飲みすぎ注意
夜咲俺と六美が20歳になってから、たまに2人でお酒を飲むことがある。お互い楽しみにしていることの1つでもあるのだけど、俺は毒耐性が着いてるから相当な量を飲まないと酔えない。せっかく2人で飲んでるのだから、こういうときは少しくらい酔えるようにならないかなと思う。今日2人で作ったおつまみが六美のお酒を進めてしまい、今日の六美は今までで一番酔っている。
「たいよーかっこいいねぇ」
とソファーの横に座るご機嫌な六美が俺の手を握ったり撫でたりする。前にこれほどではないが六美がかなり酔ったことがあるから扱いは経験している。呼びかけや質問にしっかり答えること。
「ありがとう六美」
そう言って六美の頭を撫でると、六美がえへへと笑った。この様子だと1度水を飲ませた方がいいかもしれない。撫でる左手はそのままに、右手でテーブルの上にある水を六美に手渡す。
「ありがとぉ やさしいねぇ」
若干呂律が回っていないふわふわした声で六美が言って続けた。
「たいようはねぇ、やさしいし、かっこいいし、たよりになるし、かわいいんだよ〜」
いいでしょーと笑いながら俺の両手を握って手遊びのように上下する。かわいいとはこういうのであって、俺にはあまり相応しくないと思うのだけれど。
「こうやってねー、かわいいって言うとね、びっくりした顔するのがかわいいんだよ〜」
俺の心を見透かしたかのように六美が言った。
「あとね、おとこのひとにかわいーって、思うようになったら恋してるってことなんだって!
だから私たいようのこと大好きなんだねぇ」
とも六美が言っている。ここまで来たら、俺も本音を話すとするか。どうせ翌朝の六美は覚えていないだろうから。
「俺もずっと六美のこと愛してるよ。」
六美に持たれてる両手を恋人繋ぎに握り直して言った。んふふ、と六美が照れ笑いをする。
「どこが好きなのかきいてもいーい?」
そわそわしたように視線を動かしながら六美が尋ねる。
「全部だよ。声も、髪も。俺よりも素直に変わる表情も。家族を支える姿も。綺麗な手も。俺が一番辛いときに支えてくれたところも。全部、全部、存在丸ごと愛してる。」
両手でしていた恋人繋ぎの左手を引き寄せて、手の甲にキスを落とす。もう片手の恋人繋ぎを外して、六美の長くて綺麗な髪にもキスをする。それらを静かに受け入れる六美の耳は真っ赤だった。
「....満足した?」
と聞けばさっきまでとは違った様子で恥ずかしそうに頷いた。
「....ぅん、あと寝る...」
照れていたたまれなくなったのか、六美が立ち上がろうとする。その手をぐい、と押さえて座らせた。驚く六美の唇にキスを落とし、舌を入れ込む。少しして六美の口からん、と声が漏れたところで口を離す。目を瞬かせる六美の目をじっと見つめる。
「呑むのはいいけどあんまり俺のこと煽らないで。
...次は、この続きされても文句言えないよ。」
と言うと、六美は耳だけじゃなく顔全部を赤くした。これで、少しは懲りてくれただろうか。今晩は本当に、我慢するのが大変だったのだから。深いキスだけで済ませたのを褒めてほしいくらいだ。
「わかっ、た。」
六美はそう言って水を飲み、寝る支度と食器の片付けを始めた。俺がやるからと声をかけて、酔ってる六美を先に寝かせた。
🌸
後日、六美が再び美味しいおつまみとお酒を用意して意図的に先日のように酔い、忠告通りの展開になるのは別の話である。
-fin-