地球の気温上昇、2027年までに1.5度超える見込み=世界気象機関

マット・マグラス環境担当編集委員

El Nino in 2015

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画像説明, 2015年に起きたエルニーニョ現象による温暖化の様子

気候変動を受けた気温上昇の抑制目標が、今後数年で破られる可能性があると、科学者らが予測している。

世界各国は、化石燃料使用の進む以前からの世界的気温上昇を平均1.5度以下に抑える取り組みを行っている。しかし世界気象機関(WMO)の最新報告によると、66%の確率で2027年までに1.5度を超えるという。

この確率は、人類の活動による排出と、今年後半に予想されているエルニーニョ現象によって上昇している。

研究者らはこの事態を懸念しているものの、一時的なものだとしている。

平均気温が1.5度以上上がった状態が1年でも生じれば、地球温暖化が減速ではなく加速していることを示すことになるという。

一方、その状態が10~20年続くと、長期間の熱波や、これまでよりも激しい嵐や森林火災など、温暖化の弊害がさらに大きくなるという。

1.5度という数値は、気候変動をめぐる交渉において象徴的なものになっている。各国は2015年の「パリ協定」で、気温上昇をこの数値以下に保つ「努力を続ける」ことで合意した。

だが、今後数年で1.5度を超えたとしても、パリ協定が破られたことにならない。専門家らは、排出量を大幅に減らすことで、なお地球温暖化を抑える時間があるとしている。

1.5度を超えるとどうなるのか?

1.5度という数値は世界の気温を直接計るものではないが、長期的な地球の平均気温と比べ、どれだけ地球が暖まったり冷えたりしているかの指標となっている。

heatwave

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画像説明, 熱波を受け、インドネシアでは児童が携帯扇風機を持って登校した

科学者らは1850~1900年の平均気温のデータを使い、石炭や石油、ガスに頼る現代以前の状態と、現在を比べている。

ここ数十年は、平均気温が2度上昇すると危険な影響があると考えられてきた。しかし2018年にはこの推測を大幅に更新し、1.5度の上昇が大災害につながるとした。

climate change

地球の平均気温はここ数十年で少しずつ上がり続けている。2016年には、工業化拡大以前からの上昇値が1.28度を記録した。

そして今、科学者らはこの記録が破られると確信している。2027年までに1.28度以上になる確率は98%だという。

さらに、今後3以内に1.5度の目標値を初めて上回る可能性が確実になってきたとしている。

イギリス気象庁で長期予測を主導しているアダム・スケイフ教授は、「年間平均気温が一時的に1.5度を超える事態が、本当に手が届くところまで来ている。ここまで近づいたのは人類史上初めてだ」と語った。スケイフ教授は、世界各地の気象当局のデータを集めている。

Spain heatwave

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画像説明, スペインでは今春に起きた干ばつにより、フラミンゴが生息地を追われた

記者会見でスケイフ教授は、「この報告書の中で、おそらく最も厳しく、明白で、最も単純な統計だと思う」と語った。

研究者らは、パリ協定の基準値を超えたと言うには、気温が1.5℃以上上昇した状態が20年間続く必要があると強調している。

WMOのペッテリ・ターラス事務局長は、「今回の発表は、気温上昇がパリ協定で定められた1.5度の基準を永久的に超えるという意味ではない」と強調した。

「だがWMOは、1.5度の基準を超えることが今後ますます増えると警告している」

エルニーニョ現象の影響とは

気温上昇には二つの重要な要素がある。一つは人類の活動が大量の炭素を排出し続けていることだ。新型コロナウイルスのパンデミックで一時的に減ったものの、なお増加傾向が続いている。

もう一つは、世界的に影響のあるエルニーニョ現象が起きる可能性が高いことだ。

地球は過去3年間、ラニーニャ現象に見舞われていた。これにより、温暖化はある程度抑えられていた。しかしエルニーニョ現象によって太平洋上に熱が貯まることで、来年には地球の気温がさらに上がるとみられている。

ただし、エルニーニョ現象が起こる時期や規模についてはなお不透明な部分がある。

スケイフ教授は、「我々が発表している多くの予報では、エルニーニョ現象が今冬に発生し、規模も非常に大きいとみられていると言える」と述べた。

「だが、実際にその深刻さや、5年以内に起きる影響を予測するとなると、1年以上先の正確な日付は出せない」

エルニーニョ現象で最も気温が上がるのは北極だ。北半球では今後5年間の冬に、世界的な数値の3倍以上の異常な気温を記録すると予測されている。

イギリスを含むヨーロッパ北部では向こう5年間、5~9月の降雨量が増える見込みだという。