dice1d100=100 (100)

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……ま、オイラが全部飲んじまえばいいってことよ。


ここが部室だったらヤドンの落書きが描かれており、傍らにあるのは座れて収納できる円柱型スツールが、今は暗がりに難題を映すモニターと、100本の媚薬が入ったありがたくねえイス。ため息をついて覚悟を決めた。


「んーじゃ、飲んでいきますかねぃ」


心配そうにこちらを見つめるスグリが気がかりで、つい軽口をたたきたくなってしまう。


「……お味はヤドンの尻尾フレーバーだねぃ。

 あ〜、もしかして甘いお菓子だぁい好きなスグリくんは気になるんでやんすねぃ?」

「んなっ……き、気になってなんかない……これは……」

「そうジロジロ見なくてもちゃんと飲みますよぅ。見られすぎてオイラ穴開いちゃう〜」

「そうじゃなくて!大丈夫なの?カキツバタ……」


まだ数本しか飲んでいないのに声を荒げるスグリ。少し前に彼の故郷が甘い餅を装った毒からパンデミックになりかけたそうで、薬といえど分量によっては毒になることを気にかけているのだろうか。


「オイラは大丈夫だからよぅ、スグリはあっちの棚の中を“念の為”調べといてくれぃ。さっきは中まで見ていなかったろ?」

「わ、分かった……」


うまいことスグリを離す。想像通りの中身であれば感覚の八割、視覚で動きを止めてしまえる。生真面目なスグリだ。“念の為”と押せばこちらを気に掛ける余裕をちょっとは削げるだろう。

さーて、勝負でっせい。部屋の主さんよ?


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くぴくぴと飲みつつカキツバタは思考を逃避させる為に先ほど見たスグリの寝相について考えていた。

布団を頭にかぶる人はストレスを溜め込みやすいとか……下半身が出ていたのは例の鬼さまの真似か……そんな事を考えつつ10本、20本と瓶を殻にしていく。


というか、こんな部屋に閉じ込めた存在は何なのか……オイラとスグリの関係を知っている、という事は確かだが、それの何が癇に障ったのか……


この世界には時折"尸童"と呼ばれる存在が現れる。最も、その呼び方はゴースト使いの一族が付けた仮称で、公式の学会などで認められたものではないのだが……オイラは知っている。その"尸童"を。


まるで因果が逆転したかのように、トップチャンピオンに勝つ事が決まっていて、どんな賽を投げようと必ず頂点に辿り着く……そんな存在の話を聞いたときはまだ幼く半信半疑だったが、二度もそういった存在を自らの近くで知ると認めざるを得ない。


じゃあ因果の神に選ばれなかったオイラたちを閉じ込めたのは、運命を司る神のような存在の方なのかねぃ?と考えた。

ぐだぐだと曖昧な態度を取り続けた罪として、こんな部屋で進展をかけた罰を与えると。


半分物思いにふけりながら殻の瓶をどんどん増やしていくカキツバタ。その数は50本を超し、60本へと差し掛かっていた。

想像通り色めいた棚の中にてんてこまいになっているスグリを他所目に作業的に飲み切ってしまおうと思考を逃避させ続ける。


そういえばガラルのヤドンの尻尾の味は辛く、一方がスグリでもう一方がアカマツにお似合いだ。小さめの個体の二匹を抱えた可愛らしい二人の空想にふける。その姿にはしゃぐタロ。ヤドンはあまり動かないから……ネリネは描きやすいだろうねぃ……ゼイユは……ヤドンがまぬけな事をする度に……いちいちキレてそ……う……


「う゛……」


70本から80本へと近づくうちに段々と意識をどうこうすればなんとかなりそうな感覚からは離れていき、不意に声を出してしまう。


あ、やべ……と自らの失敗を後悔するも遅く、棚の方で釘付けにしておいたスグリが駆け寄って来てしまった。


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