敵討ち
兄が死んだ。
兄のことはそこまで好きではなかったけど嫌いというほどでもなかった。
そんなオレでも思う。
兄はあんな死に方をしていい人ではなかった。
兄が死んだ時、オレは呆然と立ちすくんでいた。
ラブがオレの背中を叩いてくれなかったらオレは何も出来なかっただろう。
……もう少し早く動けていたらセルを助けることができたのだろうか。
誰かの泣き声が聞こえる。
目を開けるとマイロとラブの泣いている姿が目に入った。
思わず触れようと右手を伸ばす。
……伸ばそうとした。
思い出した。
オレの右手はイノセント・ゼロの攻撃から2人を庇った時に失ったんだった。
泣いている2人に言う。
「立ち止まるな。狙われるぞ」
近くにいたアビスに目配せする。
アビスは沈んだ顔で頷いて2人を連れて離れた。
兄の敵討ちに来たはずだった。
セルの敵討ちをしなければならないと思ったはずだった。
2人の敵討ちよりも後輩を守ることを優先してしまった。
イノセント・ゼロの魔法がこちらに向かって放たれる。
誰かの叫び声がする。
「……クソッタレ」