いします。先生にニクスを返礼として提供したのはあの人なので。先生にお礼を言われたら喜ぶと思いますよ」

“そうだね、後で改めてお礼しないと“


あの人先生に完全にメス堕ちしてるからなあ…(好感度115)


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「お茶、入りました。ソバ茶でよかったですか?」

“うん、ありがとうね“


シミュレーターによる訓練が終わった後、少しシャーレの事務仕事をする

当然俺も手伝う(事務81)

一応先生の貴重な休日ではあるのだが、こうして寸暇を惜しんで仕事をしなければならないとは…先生は大変だ


ちなみに、ソバ茶を淹れているのは俺の趣味である

毎晩違う茶をその日の気分で淹れるのが俺の習慣だ

シャーレでもそんな事をしていた結果…シャーレの一角に俺の茶葉スペースができてしまっている

ごぼう茶、ソバ茶、シナモンティー、ジャスミンティー、ハイビスカスティー、カモミールティー…まあ色々と棚に詰め込まれている


「…それにしても、よろしかったのですか?」

“何が?“

「いえ、貴重な休日を全部こうやって消費してしまって」


先程も言ったが、先生はかなり忙しい

明日は実機演習を行う予定だが、こうして二日間連続で休みを取れる時はそこまで多くない

そんな貴重な連休を、体を休めずにこうやって慌ただしく過ごして大丈夫なのかと心配になる


“大丈夫だよ!人型ロボットに乗って過ごせる休日なんてサイコーじゃん!“

「はあ…そんな子供みたいな…」

“それにね、“

「?」

“生徒と一緒に過ごせる休日が、有意義じゃないはずがないでしょ?“

「…」


…本当に、損な性分をしている人だなあ…


「ええ、先生にとっては、そうなのでしょうね。ですが、ちゃんと休んでくださいよ?」

“むしろ、私としてはコンバットフレームの講習に丸二日付き合わせちゃったことが申し訳ないかな“

「仕事扱いですし、出張手当は出ますから大丈夫ですよ。分かりました。では、今日と同じく明日も丸一日、お時間いただきますね?」

“うん、明日もよろしくね!“


…さて、仕事が終わったら、寝る前にもう一度盗聴器チェックをしておこう

先生の負担にしかならないし、俺も自分が泊まる所に盗聴器があるのは不愉快だからな

技研の探知技術舐めるなよ?ウチの軍事技術だから結構すごいぞ?

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